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121:愛を育むことでも命がけ!
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前回同様に、たぶんめちゃくちゃ高級なポーション風呂に入れてもらい、身仕度をととのえられたところで、朝食の席につく。
直接的な痛みとかはとれているものの、なんとなくからだはダルいままだった。
「ハァ……こんなに毎晩自室に帰れないとか、まるで俺がとんでもない遊び人みたいになっちゃってるじゃないですか!ホント、勘弁してくださいよ……」
思わず泣きごとをもらしたところで、目の前の美麗な顔を見る。
よく美人は3日で飽きるとか言うけど、そんなもんじゃ全然見慣れないからな?!
毎回目にするたびに、『うっ、まぶしい!』ってなるから、絶対。
少なくとも俺は今、そのまぶしさを噛みしめている。
「うん?私たちが愛し合っているのは、なにも悪いことではないだろう?それこそ『作戦』的にも大変説得力が出るし、私の生活にもうるおいが増えて、実によろこばしいこと尽くしじゃないか。気にする必要はないよ」
全然うなずけない内容なのに、うっかり納得しそうになってしまうから、本当に美というのは大きな力だと思う。
でも、ここで譲るわけにはいかなかった。
だって俺には、このままではマズイことになる未来しか見えなかったから。
「それが十分よろしくないことになり得るんですよ、俺の場合」
「キミの場合……?」
げんなりとした俺の様子に、ブレイン殿下は首をかしげる。
そんなささいな仕草ですら、絵になる人だ。
「えぇ、パレルモ様をほったらかしにしたら、命がないものと思わなきゃいけないので」
それは領地を出てこの学校に入るときに、パレルモ様の父親であるライムホルン公爵ご本人から呼び出され、直々に言われたことだ。
「なんだい、それは。恋人の前でほかの男の名前を出すとか、どういうつもりかな?」
「……冗談とかじゃないですからね?俺にとっては今の状況ですら、命がけの生活送ってるようなものなので」
まだどことなく信じていなさそうな様子に、若干くちびるをとがらせて抗議する。
「───とりあえず、話を聞こうか」
こうして、ブレイン殿下はようやく俺が本気なことを知って、話を聞く気になったらしかった。
「……というわけで、俺がパレルモ様の面倒を見られていない今の状態は、非常にマズイと言えるわけです」
「あぁ、それはさぞ大変な任務だったね、お察しするよ」
かいつまんで俺たち取りまき連中の置かれた環境について説明すれば、それだけでブレイン殿下は、ほぼすべてを察したらしい。
「はい……まして同室となったベル・パプリカは、ろくでもないヤツでしたからね……」
最初はナニがあろうと、作中で片思いをしていたヒロイン相手になるのなら、最終的には問題ないかと油断していたけれど。
俺的には、とんでもないヤバいヤツだったもんな……。
「あぁアレか。私としてもキミにたいする不敬罪に問いたい輩だったね。今ごろは懲罰房で、おとなしくしているだろうけど」
「そんな人物との同室をゆるしてしまったこと自体が、おそらくライムホルン公爵にとってはゆるしがたい罪に思われているんじゃないかと……」
急に機嫌の低下するブレイン殿下に、苦笑をもらす。
───そう、問題はベルの俺への態度なんかじゃなくて。
公爵から厳命されているにもかかわらず、少しでもパレルモ様を危険にさらしてしまったことこそが、この場合の問題だった。
ついでに言えば、同室を解除される前から俺はブレイン殿下の部屋に入りびたりになっていたし、それもまたその原因と判じられかねないと思う。
「恋人である私の名前を出しても、その罪は減じられないのかい?」
「えぇ、俺の相手がライムホルン公爵家でどうとでもできるような下位のものではなく、それよりも立場が上のブレイン殿下だなんて、かえって重大な裏切り行為と見なされるでしょうね」
そこで一度区切ると、小さくため息をつく。
「全力でパレルモ様にお仕えしなくてはならない立場でありながら、それを放棄し、己の恋愛にうつつをぬかすなんてとんでもないと言われるでしょう……」
あの公爵閣下なら言いそうなことだ。
だからこうしてブレイン殿下との時間を優先し、パレルモ様を放置しているとも言える状態の俺は、いつ何時、ライムホルン公爵からの叱責で処分されるかわからないと言ってもいい。
そりゃ俺の命だけなら、たぶんブレイン殿下にすがれば守ってもらえるかもしれないけれど。
というか、それが目的で公爵よりも立場が上のブレイン殿下をたぶらかしたと断じられるであろうことは明白だった。
だからこそ、それは選べない対処法だった。
だってそんなことをしたら今度は、かの公爵の怒りは俺個人どころか我が家全体に波及してしまう。
もしライムホルン公爵が俺を処刑すると言い出したなら、甘んじて受け入れるしかない。
そうしないと、俺の付き人をはじめとする周囲の人を巻き込んでしまうんだ。
俺のせいで死ぬ人なんて、できることなら作りたくないに決まってるだろ!
「なるほど、八方塞がりだな……私が下手にキミのことをかばえば、逆に今度はキミの家にも累がおよぶということだね?」
「っ!」
あえて言葉にせずに濁した部分も、あやまたずにブレイン殿下は拾いあげてくれた。
「ひょっとしてキミが、『恋人のふり』という身分にこだわるのも、それが原因だったりするのかい?」
「………もちろん、それだけではないですけれど……」
俺には、この世界の改変を正すというミッションがあるわけだし。
「そうか……いずれにしても、私としても無視はできない状況というわけか……」
そしてあごに手をあてて、長考するような仕草をしたまま、ブレイン殿下は黙り込んだ。
直接的な痛みとかはとれているものの、なんとなくからだはダルいままだった。
「ハァ……こんなに毎晩自室に帰れないとか、まるで俺がとんでもない遊び人みたいになっちゃってるじゃないですか!ホント、勘弁してくださいよ……」
思わず泣きごとをもらしたところで、目の前の美麗な顔を見る。
よく美人は3日で飽きるとか言うけど、そんなもんじゃ全然見慣れないからな?!
毎回目にするたびに、『うっ、まぶしい!』ってなるから、絶対。
少なくとも俺は今、そのまぶしさを噛みしめている。
「うん?私たちが愛し合っているのは、なにも悪いことではないだろう?それこそ『作戦』的にも大変説得力が出るし、私の生活にもうるおいが増えて、実によろこばしいこと尽くしじゃないか。気にする必要はないよ」
全然うなずけない内容なのに、うっかり納得しそうになってしまうから、本当に美というのは大きな力だと思う。
でも、ここで譲るわけにはいかなかった。
だって俺には、このままではマズイことになる未来しか見えなかったから。
「それが十分よろしくないことになり得るんですよ、俺の場合」
「キミの場合……?」
げんなりとした俺の様子に、ブレイン殿下は首をかしげる。
そんなささいな仕草ですら、絵になる人だ。
「えぇ、パレルモ様をほったらかしにしたら、命がないものと思わなきゃいけないので」
それは領地を出てこの学校に入るときに、パレルモ様の父親であるライムホルン公爵ご本人から呼び出され、直々に言われたことだ。
「なんだい、それは。恋人の前でほかの男の名前を出すとか、どういうつもりかな?」
「……冗談とかじゃないですからね?俺にとっては今の状況ですら、命がけの生活送ってるようなものなので」
まだどことなく信じていなさそうな様子に、若干くちびるをとがらせて抗議する。
「───とりあえず、話を聞こうか」
こうして、ブレイン殿下はようやく俺が本気なことを知って、話を聞く気になったらしかった。
「……というわけで、俺がパレルモ様の面倒を見られていない今の状態は、非常にマズイと言えるわけです」
「あぁ、それはさぞ大変な任務だったね、お察しするよ」
かいつまんで俺たち取りまき連中の置かれた環境について説明すれば、それだけでブレイン殿下は、ほぼすべてを察したらしい。
「はい……まして同室となったベル・パプリカは、ろくでもないヤツでしたからね……」
最初はナニがあろうと、作中で片思いをしていたヒロイン相手になるのなら、最終的には問題ないかと油断していたけれど。
俺的には、とんでもないヤバいヤツだったもんな……。
「あぁアレか。私としてもキミにたいする不敬罪に問いたい輩だったね。今ごろは懲罰房で、おとなしくしているだろうけど」
「そんな人物との同室をゆるしてしまったこと自体が、おそらくライムホルン公爵にとってはゆるしがたい罪に思われているんじゃないかと……」
急に機嫌の低下するブレイン殿下に、苦笑をもらす。
───そう、問題はベルの俺への態度なんかじゃなくて。
公爵から厳命されているにもかかわらず、少しでもパレルモ様を危険にさらしてしまったことこそが、この場合の問題だった。
ついでに言えば、同室を解除される前から俺はブレイン殿下の部屋に入りびたりになっていたし、それもまたその原因と判じられかねないと思う。
「恋人である私の名前を出しても、その罪は減じられないのかい?」
「えぇ、俺の相手がライムホルン公爵家でどうとでもできるような下位のものではなく、それよりも立場が上のブレイン殿下だなんて、かえって重大な裏切り行為と見なされるでしょうね」
そこで一度区切ると、小さくため息をつく。
「全力でパレルモ様にお仕えしなくてはならない立場でありながら、それを放棄し、己の恋愛にうつつをぬかすなんてとんでもないと言われるでしょう……」
あの公爵閣下なら言いそうなことだ。
だからこうしてブレイン殿下との時間を優先し、パレルモ様を放置しているとも言える状態の俺は、いつ何時、ライムホルン公爵からの叱責で処分されるかわからないと言ってもいい。
そりゃ俺の命だけなら、たぶんブレイン殿下にすがれば守ってもらえるかもしれないけれど。
というか、それが目的で公爵よりも立場が上のブレイン殿下をたぶらかしたと断じられるであろうことは明白だった。
だからこそ、それは選べない対処法だった。
だってそんなことをしたら今度は、かの公爵の怒りは俺個人どころか我が家全体に波及してしまう。
もしライムホルン公爵が俺を処刑すると言い出したなら、甘んじて受け入れるしかない。
そうしないと、俺の付き人をはじめとする周囲の人を巻き込んでしまうんだ。
俺のせいで死ぬ人なんて、できることなら作りたくないに決まってるだろ!
「なるほど、八方塞がりだな……私が下手にキミのことをかばえば、逆に今度はキミの家にも累がおよぶということだね?」
「っ!」
あえて言葉にせずに濁した部分も、あやまたずにブレイン殿下は拾いあげてくれた。
「ひょっとしてキミが、『恋人のふり』という身分にこだわるのも、それが原因だったりするのかい?」
「………もちろん、それだけではないですけれど……」
俺には、この世界の改変を正すというミッションがあるわけだし。
「そうか……いずれにしても、私としても無視はできない状況というわけか……」
そしてあごに手をあてて、長考するような仕草をしたまま、ブレイン殿下は黙り込んだ。
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