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マツヲ。

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112:腹黒殿下からの事情聴取タイム

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 非っ常~~に気まずい。
 どうしたもんか、この空気。
 ピリピリとしていて、息苦しい。

 あれから、そのまま査問会の行われていた部屋を退室すると、校舎をあとにして寮へと直行した。
 というか、俺もリオン殿下も問答無用で連行されたというべきか。

 ブレイン殿下の部屋の応接セットのところで、付き人さんにいい香りのお茶を出されたところで、向き合うように腰かけたロイヤルな兄弟に巻き込まれている。
 でもポイントは、なぜか上座に腰かけるブレイン殿下のとなりに、俺も座らせられているところだろうか。

 てっきり叱られるなら、俺もリオン殿下とおなじ側の席につくのかと思ってたのに。
 なんでここまでブレイン殿下がお怒りなのか、まだおぼろげにしか理解できてないんだけどさ。

「さて、まずは昨日までのあの態度のわりに、ちゃんとこの子のために証言してくれたことには感謝する。ありがとうリオン」
「っ!?兄上……?」
 座ったままとはいえ、リオン殿下に向かって、ブレイン殿下があたまを下げる。

「……それに関しては、本当に俺が悪かったと思ってる。いくら魅了の魔法がかかっていたとはいえ、これまでのダグラスにたいする俺の態度は礼を欠いていた。あらためてあやまろう、すまなかった」
「えぇっ!?そんな、すでにリオン殿下にはあやまっていただいてますし、どうぞお気になさらずに……っ!」

 だから、王族の方にあやまられるとか、こっちの心臓によくないから、ホント止めてほしい。
 でもブレイン殿下は、満足げにうなずいているし、これはこれで正解なのか……?

「と、それはさておき、キミたちには確認をしないといけないことがあるわけだけど、心あたりはあるよね?」
 けれどその直後、ブレイン殿下のまとう気配が豹変する。

「なにか言いわけはあるかい?ねぇ、リオン?」
「っ、あれは……っ、その……」
 表面上はにこやかな笑みを浮かべたままなのに、横からもれ出る気配はあきらかに怒りの気配だった。

「『おまえは案外そそっかしいんだな、俺がついていてやらないと……』だったっけ?」
「いや、その、だから……っ!」
 にこにこという擬音が聞こえてきそうなほどの完ぺきな笑顔なのに、もれ出る気配はどす黒い。

「それだけじゃないだろう?『貴様は隙だらけだ、ダグラス。なんならこのまま、そのくちびるを奪うこともできてしまうぞ?』なんて、リオンも言うよねぇ」
「あ、あれは実際、無防備すぎるソイツが悪い!」
 どす黒いオーラを倍増させるブレイン殿下に怯えたリオン殿下から、まさかのキラーパスが来た。

「えぇっ、俺ですか!?」
「たしかに、キミは自覚がなさすぎる!それこそ最近のキミは、はじめて会ったときと比べて、ずいぶんと表情は豊かになったし、かわいらしいことも言うようになったし、色気もダダもれだし!」
 しかもそこに、ブレイン殿下まで乗ってくる。

「『自覚がない』って、なにがですか!」
 そりゃさっきの査問会で見た『保安記録セキュリティー・レコード』の映像のなかには、リオン殿下からの好感度が上がったときのスチルみたいな、いかにも誤解を受けそうなシーンがいくつもあったけど。

 ───だからといって、あれはちょっとした気の迷いでしかないだろうに。

「本当に、キミのそういうところが心配なんだよ!せめておなじクラスにいればまだしも、キミはあのライムホルン公爵家の子に合わせた入学だったせいで、リオンとおなじクラスだし!」
 くちびるを尖らせる姿は拗ねモード全開で、ちょっとかわいらしいな、なんて思いそうになるけれど。

「リオンだけじゃなくて、あの赤髪の彼───アマリージョ伯爵家の子もキミの魅力に気づいているからね。まぁ、スコーピオン家のセブンくんは、よくわきまえているイイコだけれども」
 次々と出される名前に、新鮮な気持ちになるというか。

 いや、だって『星華せいかとき』の本編じゃ、ブレイン殿下の口からほかの攻略キャラクターの名前なんて、セラーノ以外出てこないはずなのにさ。
 それが今や、俺とおなじクラスの彼らの名前を出して、さらには嫉妬を匂わせるような言い方をするなんてさ。

「ひょっとしないでも、俺、めちゃくちゃ愛されてますね……?」
 そう言いながらも、ほっぺたがどんどん熱くなってくる。
 たぶん、わかりやすいくらいに、カァッと赤く染まったハズだ。

「そうだよ、めちゃくちゃ愛しているから、こんなに嫉妬するんだ!リオンに抱きしめられたキミも、まんざらでもないように見えたのは、気のせいだと思いたいところだね。なにしろ今みたいに、顔を赤くしていたからねぇ……」
 ムスッとしたまま、ブレイン殿下は肯定した。

「それは、その……信じてもらえないかもしれないけれど、誤解ですから!」
 いまだにほっぺたの赤みはとれていなかったけれど、拗ねたみたいなブレイン殿下の態度に、思わずその腕をつかむ。

「ふぅん、どうだか……」
「……あれだって、もしこれがブレイン殿下なら、キスされてただろうなって思ったら、急にはずかしくなってしまっただけですし……」
 あいかわらず拗ねたままの様子を見せている相手に、徐々に語尾も小さくなってくる。

「意外とリオン殿下が力強くて、そういうところなんかは、さすがご兄弟だけあってブレイン殿下に似ているな、とか……」
 本人がいないのに、常にそれを意識してしまうとか、どんだけ好きなんだよっていうか。

 というより、目の前にいるのはリオン殿下なのに、その瞬間思い出していたのはブレイン殿下のこととか、ひょっとしてリオン殿下にたいして失礼っちゃ失礼なのか?
 どうしよう、急に不安になってきた。

 だけど。

「あ~~~っ、もうっ!!キミのそういうところだよ!急にデレてくるの、ズルすぎるだろ!?」
 まさかの『ズルい認定』をいただきました……?

 口もとを手でおおい隠し、照れるブレイン殿下の姿はとても新鮮だった。
 だっていつも、照れるのはこちらばかりだったから。

「あー、うん、とりあえず兄上たちがウワサどおりのバカップルってことだけは理解した。なぁ俺……無罪放免で、もうよくないか?」
 あきれたようなリオン殿下の声を聞きながら、俺は首をかしげるしかなかったのだった。
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