112 / 188
112:腹黒殿下からの事情聴取タイム
しおりを挟む
非っ常~~に気まずい。
どうしたもんか、この空気。
ピリピリとしていて、息苦しい。
あれから、そのまま査問会の行われていた部屋を退室すると、校舎をあとにして寮へと直行した。
というか、俺もリオン殿下も問答無用で連行されたというべきか。
ブレイン殿下の部屋の応接セットのところで、付き人さんにいい香りのお茶を出されたところで、向き合うように腰かけたロイヤルな兄弟に巻き込まれている。
でもポイントは、なぜか上座に腰かけるブレイン殿下のとなりに、俺も座らせられているところだろうか。
てっきり叱られるなら、俺もリオン殿下とおなじ側の席につくのかと思ってたのに。
なんでここまでブレイン殿下がお怒りなのか、まだおぼろげにしか理解できてないんだけどさ。
「さて、まずは昨日までのあの態度のわりに、ちゃんとこの子のために証言してくれたことには感謝する。ありがとうリオン」
「っ!?兄上……?」
座ったままとはいえ、リオン殿下に向かって、ブレイン殿下があたまを下げる。
「……それに関しては、本当に俺が悪かったと思ってる。いくら魅了の魔法がかかっていたとはいえ、これまでのダグラスにたいする俺の態度は礼を欠いていた。あらためてあやまろう、すまなかった」
「えぇっ!?そんな、すでにリオン殿下にはあやまっていただいてますし、どうぞお気になさらずに……っ!」
だから、王族の方にあやまられるとか、こっちの心臓によくないから、ホント止めてほしい。
でもブレイン殿下は、満足げにうなずいているし、これはこれで正解なのか……?
「と、それはさておき、キミたちには確認をしないといけないことがあるわけだけど、心あたりはあるよね?」
けれどその直後、ブレイン殿下のまとう気配が豹変する。
「なにか言いわけはあるかい?ねぇ、リオン?」
「っ、あれは……っ、その……」
表面上はにこやかな笑みを浮かべたままなのに、横からもれ出る気配はあきらかに怒りの気配だった。
「『おまえは案外そそっかしいんだな、俺がついていてやらないと……』だったっけ?」
「いや、その、だから……っ!」
にこにこという擬音が聞こえてきそうなほどの完ぺきな笑顔なのに、もれ出る気配はどす黒い。
「それだけじゃないだろう?『貴様は隙だらけだ、ダグラス。なんならこのまま、そのくちびるを奪うこともできてしまうぞ?』なんて、リオンも言うよねぇ」
「あ、あれは実際、無防備すぎるソイツが悪い!」
どす黒いオーラを倍増させるブレイン殿下に怯えたリオン殿下から、まさかのキラーパスが来た。
「えぇっ、俺ですか!?」
「たしかに、キミは自覚がなさすぎる!それこそ最近のキミは、はじめて会ったときと比べて、ずいぶんと表情は豊かになったし、かわいらしいことも言うようになったし、色気もダダもれだし!」
しかもそこに、ブレイン殿下まで乗ってくる。
「『自覚がない』って、なにがですか!」
そりゃさっきの査問会で見た『保安記録』の映像のなかには、リオン殿下からの好感度が上がったときのスチルみたいな、いかにも誤解を受けそうなシーンがいくつもあったけど。
───だからといって、あれはちょっとした気の迷いでしかないだろうに。
「本当に、キミのそういうところが心配なんだよ!せめておなじクラスにいればまだしも、キミはあのライムホルン公爵家の子に合わせた入学だったせいで、リオンとおなじクラスだし!」
くちびるを尖らせる姿は拗ねモード全開で、ちょっとかわいらしいな、なんて思いそうになるけれど。
「リオンだけじゃなくて、あの赤髪の彼───アマリージョ伯爵家の子もキミの魅力に気づいているからね。まぁ、スコーピオン家のセブンくんは、よくわきまえているイイコだけれども」
次々と出される名前に、新鮮な気持ちになるというか。
いや、だって『星華の刻』の本編じゃ、ブレイン殿下の口からほかの攻略キャラクターの名前なんて、セラーノ以外出てこないはずなのにさ。
それが今や、俺とおなじクラスの彼らの名前を出して、さらには嫉妬を匂わせるような言い方をするなんてさ。
「ひょっとしないでも、俺、めちゃくちゃ愛されてますね……?」
そう言いながらも、ほっぺたがどんどん熱くなってくる。
たぶん、わかりやすいくらいに、カァッと赤く染まったハズだ。
「そうだよ、めちゃくちゃ愛しているから、こんなに嫉妬するんだ!リオンに抱きしめられたキミも、まんざらでもないように見えたのは、気のせいだと思いたいところだね。なにしろ今みたいに、顔を赤くしていたからねぇ……」
ムスッとしたまま、ブレイン殿下は肯定した。
「それは、その……信じてもらえないかもしれないけれど、誤解ですから!」
いまだにほっぺたの赤みはとれていなかったけれど、拗ねたみたいなブレイン殿下の態度に、思わずその腕をつかむ。
「ふぅん、どうだか……」
「……あれだって、もしこれがブレイン殿下なら、キスされてただろうなって思ったら、急にはずかしくなってしまっただけですし……」
あいかわらず拗ねたままの様子を見せている相手に、徐々に語尾も小さくなってくる。
「意外とリオン殿下が力強くて、そういうところなんかは、さすがご兄弟だけあってブレイン殿下に似ているな、とか……」
本人がいないのに、常にそれを意識してしまうとか、どんだけ好きなんだよっていうか。
というより、目の前にいるのはリオン殿下なのに、その瞬間思い出していたのはブレイン殿下のこととか、ひょっとしてリオン殿下にたいして失礼っちゃ失礼なのか?
どうしよう、急に不安になってきた。
だけど。
「あ~~~っ、もうっ!!キミのそういうところだよ!急にデレてくるの、ズルすぎるだろ!?」
まさかの『ズルい認定』をいただきました……?
口もとを手でおおい隠し、照れるブレイン殿下の姿はとても新鮮だった。
だっていつも、照れるのはこちらばかりだったから。
「あー、うん、とりあえず兄上たちがウワサどおりのバカップルってことだけは理解した。なぁ俺……無罪放免で、もうよくないか?」
あきれたようなリオン殿下の声を聞きながら、俺は首をかしげるしかなかったのだった。
どうしたもんか、この空気。
ピリピリとしていて、息苦しい。
あれから、そのまま査問会の行われていた部屋を退室すると、校舎をあとにして寮へと直行した。
というか、俺もリオン殿下も問答無用で連行されたというべきか。
ブレイン殿下の部屋の応接セットのところで、付き人さんにいい香りのお茶を出されたところで、向き合うように腰かけたロイヤルな兄弟に巻き込まれている。
でもポイントは、なぜか上座に腰かけるブレイン殿下のとなりに、俺も座らせられているところだろうか。
てっきり叱られるなら、俺もリオン殿下とおなじ側の席につくのかと思ってたのに。
なんでここまでブレイン殿下がお怒りなのか、まだおぼろげにしか理解できてないんだけどさ。
「さて、まずは昨日までのあの態度のわりに、ちゃんとこの子のために証言してくれたことには感謝する。ありがとうリオン」
「っ!?兄上……?」
座ったままとはいえ、リオン殿下に向かって、ブレイン殿下があたまを下げる。
「……それに関しては、本当に俺が悪かったと思ってる。いくら魅了の魔法がかかっていたとはいえ、これまでのダグラスにたいする俺の態度は礼を欠いていた。あらためてあやまろう、すまなかった」
「えぇっ!?そんな、すでにリオン殿下にはあやまっていただいてますし、どうぞお気になさらずに……っ!」
だから、王族の方にあやまられるとか、こっちの心臓によくないから、ホント止めてほしい。
でもブレイン殿下は、満足げにうなずいているし、これはこれで正解なのか……?
「と、それはさておき、キミたちには確認をしないといけないことがあるわけだけど、心あたりはあるよね?」
けれどその直後、ブレイン殿下のまとう気配が豹変する。
「なにか言いわけはあるかい?ねぇ、リオン?」
「っ、あれは……っ、その……」
表面上はにこやかな笑みを浮かべたままなのに、横からもれ出る気配はあきらかに怒りの気配だった。
「『おまえは案外そそっかしいんだな、俺がついていてやらないと……』だったっけ?」
「いや、その、だから……っ!」
にこにこという擬音が聞こえてきそうなほどの完ぺきな笑顔なのに、もれ出る気配はどす黒い。
「それだけじゃないだろう?『貴様は隙だらけだ、ダグラス。なんならこのまま、そのくちびるを奪うこともできてしまうぞ?』なんて、リオンも言うよねぇ」
「あ、あれは実際、無防備すぎるソイツが悪い!」
どす黒いオーラを倍増させるブレイン殿下に怯えたリオン殿下から、まさかのキラーパスが来た。
「えぇっ、俺ですか!?」
「たしかに、キミは自覚がなさすぎる!それこそ最近のキミは、はじめて会ったときと比べて、ずいぶんと表情は豊かになったし、かわいらしいことも言うようになったし、色気もダダもれだし!」
しかもそこに、ブレイン殿下まで乗ってくる。
「『自覚がない』って、なにがですか!」
そりゃさっきの査問会で見た『保安記録』の映像のなかには、リオン殿下からの好感度が上がったときのスチルみたいな、いかにも誤解を受けそうなシーンがいくつもあったけど。
───だからといって、あれはちょっとした気の迷いでしかないだろうに。
「本当に、キミのそういうところが心配なんだよ!せめておなじクラスにいればまだしも、キミはあのライムホルン公爵家の子に合わせた入学だったせいで、リオンとおなじクラスだし!」
くちびるを尖らせる姿は拗ねモード全開で、ちょっとかわいらしいな、なんて思いそうになるけれど。
「リオンだけじゃなくて、あの赤髪の彼───アマリージョ伯爵家の子もキミの魅力に気づいているからね。まぁ、スコーピオン家のセブンくんは、よくわきまえているイイコだけれども」
次々と出される名前に、新鮮な気持ちになるというか。
