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64:ギャラリーが多いと、甘さも比例します!?
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ブレイン殿下になかば抱きつくようなかたちのままに、セブンからお説教を食らうというこの状況。
至近距離に感じるブレイン殿下の存在に照れていいのか、はたまた友人として俺を心配してくれるセブンにマジメな顔をすればいいのかわからなかった。
「自分で同意したって言うけどな、あのゆるふわぼっちゃんが言い出したら、あんた立場的に反論できないだろ!」
「うっ、そう言われると、そうかもしれないけど……」
だって俺は、パレルモ様の取りまき要員のひとりだし。
「しかもそれを言い出した本人からは、なんのフォローもなしで、クラスのヤツらも担任すらも異を唱えないとか、もはや不自然すぎて気持ち悪りぃんだよ!!」
「セブン……」
たぶんそれがパレルモ様が無意識に放っている魅了の魔法のせいだって、セブンはおぼろげながら気づいているんだろう。
「そうでなくても、だいたいテイラーは、あのゆるふわぼっちゃんに甘すぎるんだよ!あんた、アイツのワガママを断ったことないだろ?!」
「いや、そんなことは───あれ、なかったっけ……??」
セブンの言葉に、さすがにそれはないだろうと言いかえそうとして、固まる。
俺は小さいころから、とにかく両親やライムホルン公爵からパレルモ様のワガママを聞いてやれと言われて育ってきた。
だからそのせいで、どれだけ受け入れがたいと思うことであろうと、もはや息を吸うように自然と受け入れてしまうようになっていた。
「……そうですか、キミのご実家の教育方針だったなら仕方ないですけれど。でも今のキミは、私の恋人でもあるんですよ?もっと自分を大切になさい」
こちらを見下ろすブレイン殿下のバラ色の瞳には、こちらを心配するような色が浮かんでいた。
「あの、そのことはさっきセブンに言われて、ようやく理解しました……」
俺をブレイン殿下の恋人の座から引きずりおろしたいヤツらに依頼された輩から、性的な意味で襲われる可能性があるってことは、ようやく理解した。
テイラーなんて『星華の刻』においてはほんのモブキャラだし、外見はいたってふつうの男子で、特筆すべきものもないと思っている。
だからそういう対象として見たときに、はたして本当に魅力があるのか、はなはだ疑問ではあるけれど。
───ちなみにブレイン殿下のアレは、高級品や美食に慣れた殿上人ゆえの、珍味をたまに食べたくなる悪食だと思っている。
「そうですか、私がいくら言っても聞かないのではと危惧していましたが、いい友人を持ったようですね。そちらの彼にはお礼を言わなくては……」
「いえ、そんな……もったいないお言葉です」
気のせいだろうか、なんとなくふたりの間に流れる空気がやわらかいものに変わってきているような気がする。
そうして、ようやく人心地ついたところで、ハッと気がつく。
いつの間にかロビーには、レアキャラのブレイン殿下見たさになのか、ギャラリーがあつまりつつあった。
しかも皆、ひそひそと声をひそめて、となりあう人同士でなにか話しているような気がする。
……って、俺か?!
いまだにブレイン殿下に抱きつくみたいな格好をしているわけで、そりゃ反感を買って当然だ!
だけど身をひるがえして離れようとしたところで、思った以上にしっかりとかかえこまれてしまっていて、逃げ出すこともできなくて……。
必死に相手の胸板を押したところで、どうしたって失礼のないように全力で押すことはできないから、抜け出せる気配もなかった。
クソ、これが悲しいステータス差か!!
しかもさらに悲しいことに、今のは抜け出そうともがいていたとも思われなかったらしい。
「うん?そんなに甘えなくても、いつだってちゃんとキミのことを見ているよ。どうしたんだい、寂しくなったのかな、ハニー?」
「ちが……っ!!」
チュ、と音を立てて、つむじのあたりにキスされた。
そんなかまってほしくて甘えたみたいに言われたら、ギャラリーに誤解されるだろーが!
いやむしろこれは、ギャラリーが増えたと思ったからこその演技の一環なのか??
───あぁ、もう、どっちにしてもはずかしすぎるっ!
気まずげにうつむけば、さらりとほっぺたにかかる髪をすくようにして、耳にかけられた。
そのついでのように、そこに触れていく指先に、わけもなく心拍数は上昇する。
「あの……いつまでこうしてロビーで話してるんですか!?人があつまってきてるんですが……」
少なくともブレイン殿下もセブンも、ある意味で有名人なわけで、そのふたりがいっしょにいる時点で目立つのも、興味を持たれてしまうのも、仕方のないことだった。
「あぁ、たしかにこの先の話をくわしく聞くとなると、人目をはばかるような話になりそうだからね……」
「それじゃあ、オレはこれで。たしかにテイラーをお預けしましたので、あとはよろしくお願いいたします」
そこが切り上げどきと思ったのか、セブンは深々とお辞儀をする。
「あぁ、ありがとう。キミは私のかわいい恋人の『大切な友人』なのだろう?これからも無防備すぎるこの子のフォローを、よろしく頼むよ」
「承知した」
極上の笑みを浮かべるブレイン殿下はやっぱりまぶしすぎて、直視できなかった。
うっ、顔面偏差値が異常値を叩き出していやがる!!
……つーか、ここのふたりが、仲よくなるとか聞いてないんですけど?!
そりゃ、さっきまでの氷点下なギスギスしてる空気のままより、よっぽどマシだけど。
そう思っていたせいで、またも俺は言われた矢先だというのに、無防備になっていたらしい。
「それじゃあ、私の部屋へ行こうかハニー」
チュッ
腰に手をまわされたまま、ほっぺたにもう片方の手が添えられて音を立ててキスされた───今度こそ、くちびるに。
ザワッ!
ザワめきとともに、一瞬にして周囲の遠慮がちだった視線は無遠慮なものに変わり、こちらへ一斉にふりそそいでくる。
「っ!?」
よりによって、セブンどころか皆の見てる前で?!
一瞬にして耳まで赤くなり、はずかしさは体内で爆発しそうになる。
けれど俺がリアクションを起こす前にサッと離れていったくちびるに、文句を言うタイミングを失ったのは、まちがいなかった。
至近距離に感じるブレイン殿下の存在に照れていいのか、はたまた友人として俺を心配してくれるセブンにマジメな顔をすればいいのかわからなかった。
「自分で同意したって言うけどな、あのゆるふわぼっちゃんが言い出したら、あんた立場的に反論できないだろ!」
「うっ、そう言われると、そうかもしれないけど……」
だって俺は、パレルモ様の取りまき要員のひとりだし。
「しかもそれを言い出した本人からは、なんのフォローもなしで、クラスのヤツらも担任すらも異を唱えないとか、もはや不自然すぎて気持ち悪りぃんだよ!!」
「セブン……」
たぶんそれがパレルモ様が無意識に放っている魅了の魔法のせいだって、セブンはおぼろげながら気づいているんだろう。
「そうでなくても、だいたいテイラーは、あのゆるふわぼっちゃんに甘すぎるんだよ!あんた、アイツのワガママを断ったことないだろ?!」
「いや、そんなことは───あれ、なかったっけ……??」
セブンの言葉に、さすがにそれはないだろうと言いかえそうとして、固まる。
俺は小さいころから、とにかく両親やライムホルン公爵からパレルモ様のワガママを聞いてやれと言われて育ってきた。
だからそのせいで、どれだけ受け入れがたいと思うことであろうと、もはや息を吸うように自然と受け入れてしまうようになっていた。
「……そうですか、キミのご実家の教育方針だったなら仕方ないですけれど。でも今のキミは、私の恋人でもあるんですよ?もっと自分を大切になさい」
こちらを見下ろすブレイン殿下のバラ色の瞳には、こちらを心配するような色が浮かんでいた。
「あの、そのことはさっきセブンに言われて、ようやく理解しました……」
俺をブレイン殿下の恋人の座から引きずりおろしたいヤツらに依頼された輩から、性的な意味で襲われる可能性があるってことは、ようやく理解した。
テイラーなんて『星華の刻』においてはほんのモブキャラだし、外見はいたってふつうの男子で、特筆すべきものもないと思っている。
だからそういう対象として見たときに、はたして本当に魅力があるのか、はなはだ疑問ではあるけれど。
───ちなみにブレイン殿下のアレは、高級品や美食に慣れた殿上人ゆえの、珍味をたまに食べたくなる悪食だと思っている。
「そうですか、私がいくら言っても聞かないのではと危惧していましたが、いい友人を持ったようですね。そちらの彼にはお礼を言わなくては……」
「いえ、そんな……もったいないお言葉です」
気のせいだろうか、なんとなくふたりの間に流れる空気がやわらかいものに変わってきているような気がする。
そうして、ようやく人心地ついたところで、ハッと気がつく。
いつの間にかロビーには、レアキャラのブレイン殿下見たさになのか、ギャラリーがあつまりつつあった。
しかも皆、ひそひそと声をひそめて、となりあう人同士でなにか話しているような気がする。
……って、俺か?!
いまだにブレイン殿下に抱きつくみたいな格好をしているわけで、そりゃ反感を買って当然だ!
だけど身をひるがえして離れようとしたところで、思った以上にしっかりとかかえこまれてしまっていて、逃げ出すこともできなくて……。
必死に相手の胸板を押したところで、どうしたって失礼のないように全力で押すことはできないから、抜け出せる気配もなかった。
クソ、これが悲しいステータス差か!!
しかもさらに悲しいことに、今のは抜け出そうともがいていたとも思われなかったらしい。
「うん?そんなに甘えなくても、いつだってちゃんとキミのことを見ているよ。どうしたんだい、寂しくなったのかな、ハニー?」
「ちが……っ!!」
チュ、と音を立てて、つむじのあたりにキスされた。
そんなかまってほしくて甘えたみたいに言われたら、ギャラリーに誤解されるだろーが!
いやむしろこれは、ギャラリーが増えたと思ったからこその演技の一環なのか??
───あぁ、もう、どっちにしてもはずかしすぎるっ!
気まずげにうつむけば、さらりとほっぺたにかかる髪をすくようにして、耳にかけられた。
そのついでのように、そこに触れていく指先に、わけもなく心拍数は上昇する。
「あの……いつまでこうしてロビーで話してるんですか!?人があつまってきてるんですが……」
少なくともブレイン殿下もセブンも、ある意味で有名人なわけで、そのふたりがいっしょにいる時点で目立つのも、興味を持たれてしまうのも、仕方のないことだった。
「あぁ、たしかにこの先の話をくわしく聞くとなると、人目をはばかるような話になりそうだからね……」
「それじゃあ、オレはこれで。たしかにテイラーをお預けしましたので、あとはよろしくお願いいたします」
そこが切り上げどきと思ったのか、セブンは深々とお辞儀をする。
「あぁ、ありがとう。キミは私のかわいい恋人の『大切な友人』なのだろう?これからも無防備すぎるこの子のフォローを、よろしく頼むよ」
「承知した」
極上の笑みを浮かべるブレイン殿下はやっぱりまぶしすぎて、直視できなかった。
うっ、顔面偏差値が異常値を叩き出していやがる!!
……つーか、ここのふたりが、仲よくなるとか聞いてないんですけど?!
そりゃ、さっきまでの氷点下なギスギスしてる空気のままより、よっぽどマシだけど。
そう思っていたせいで、またも俺は言われた矢先だというのに、無防備になっていたらしい。
「それじゃあ、私の部屋へ行こうかハニー」
チュッ
腰に手をまわされたまま、ほっぺたにもう片方の手が添えられて音を立ててキスされた───今度こそ、くちびるに。
ザワッ!
ザワめきとともに、一瞬にして周囲の遠慮がちだった視線は無遠慮なものに変わり、こちらへ一斉にふりそそいでくる。
「っ!?」
よりによって、セブンどころか皆の見てる前で?!
一瞬にして耳まで赤くなり、はずかしさは体内で爆発しそうになる。
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