104 / 188
104:うちの子たちが激おこです!?
しおりを挟む
あ、れ……??
ちょっと待て、その部分はこれから俺が指摘しようとしていたことなのに、セブンに先んじて言われてしまった、だと……!?
その予想外の展開に俺は、目をぱちぱちとしばたかせるしかなかった。
いや、まぁ、だれが言ったところで、せいぜいベルの印象が少し悪くなる程度でしかないから問題ないと思うけど。
……なんて気楽にかまえていたのは、どうやら俺だけだったらしい。
思った以上にうちの子は、俺が理不尽な目に遭ったことにたいして、怒りをおぼえていたらしかった。
「それにこれは、担任教師の見ている前で行われたやり取りだ。仮にあんたが身分を気にしないタイプで、そのときには通常、寮の部屋の改修に時間がかかることも知らなかったとしよう」
セブンはそこで言葉を切ると、いかにも興味なさそうにベルから視線をはずす。
「そ、そうだよ、僕は別にそんなつもりはなかったんだ!」
なのに、ベルはここぞとばかりにセブンにすがるような視線を向けて、言いのがれをしようとした。
こうしているとベルは、小柄で華奢で、でもちょっぴり強気で……と、いかにも男ならほだされてしまいような、そんなヒロインらしいかわいらしさを持っているように見える。
なのにその顔は今、ふしぎと醜悪な怪物のようにゆがんで見えた。
「……だとしても、寮の空室状況を知るハズの教師が、そこに気づかないのはおかしいだろ!あんた、担任教師という身分でありながら、なぜ寮の部屋の交代を推奨したんだ!?」
どうやらセブンの怒りは、黙って空気のようにおとなしくしていた担任教師にまで飛び火する。
「えっ?えぇっ!?私ですか!?私はただ、パレルモくんの好意を尊重してあげたいと思っただけで……っ!」
案の定、いきなり責任が問われた担任教師は、目を白黒させてとびあがった。
「そうだな……おそらくパレルモは、幼い子どものごとき無垢さゆえ、己の選択によりテイラーがこうむる不利益に気づかなかったのだろう。だが、そんな生徒をフォローし、指導すべき立場の教師までもが思考停止したように、もろ手をあげてそれに賛同していたのは、さすがにいかがなものかと思う」
そこに乗っかるようにして、リオン殿下がたたみかける。
「あぁ、そういえばたしかにあのとき、あんたは『パレルモくんに迷惑をかけないように、一刻も早く出ていくように』と、止めるどころかテイラーに念押ししていたな」
それにたいして、セブンが相づちを打つ。
───あれっ!?
いつのまに、そこのふたりが息ぴったりになってるんだよ?!
いわゆる『星華の刻』のメイン攻略キャラクターのツートップというか、立場上、本編ではあまり接点なかったハズなのにな!?
あと、ふたりとも怒りのオーラがにじみ出てきてるけど、美形が怒ってるのって、ふつうのモブ顔が怒るのとくらべて、5割り増しくらいで怖いんだよっ!!
ついでに言うと、さっきからうちの子、めちゃくちゃ記憶力がいいね?!
スゴいね、さすがセブン!!
「よりによって貴様は、兄上の恋人を宿なしにしようとしたわけだ。生徒の身の安全を気づかうべき立場にありながらそれに加担したというのは、教師としてゆるされざる暴挙だと思う。『王族の恋人』が、いかに周囲から嫉妬される存在なのか、まさか知らないわけでもないだろうに───まぁ、その場には俺もいたから、人のことは言えないかもしれないが……」
担任を糾弾しつつも自嘲気味にくちびるをゆがめるリオン殿下に、周囲はゆらぎはじめる。
ひょっとして、本当に『俺がパレルモ様をいじめていた』という話は、誤解かなにかで事実ではないんじゃないかって。
さっきまでの完全に俺が『黒である』という空気は、どうも流れが変わりはじめていた。
「まぁ、実際にテイラー自身も、部屋を追い出されたことを、たいして気にしていなかったけどな。というより、危機感が足りていないだけだと思うが……昨晩も『部屋が使えないならロビーのソファーで眠ればいいか』と言っていたしな」
深いため息とともに、セブンがつぶやく。
んんっ!?
セブンさんや、それ、今この場で言う必要ありますかね??
俺、昨夜のうちにちゃんと反省したよな?
「まったく、紫殿下が保護してくださらなかったら、いったいどんな目に遭っていたことか……」
「なにそれ、いくらなんでもテイラー、危機感足らなすぎでは??あんなにエロい雰囲気出してたら、コロッといくヤツだっているだろうに」
セブンがグチるのに、カイエンまでもが乗ってくる。
おいおい、今度は俺にまで飛び火してるんですけど?!
───っていうか、3人そろって、かわいそうなものを見る目で俺を見るんじゃないっ!!
「命拾いをしたな……?もしそこでダグラスが不心得者に襲われでもしていたら、今ごろはふたりそろって斬首されていたかもしれなかったからな。兄上は、それはそれは大層ダグラスを愛でているゆえ、本人どころか、一族郎党そろって処刑コースだったかもしれん」
そこにリオン殿下がトドメを刺した。
もうそのころには、ベルも担任も、見ていられないくらいに真っ青な顔でふるえあがっていた。
───いや、ちょっと待て、俺もこれから逆転の一手を打つ気満々だったのに、すでにベルも担任もかなりザマァされたみたいになってないか??
そりゃ、己の失態をセブンとリオン殿下のふたりがかりであげつらわれたあげく、セブンの殺気が直撃して、カイエンは無自覚に危機感をあおるし、最後にリオン殿下がトドメを刺してたわけだろ?
かわいそうに、むしろもうそれは『ライフはゼロよ』案件じゃねーか!
そしてたぶん、俺の希望がとおったら、ベルはもう周囲からの信用さえも失ってしまうと思う。
「さて、まだ言いのこしたことがあるんじゃないか?言ってごらんなさい」
心なしか、校長の目線がやわらかくなったような気がする。
ここへ来て俺が、これ以上ベルと担任を追い詰めることに躊躇しているのが、伝わってしまったのかもしれなかった。
黙ってコクリとうなずく校長に背中を押され、口のなかが緊張で干上がっていくのを感じつつも、己を鼓舞する。
「それでは……最後にこれまでのこちらの主張の正当性を担保するため、この学校の『保安記録』のアーカイブの公開を要求します」
そうして、俺にとっての冤罪を晴らすための切り札ともいうべきものを要求したのだった。
ちょっと待て、その部分はこれから俺が指摘しようとしていたことなのに、セブンに先んじて言われてしまった、だと……!?
その予想外の展開に俺は、目をぱちぱちとしばたかせるしかなかった。
いや、まぁ、だれが言ったところで、せいぜいベルの印象が少し悪くなる程度でしかないから問題ないと思うけど。
……なんて気楽にかまえていたのは、どうやら俺だけだったらしい。
思った以上にうちの子は、俺が理不尽な目に遭ったことにたいして、怒りをおぼえていたらしかった。
「それにこれは、担任教師の見ている前で行われたやり取りだ。仮にあんたが身分を気にしないタイプで、そのときには通常、寮の部屋の改修に時間がかかることも知らなかったとしよう」
セブンはそこで言葉を切ると、いかにも興味なさそうにベルから視線をはずす。
「そ、そうだよ、僕は別にそんなつもりはなかったんだ!」
なのに、ベルはここぞとばかりにセブンにすがるような視線を向けて、言いのがれをしようとした。
こうしているとベルは、小柄で華奢で、でもちょっぴり強気で……と、いかにも男ならほだされてしまいような、そんなヒロインらしいかわいらしさを持っているように見える。
なのにその顔は今、ふしぎと醜悪な怪物のようにゆがんで見えた。
「……だとしても、寮の空室状況を知るハズの教師が、そこに気づかないのはおかしいだろ!あんた、担任教師という身分でありながら、なぜ寮の部屋の交代を推奨したんだ!?」
どうやらセブンの怒りは、黙って空気のようにおとなしくしていた担任教師にまで飛び火する。
「えっ?えぇっ!?私ですか!?私はただ、パレルモくんの好意を尊重してあげたいと思っただけで……っ!」
案の定、いきなり責任が問われた担任教師は、目を白黒させてとびあがった。
「そうだな……おそらくパレルモは、幼い子どものごとき無垢さゆえ、己の選択によりテイラーがこうむる不利益に気づかなかったのだろう。だが、そんな生徒をフォローし、指導すべき立場の教師までもが思考停止したように、もろ手をあげてそれに賛同していたのは、さすがにいかがなものかと思う」
そこに乗っかるようにして、リオン殿下がたたみかける。
「あぁ、そういえばたしかにあのとき、あんたは『パレルモくんに迷惑をかけないように、一刻も早く出ていくように』と、止めるどころかテイラーに念押ししていたな」
それにたいして、セブンが相づちを打つ。
───あれっ!?
いつのまに、そこのふたりが息ぴったりになってるんだよ?!
いわゆる『星華の刻』のメイン攻略キャラクターのツートップというか、立場上、本編ではあまり接点なかったハズなのにな!?
あと、ふたりとも怒りのオーラがにじみ出てきてるけど、美形が怒ってるのって、ふつうのモブ顔が怒るのとくらべて、5割り増しくらいで怖いんだよっ!!
ついでに言うと、さっきからうちの子、めちゃくちゃ記憶力がいいね?!
スゴいね、さすがセブン!!
「よりによって貴様は、兄上の恋人を宿なしにしようとしたわけだ。生徒の身の安全を気づかうべき立場にありながらそれに加担したというのは、教師としてゆるされざる暴挙だと思う。『王族の恋人』が、いかに周囲から嫉妬される存在なのか、まさか知らないわけでもないだろうに───まぁ、その場には俺もいたから、人のことは言えないかもしれないが……」
担任を糾弾しつつも自嘲気味にくちびるをゆがめるリオン殿下に、周囲はゆらぎはじめる。
ひょっとして、本当に『俺がパレルモ様をいじめていた』という話は、誤解かなにかで事実ではないんじゃないかって。
さっきまでの完全に俺が『黒である』という空気は、どうも流れが変わりはじめていた。
「まぁ、実際にテイラー自身も、部屋を追い出されたことを、たいして気にしていなかったけどな。というより、危機感が足りていないだけだと思うが……昨晩も『部屋が使えないならロビーのソファーで眠ればいいか』と言っていたしな」
深いため息とともに、セブンがつぶやく。
んんっ!?
セブンさんや、それ、今この場で言う必要ありますかね??
俺、昨夜のうちにちゃんと反省したよな?
「まったく、紫殿下が保護してくださらなかったら、いったいどんな目に遭っていたことか……」
「なにそれ、いくらなんでもテイラー、危機感足らなすぎでは??あんなにエロい雰囲気出してたら、コロッといくヤツだっているだろうに」
セブンがグチるのに、カイエンまでもが乗ってくる。
おいおい、今度は俺にまで飛び火してるんですけど?!
───っていうか、3人そろって、かわいそうなものを見る目で俺を見るんじゃないっ!!
「命拾いをしたな……?もしそこでダグラスが不心得者に襲われでもしていたら、今ごろはふたりそろって斬首されていたかもしれなかったからな。兄上は、それはそれは大層ダグラスを愛でているゆえ、本人どころか、一族郎党そろって処刑コースだったかもしれん」
そこにリオン殿下がトドメを刺した。
もうそのころには、ベルも担任も、見ていられないくらいに真っ青な顔でふるえあがっていた。
───いや、ちょっと待て、俺もこれから逆転の一手を打つ気満々だったのに、すでにベルも担任もかなりザマァされたみたいになってないか??
そりゃ、己の失態をセブンとリオン殿下のふたりがかりであげつらわれたあげく、セブンの殺気が直撃して、カイエンは無自覚に危機感をあおるし、最後にリオン殿下がトドメを刺してたわけだろ?
かわいそうに、むしろもうそれは『ライフはゼロよ』案件じゃねーか!
そしてたぶん、俺の希望がとおったら、ベルはもう周囲からの信用さえも失ってしまうと思う。
「さて、まだ言いのこしたことがあるんじゃないか?言ってごらんなさい」
心なしか、校長の目線がやわらかくなったような気がする。
ここへ来て俺が、これ以上ベルと担任を追い詰めることに躊躇しているのが、伝わってしまったのかもしれなかった。
黙ってコクリとうなずく校長に背中を押され、口のなかが緊張で干上がっていくのを感じつつも、己を鼓舞する。
「それでは……最後にこれまでのこちらの主張の正当性を担保するため、この学校の『保安記録』のアーカイブの公開を要求します」
そうして、俺にとっての冤罪を晴らすための切り札ともいうべきものを要求したのだった。
1
お気に入りに追加
402
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる