85 / 188
85:腹黒殿下の素のお顔
しおりを挟む
今さらながら、ブレイン殿下のルートに入っているように思えて、その実一度もそのイベントスチルらしきシーンを見た記憶がない。
それが指し示す意味は、いったいなんなんだろうか?
それこそ、ブレイン殿下とおなじ隠し攻略キャラクターのセラーノ先生にしても、『うちの子』セブンにしても、『アホワンコ』ことカイエンにしても、皆のルートに入ったときのイベントスチルっぽい表情やシチュエーションには何度も遭遇しているのに。
強いてあげれば、最初に『保護』された日の翌朝だろうか?
ブレインルートの終盤でヒロインと結ばれたあと、ヒロインの存在に安心して寝すごすというエピソードだ。
あれは一応体験した、に入るんだろう。
でもそのときに見たものがイベントスチルだったかって聞かれたら、正直なところよくわからない。
だって、仕方ないだろ、ほほえむブレイン殿下とか、まぶしすぎていつでもイベントスチル並みのビジュアルなわけじゃん!?
どうちがうかなんて、俺にはとうていわかりっこない。
それに今回も、ふつうに寝すごしてたよな……?
王族ならではの繊細エピソードは、いったいどこへ行ってしまったんだよ?!っていう。
うーん、わからん。
そりゃ、攻略キャラクターたちがイケメンなのは、乙女ゲームというジャンルに属するこの世界では、ゆるぎなきお約束だとして。
そのなかでもブレイン殿下の爆イケっぷりは、群を抜いている気がする。
いや、原作のゲームも神絵師さんの作画のおかげで、かなりイケメンだらけだったよ?
でも、いくら人気キャラクターとはいえ、はたして原作のブレイン殿下も、こんなにカッコよかっただろうか??
……まぁ、それもこれも今の俺の主観にすぎないけれど。
ある意味これは、惚れた弱みのようなものだと思う。
「かんがえごとかい?目の前に私がいるというのに?」
ふいに、近いところからすねたような声がして、我にかえる。
「えっ?あっ!その……ごめんなさい……」
めちゃくちゃ間近なところに、そのうるわしい顔があった。
そうだよ、直前までキスしてたってのにこれは、さすがに失礼だよな……。
「もう、仕方ないなぁ……ちなみになにをかんがえていたんだい?」
俺がすなおにあやまったからなのか、ブレイン殿下は渋々ながらもゆるしてくれた。
でもその様子は、かまってもらえなくてすねている子どもみたいにも見えるけど。
うわ、めずらしい……!!
なんか俺の前でのブレイン殿下ときたら、めっちゃスパダリ系だったから、こういう年相応にも見える姿というのは、すごい新鮮だった。
「……ブレイン殿下のことを。俺のまわりはパレルモ様やリオン殿下をはじめとして、顔の造作のととのった方が多いんですけれど、そのなかでもブレイン殿下は群を抜いているな、と……」
そのせいで、つい俺も問われるままに本音をこたえてしまっていた。
「ふぅん……?」
心持ち楽しげな相手の声に、ハッとする。
なに言っちゃってるんだよ、俺!?
本人に向かって『爆イケです』と伝えるようなモンだろ、これ!
めちゃくちゃはずかしいヤツじゃん!!
「いや、あのっ、今のナシでっ!」
「どうして?私の顔がなんだって?」
わかってて至近距離からほほえみかけてくるとか、本当にブレイン殿下は意地が悪い。
「いや、あの……だから……っ!」
うぅ、クソ、この美形オーラを至近距離で被弾するとかホント無理ぃっ!!
思わず半泣きになったところで、あわてて顔を隠そうとする。
でもその手は、ブレイン殿下によって手首をつかまれ、止められた。
「遠慮しないで、もっと見てもいいんだよ?なにしろ今の私はキミが独占しているのだから」
それどころか、その至近距離のままに、ロイヤルオーラ全開のほほえみが投げ込まれてきた。
うわぁ、ヤバい、カッコいい!!
語彙力の死滅した脳ミソでは、そんなあたまの悪い感想しか浮かんでこない。
しかも取られた手首からは、相手の体温も伝わってきて、これが夢ではなくまちがいない現実なんだってことが突きつけられる。
「~~~~~っ!」
クソ、こんなの美の暴力だ!
耐えきれなくなって、ふいっと顔をそらす。
───あぁもう、一度は落ちついたと思ったのに、また顔が熱い。
俺がどれだけブレイン殿下に惚れてるのかって、完全に相手にバレてるだろ、これ。
とんだ羞恥プレイだと、下くちびるを噛みしめた。
「マズイな……キミは引っ越しのアレコレが終わらなかったといいわけが立つとして、さすがに私が休むわけにはいかないよな?」
なにやらブツブツと言いはじめたブレイン殿下に、かすかに嫌な予感がつのっていく。
本当にこれ以上は、無理だからな!?
ただでさえベッドのうえに起きあがることもできないくらい、からだ中が痛いのに、朝からもう一戦まじえるとか、絶対に嫌だぞ?!
「そ、そろそろ仕度をしないと遅刻になってしまうのでは……?」
そんな恐怖と戦いながら、いまだになにかに悩んでいるらしい様子のブレイン殿下に声をかけた。
王子様だとか貴族のおぼっちゃんともなると、付き人たちの手を借りて朝の仕度をするからこそ、逆にひとりで仕度をするよりも、すごい時間がかかっちゃうんだよな。
社畜時代なんて、起きて5分で仕度を済ませて、『記録更新!』なんて言ってたのがウソみたいに思えるくらいだ。
まして今日の俺は、ヤられすぎて全身ボロボロ状態だし、確実にいつも以上に時間がかかることが予期される。
ならば俺にできることは、断固拒否することだけだった。
「どうしてくれるんだ、これ!キミが朝からかわいい姿を連発するせいで、すっかりその気になってしまったじゃないか!」
「えぇっ、なんで俺のせいなんですか?!」
そう言いつつも、下半身にあたる相手のソレが反応しかけているのは、否応なしに気づく。
「絶対に無理、ですからね?!こっちは一晩中かけて抱きつぶされたんですから、もうからだがもちませんし!!」
「ムッ、キミが嫌がるなら仕方ない………なぁ、本当にもう無理なのか……?」
すなおに引き下がった直後に確認するとか、どんだけシたいんだよ!!
思わずツッコミを入れそうになったところで、コンコンコンと、きっちり3回寝室のドアがノックされた。
「お時間です、殿下。朝のお仕度をはじめます」
それは、ブレイン殿下の付き人さんの声だった。
それが指し示す意味は、いったいなんなんだろうか?
それこそ、ブレイン殿下とおなじ隠し攻略キャラクターのセラーノ先生にしても、『うちの子』セブンにしても、『アホワンコ』ことカイエンにしても、皆のルートに入ったときのイベントスチルっぽい表情やシチュエーションには何度も遭遇しているのに。
強いてあげれば、最初に『保護』された日の翌朝だろうか?
ブレインルートの終盤でヒロインと結ばれたあと、ヒロインの存在に安心して寝すごすというエピソードだ。
あれは一応体験した、に入るんだろう。
でもそのときに見たものがイベントスチルだったかって聞かれたら、正直なところよくわからない。
だって、仕方ないだろ、ほほえむブレイン殿下とか、まぶしすぎていつでもイベントスチル並みのビジュアルなわけじゃん!?
どうちがうかなんて、俺にはとうていわかりっこない。
それに今回も、ふつうに寝すごしてたよな……?
王族ならではの繊細エピソードは、いったいどこへ行ってしまったんだよ?!っていう。
うーん、わからん。
そりゃ、攻略キャラクターたちがイケメンなのは、乙女ゲームというジャンルに属するこの世界では、ゆるぎなきお約束だとして。
そのなかでもブレイン殿下の爆イケっぷりは、群を抜いている気がする。
いや、原作のゲームも神絵師さんの作画のおかげで、かなりイケメンだらけだったよ?
でも、いくら人気キャラクターとはいえ、はたして原作のブレイン殿下も、こんなにカッコよかっただろうか??
……まぁ、それもこれも今の俺の主観にすぎないけれど。
ある意味これは、惚れた弱みのようなものだと思う。
「かんがえごとかい?目の前に私がいるというのに?」
ふいに、近いところからすねたような声がして、我にかえる。
「えっ?あっ!その……ごめんなさい……」
めちゃくちゃ間近なところに、そのうるわしい顔があった。
そうだよ、直前までキスしてたってのにこれは、さすがに失礼だよな……。
「もう、仕方ないなぁ……ちなみになにをかんがえていたんだい?」
俺がすなおにあやまったからなのか、ブレイン殿下は渋々ながらもゆるしてくれた。
でもその様子は、かまってもらえなくてすねている子どもみたいにも見えるけど。
うわ、めずらしい……!!
なんか俺の前でのブレイン殿下ときたら、めっちゃスパダリ系だったから、こういう年相応にも見える姿というのは、すごい新鮮だった。
「……ブレイン殿下のことを。俺のまわりはパレルモ様やリオン殿下をはじめとして、顔の造作のととのった方が多いんですけれど、そのなかでもブレイン殿下は群を抜いているな、と……」
そのせいで、つい俺も問われるままに本音をこたえてしまっていた。
「ふぅん……?」
心持ち楽しげな相手の声に、ハッとする。
なに言っちゃってるんだよ、俺!?
本人に向かって『爆イケです』と伝えるようなモンだろ、これ!
めちゃくちゃはずかしいヤツじゃん!!
「いや、あのっ、今のナシでっ!」
「どうして?私の顔がなんだって?」
わかってて至近距離からほほえみかけてくるとか、本当にブレイン殿下は意地が悪い。
「いや、あの……だから……っ!」
うぅ、クソ、この美形オーラを至近距離で被弾するとかホント無理ぃっ!!
思わず半泣きになったところで、あわてて顔を隠そうとする。
でもその手は、ブレイン殿下によって手首をつかまれ、止められた。
「遠慮しないで、もっと見てもいいんだよ?なにしろ今の私はキミが独占しているのだから」
それどころか、その至近距離のままに、ロイヤルオーラ全開のほほえみが投げ込まれてきた。
うわぁ、ヤバい、カッコいい!!
語彙力の死滅した脳ミソでは、そんなあたまの悪い感想しか浮かんでこない。
しかも取られた手首からは、相手の体温も伝わってきて、これが夢ではなくまちがいない現実なんだってことが突きつけられる。
「~~~~~っ!」
クソ、こんなの美の暴力だ!
耐えきれなくなって、ふいっと顔をそらす。
───あぁもう、一度は落ちついたと思ったのに、また顔が熱い。
俺がどれだけブレイン殿下に惚れてるのかって、完全に相手にバレてるだろ、これ。
とんだ羞恥プレイだと、下くちびるを噛みしめた。
「マズイな……キミは引っ越しのアレコレが終わらなかったといいわけが立つとして、さすがに私が休むわけにはいかないよな?」
なにやらブツブツと言いはじめたブレイン殿下に、かすかに嫌な予感がつのっていく。
本当にこれ以上は、無理だからな!?
ただでさえベッドのうえに起きあがることもできないくらい、からだ中が痛いのに、朝からもう一戦まじえるとか、絶対に嫌だぞ?!
「そ、そろそろ仕度をしないと遅刻になってしまうのでは……?」
そんな恐怖と戦いながら、いまだになにかに悩んでいるらしい様子のブレイン殿下に声をかけた。
王子様だとか貴族のおぼっちゃんともなると、付き人たちの手を借りて朝の仕度をするからこそ、逆にひとりで仕度をするよりも、すごい時間がかかっちゃうんだよな。
社畜時代なんて、起きて5分で仕度を済ませて、『記録更新!』なんて言ってたのがウソみたいに思えるくらいだ。
まして今日の俺は、ヤられすぎて全身ボロボロ状態だし、確実にいつも以上に時間がかかることが予期される。
ならば俺にできることは、断固拒否することだけだった。
「どうしてくれるんだ、これ!キミが朝からかわいい姿を連発するせいで、すっかりその気になってしまったじゃないか!」
「えぇっ、なんで俺のせいなんですか?!」
そう言いつつも、下半身にあたる相手のソレが反応しかけているのは、否応なしに気づく。
「絶対に無理、ですからね?!こっちは一晩中かけて抱きつぶされたんですから、もうからだがもちませんし!!」
「ムッ、キミが嫌がるなら仕方ない………なぁ、本当にもう無理なのか……?」
すなおに引き下がった直後に確認するとか、どんだけシたいんだよ!!
思わずツッコミを入れそうになったところで、コンコンコンと、きっちり3回寝室のドアがノックされた。
「お時間です、殿下。朝のお仕度をはじめます」
それは、ブレイン殿下の付き人さんの声だった。
0
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
悪役が英雄を育てるカオスな世界に転生しました(仮)
塩猫
BL
三十路バツイチ子持ちのおっさんが乙女ソーシャルゲームの世界に転生しました。
魔法使いは化け物として嫌われる世界で怪物の母、性悪妹を持つ悪役魔法使いに生まれかわった。
そしてゲーム一番人気の未来の帝国の国王兼王立騎士団長のカイン(6)に出会い、育てる事に…
敵対関係にある魔法使いと人間が共存出来るように二人でゲームの未来を変えていきます!
「俺が貴方を助けます、貴方のためなら俺はなんでもします」
「…いや俺、君の敵……じゃなくて君には可愛いゲームの主人公ちゃんが…あれ?」
なにか、育て方を間違っただろうか。
国王兼王立騎士団長(選ばれし英雄)(20)×6年間育てたプチ育ての親の悪役魔法使い(26)
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
悪役令息に転生しましたが、なんだか弟の様子がおかしいです
ひよ
BL
「今日からお前の弟となるルークだ」
そうお父様から紹介された男の子を見て前世の記憶が蘇る。
そして、自分が乙女ゲーの悪役令息リオンでありその弟ルークがヤンデレキャラだということを悟る。
最悪なエンドを迎えないよう、ルークに優しく接するリオン。
ってあれ、なんだか弟の様子がおかしいのだが。。。
初投稿です。拙いところもあると思いますが、温かい目で見てくださると嬉しいです!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
悪役令嬢の兄になりました。妹を更生させたら攻略対象者に迫られています。
りまり
BL
妹が生まれた日、突然前世の記憶がよみがえった。
大きくなるにつれ、この世界が前世で弟がはまっていた乙女ゲームに酷似した世界だとわかった。
俺のかわいい妹が悪役令嬢だなんて!!!
大事なことだからもう一度言うが!
妹が悪役令嬢なんてありえない!
断固として妹を悪役令嬢などにさせないためにも今から妹を正しい道に導かねばならない。
え~と……ヒロインはあちらにいるんですけど……なぜ俺に迫ってくるんですか?
やめて下さい!
俺は至ってノーマルなんです!
悪役の俺だけど性的な目で見られています…(震)
彩ノ華
BL
悪役に転生した主人公が周りから性的な(エロい)目で見られる話
*ゆるゆる更新
*素人作品
*頭空っぽにして楽しんでください
⚠︎︎エロにもちょいエロでも→*をつけます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる