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84:朝イチからのイチャつきモード
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「……………?」
あれ?
身を固くして待っていても、想像していた相手のくちびるは、こちらに触れてこなかった。
ひょっとして、俺の早とちりだったとか!?
それはそれではずかしいと、閉じていた目をうっすらと開ければ、至近距離からブレイン殿下と目が合った。
こちらをジッと見つめてくるバラ色の瞳は、ほんのりと笑いをふくんでいる。
あぁもう、本当にキレイだよなぁ……。
「おや、そんなに緊張してどうしたんだい?もしかして、キスされると思った?」
「っ、からかうつもりだったんですか!?」
カッと、ほっぺたが熱くなる。
そりゃ、もとから十分顔は赤かっただろうけど、今は耳まで熱い。
この期におよんでなお、からかわれるなんて……。
どうせ俺が、おかしいくらいに動揺するからおもしろかったんだろ?!
なんだか情けなくて、ジワリと視界がにじむ。
ついでに胸が、キューキューと締めつけられてるみたいな痛みを訴えてくる。
……絶対に泣きたくなんてないけど。
「すまない、誤解をさせてしまったかな?キミをからかうつもりなんてなかったんだ。ただその……せめて私くらいは、キミの意見を最大限に尊重して、甘やかしてあげたかったんだけどね?」
うぅ、その言い方はズルいだろ!
そんなこと言われてしまったら、俺がゆるすのなんてわかってるクセに!
「それで、今とてもキミにキスしたい気持ちなんだけど、どうかな?」
「っ、どうかなって……そんなのブレイン殿下の好きにしたらいいじゃないですか……」
だいたい外での演技中には、しょっちゅう俺の都合なんて無視してキスしてくることもあるくせに。
「私の好きにするんじゃなくて、キミの好きなようにしてあげたいんだよ。だからキミは……キス、したい?したくない?」
「ブレイン殿下のそういうところ、ホントにズルいと思います!」
ブレイン殿下がキスしたいって思っている張本人のクセに、巧妙に話題をすり替えてまるで俺がそれを望んでいるかのような言い方で選択をせまるとか、もはや詐欺師のやり口だと思う。
「うん?どっちかな?」
かすかに笑いをふくんだままこちらを見下ろしてくる顔は、やっぱり奇跡のようなととのいっぷりで、それに本人の持つ王族ならではのロイヤルオーラが加わると、まぶしいほどに圧倒的な美となる。
「だから……っ!」
クソ、カッコよすぎかよ!!
うっすらとした笑みを口もとに刷いたままのブレイン殿下にたずねられ、心のなかで白旗をあげた。
ダメだ、まちがいなく今、この顔に弱くなっている。
惚れた弱みというヤツだ。
この人を前にすると、己の欲望に忠実になってしまう。
「~~~~っ、し、した……いです……」
もう、めちゃくちゃはずかしい。
最後には消え入りそうなほどに声が小さくなってしまったけれど、俺からできるのは、これがせいいっぱいだった。
「よく言えました」
にっこりと笑みを深くしたブレイン殿下は、まるで小さい子でも褒めるみたいに言う。
そしてそのまま、ゆっくりと顔を近づけてくる。
チュ、チュ、と音を立てて、おでこや鼻のあたまにもキスがふり散らされていく。
くすぐったさに、たまらず目を閉じれば、あらためてほっぺたに手が添えられて、くちびるが合わせられた。
ふにゃっとやわらかいその触感は、やっぱりどうにも照れくさくて、ぎゅっと目を閉じて身を強ばらせてしまう。
けれど昨夜とは打って変わって紳士的なそれは、舌が無理やりねじ込まれることもなく、ただ俺のからだからよけいな力が抜けていくようにと、何度も角度を変えてくりかえされた。
「ン……ッ」
それがやけにくすぐったくて、たまらない。
でもそうしてキスされるたびに、フワフワとしてあったかい気持ちで満たされていく。
あぁ、なんだかすごくしあわせだ……!
「キミのその笑顔を見られるのは、今の私だけの特権かな?」
「え……?」
とろけるような極上の笑みを浮かべたブレイン殿下が、しあわせそうにつぶやいた。
「ようやく私の前でも、笑顔を見せてくれるようになったのは、少しは信頼されているからだと思ってもいいのかな?」
どうやら俺の気持ちは、ダダもれになっていたらしい。
指摘をされて、はじめて自分が笑っていたことに気がついた。
ブレイン殿下の前では、いつだって緊張するか照れるかばかりで、どっちにしてもここまで気をゆるしたことはなかったのに……。
いつのまにか、ふにゃふにゃと気の抜けた笑みを浮かべていた自分におどろいた。
「これは……っ!その、えっと……忘れてくださいっ!」
「嫌だよ、せっかくのかわいいキミの笑顔を拝めたんだ、絶対に忘れるもんか!」
気のせいか、ブレイン殿下の口調が少しだけくずれてきているような……?
「そんな、『嫌だよ』って……」
えぇ、どうしちゃったんだよ、ブレイン殿下は!?
子どもっぽい言い方をされて困惑すれば、相手はますます子どもみたいに得意げになっていく。
「もっとキミの笑顔が見たいから、これからも私は、積極的にキミを甘やかしていくことにしよう!」
「ン……」
そうして、両手でこちらのほっぺたをつつむと、あらためてゆっくりとくちびるを重ねられた。
なぁ、これ、完全にゲロ甘モード入ってないか??
それこそ『星華の刻』で言うならば、ブレイン殿下のルートで、ハッピーエンドをむかえたあたりのエピソードやイベントスチルであってもおかしくないくらいの甘さと麗しさだ。
と、そう思ったところで、ハッとした。
───あれ、そういえば俺自身はブレイン殿下のルートに入っているっぽいのに、これまでにイベントスチルって、どれをいくつ見たんだっけ?
でも、必死に思いかえしてみようとしても、セリフこそおなじだったものの、スチルとなると逆に全然思い浮かばない。
あれっ?
どうしてだろう??
それどころか、なんなら毎瞬イベントスチルなんじゃね?って思うくらい、爆イケモードの顔に思えてくる。
たぶんゲームのなかでは、なかったエピソードもてんこ盛りだし。
その相違点に、かすかな引っかかりをおぼえていた。
あれ?
身を固くして待っていても、想像していた相手のくちびるは、こちらに触れてこなかった。
ひょっとして、俺の早とちりだったとか!?
それはそれではずかしいと、閉じていた目をうっすらと開ければ、至近距離からブレイン殿下と目が合った。
こちらをジッと見つめてくるバラ色の瞳は、ほんのりと笑いをふくんでいる。
あぁもう、本当にキレイだよなぁ……。
「おや、そんなに緊張してどうしたんだい?もしかして、キスされると思った?」
「っ、からかうつもりだったんですか!?」
カッと、ほっぺたが熱くなる。
そりゃ、もとから十分顔は赤かっただろうけど、今は耳まで熱い。
この期におよんでなお、からかわれるなんて……。
どうせ俺が、おかしいくらいに動揺するからおもしろかったんだろ?!
なんだか情けなくて、ジワリと視界がにじむ。
ついでに胸が、キューキューと締めつけられてるみたいな痛みを訴えてくる。
……絶対に泣きたくなんてないけど。
「すまない、誤解をさせてしまったかな?キミをからかうつもりなんてなかったんだ。ただその……せめて私くらいは、キミの意見を最大限に尊重して、甘やかしてあげたかったんだけどね?」
うぅ、その言い方はズルいだろ!
そんなこと言われてしまったら、俺がゆるすのなんてわかってるクセに!
「それで、今とてもキミにキスしたい気持ちなんだけど、どうかな?」
「っ、どうかなって……そんなのブレイン殿下の好きにしたらいいじゃないですか……」
だいたい外での演技中には、しょっちゅう俺の都合なんて無視してキスしてくることもあるくせに。
「私の好きにするんじゃなくて、キミの好きなようにしてあげたいんだよ。だからキミは……キス、したい?したくない?」
「ブレイン殿下のそういうところ、ホントにズルいと思います!」
ブレイン殿下がキスしたいって思っている張本人のクセに、巧妙に話題をすり替えてまるで俺がそれを望んでいるかのような言い方で選択をせまるとか、もはや詐欺師のやり口だと思う。
「うん?どっちかな?」
かすかに笑いをふくんだままこちらを見下ろしてくる顔は、やっぱり奇跡のようなととのいっぷりで、それに本人の持つ王族ならではのロイヤルオーラが加わると、まぶしいほどに圧倒的な美となる。
「だから……っ!」
クソ、カッコよすぎかよ!!
うっすらとした笑みを口もとに刷いたままのブレイン殿下にたずねられ、心のなかで白旗をあげた。
ダメだ、まちがいなく今、この顔に弱くなっている。
惚れた弱みというヤツだ。
この人を前にすると、己の欲望に忠実になってしまう。
「~~~~っ、し、した……いです……」
もう、めちゃくちゃはずかしい。
最後には消え入りそうなほどに声が小さくなってしまったけれど、俺からできるのは、これがせいいっぱいだった。
「よく言えました」
にっこりと笑みを深くしたブレイン殿下は、まるで小さい子でも褒めるみたいに言う。
そしてそのまま、ゆっくりと顔を近づけてくる。
チュ、チュ、と音を立てて、おでこや鼻のあたまにもキスがふり散らされていく。
くすぐったさに、たまらず目を閉じれば、あらためてほっぺたに手が添えられて、くちびるが合わせられた。
ふにゃっとやわらかいその触感は、やっぱりどうにも照れくさくて、ぎゅっと目を閉じて身を強ばらせてしまう。
けれど昨夜とは打って変わって紳士的なそれは、舌が無理やりねじ込まれることもなく、ただ俺のからだからよけいな力が抜けていくようにと、何度も角度を変えてくりかえされた。
「ン……ッ」
それがやけにくすぐったくて、たまらない。
でもそうしてキスされるたびに、フワフワとしてあったかい気持ちで満たされていく。
あぁ、なんだかすごくしあわせだ……!
「キミのその笑顔を見られるのは、今の私だけの特権かな?」
「え……?」
とろけるような極上の笑みを浮かべたブレイン殿下が、しあわせそうにつぶやいた。
「ようやく私の前でも、笑顔を見せてくれるようになったのは、少しは信頼されているからだと思ってもいいのかな?」
どうやら俺の気持ちは、ダダもれになっていたらしい。
指摘をされて、はじめて自分が笑っていたことに気がついた。
ブレイン殿下の前では、いつだって緊張するか照れるかばかりで、どっちにしてもここまで気をゆるしたことはなかったのに……。
いつのまにか、ふにゃふにゃと気の抜けた笑みを浮かべていた自分におどろいた。
「これは……っ!その、えっと……忘れてくださいっ!」
「嫌だよ、せっかくのかわいいキミの笑顔を拝めたんだ、絶対に忘れるもんか!」
気のせいか、ブレイン殿下の口調が少しだけくずれてきているような……?
「そんな、『嫌だよ』って……」
えぇ、どうしちゃったんだよ、ブレイン殿下は!?
子どもっぽい言い方をされて困惑すれば、相手はますます子どもみたいに得意げになっていく。
「もっとキミの笑顔が見たいから、これからも私は、積極的にキミを甘やかしていくことにしよう!」
「ン……」
そうして、両手でこちらのほっぺたをつつむと、あらためてゆっくりとくちびるを重ねられた。
なぁ、これ、完全にゲロ甘モード入ってないか??
それこそ『星華の刻』で言うならば、ブレイン殿下のルートで、ハッピーエンドをむかえたあたりのエピソードやイベントスチルであってもおかしくないくらいの甘さと麗しさだ。
と、そう思ったところで、ハッとした。
───あれ、そういえば俺自身はブレイン殿下のルートに入っているっぽいのに、これまでにイベントスチルって、どれをいくつ見たんだっけ?
でも、必死に思いかえしてみようとしても、セリフこそおなじだったものの、スチルとなると逆に全然思い浮かばない。
あれっ?
どうしてだろう??
それどころか、なんなら毎瞬イベントスチルなんじゃね?って思うくらい、爆イケモードの顔に思えてくる。
たぶんゲームのなかでは、なかったエピソードもてんこ盛りだし。
その相違点に、かすかな引っかかりをおぼえていた。
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