いや、だって『星華の刻』の本編じゃ、ブレイン殿下の口からほかの攻略キャラクターの名前なんて、セラーノ以外出てこないはずなのにさ。
それが今や、俺とおなじクラスの彼らの名前を出して、さらには嫉妬を匂わせるような言い方をするなんてさ。
「ひょっとしないでも、俺、めちゃくちゃ愛されてますね……?」
そう言いながらも、ほっぺたがどんどん熱くなってくる。
たぶん、わかりやすいくらいに、カァッと赤く染まったハズだ。
「そうだよ、めちゃくちゃ愛しているから、こんなに嫉妬するんだ!リオンに抱きしめられたキミも、まんざらでもないように見えたのは、気のせいだと思いたいところだね。なにしろ今みたいに、顔を赤くしていたからねぇ……」
ムスッとしたまま、ブレイン殿下は肯定した。
「それは、その……信じてもらえないかもしれないけれど、誤解ですから!」
いまだにほっぺたの赤みはとれていなかったけれど、拗ねたみたいなブレイン殿下の態度に、思わずその腕をつかむ。
「ふぅん、どうだか……」
「……あれだって、もしこれがブレイン殿下なら、キスされてただろうなって思ったら、急にはずかしくなってしまっただけですし……」
あいかわらず拗ねたままの様子を見せている相手に、徐々に語尾も小さくなってくる。
「意外とリオン殿下が力強くて、そういうところなんかは、さすがご兄弟だけあってブレイン殿下に似ているな、とか……」
本人がいないのに、常にそれを意識してしまうとか、どんだけ好きなんだよっていうか。
というより、目の前にいるのはリオン殿下なのに、その瞬間思い出していたのはブレイン殿下のこととか、ひょっとしてリオン殿下にたいして失礼っちゃ失礼なのか?
どうしよう、急に不安になってきた。
だけど。
「あ~~~っ、もうっ!!キミのそういうところだよ!急にデレてくるの、ズルすぎるだろ!?」
まさかの『ズルい認定』をいただきました……?
口もとを手でおおい隠し、照れるブレイン殿下の姿はとても新鮮だった。
だっていつも、照れるのはこちらばかりだったから。
「あー、うん、とりあえず兄上たちがウワサどおりのバカップルってことだけは理解した。なぁ俺……無罪放免で、もうよくないか?」
あきれたようなリオン殿下の声を聞きながら、俺は首をかしげるしかなかったのだった。
0
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜
咲
BL
公爵家の長女、アイリス
国で一番と言われる第一王子の妻で、周りからは“悪女”と呼ばれている
それが「私」……いや、
それが今の「僕」
僕は10年前の事故で行方不明になった姉の代わりに、愛する人の元へ嫁ぐ
前世にプレイしていた乙女ゲームの世界のバグになった僕は、僕の2回目の人生を狂わせた実父である公爵へと復讐を決意する
復讐を遂げるまではなんとか男である事を隠して生き延び、そして、僕の死刑の時には公爵を道連れにする
そう思った矢先に、夫の弟である第二王子に正体がバレてしまい……⁉︎
切なく甘い新感覚転生BL!
下記の内容を含みます
・差別表現
・嘔吐
・座薬
・R-18❇︎
130話少し前のエリーサイド小説も投稿しています。(百合)
《イラスト》黒咲留時(@kurosaki_writer)
※流血表現、死ネタを含みます
※誤字脱字は教えて頂けると嬉しいです
※感想なども頂けると跳んで喜びます!
※恋愛描写は少なめですが、終盤に詰め込む予定です
※若干の百合要素を含みます
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
第一王子に転生したのに、毎日お仕置きされる日々を送る羽目になった
kuraku
BL
ある日ボクは見知ら国の第一王子になっていた。
休日の街を歩いていたら強い衝撃に襲われて、目が覚めたら中世のヨーロッパのお屋敷みたいな所にいて、そこには医者がいて、馬車の事故で数日眠っていたと言われたけど、さっぱりその記憶はない。
鏡を見れば元の顔のボクがそこにいた。相変わらずの美少年だ。元々街を歩けばボーイッシュな女の子に間違われて芸能事務所にスカウトされるような容姿をしている。
これがいわゆる転生と呼ばれるものなのだろうか。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる