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61:認識のひらきは、致命的レベル?
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結局セブンとは、そのままいっしょに寮までかえってきた。
なんとなく話がはずんでいたこともあったし、おたがいに離れがたいような気持ちもあるような気がして。
そうしてかえってきた寮のロビーを見れば、けっこう立派なソファーや長椅子が、至るところにあるのに気づく。
あぁ、そっか、一晩だけなら無理にだれかの部屋に泊めてもらう必要はないのかも。
だってこれだけあったら、夜中に長椅子をひとつ占拠したところで問題なくないか?
「うーん、最悪ここでもいいか……?」
「どうした、テイラー?」
俺のかんがえは、思わず口からもれていたらしい。
「あ、いや、今俺の部屋改装してもらってるところなんだけど、今夜中にはおわらなさそうでさ。ちょっと寝る場所ないから……」
「はぁっ?!」
セブンに聞きかえされ、寮の部屋の交代劇を知っているならこれで通じるだろうと苦笑を浮かべてこたえたとたん、素っ頓狂な声があがった。
「あんたそれ、本気で言ってんのか!?」
なぜか必死の形相で、正面切って両肩をつかまれる。
「えっ?だって、いきなり泊めてくれとか言われても、だれだって迷惑だろ?……かといって改装作業中の部屋にいても、職人さんのジャマになるだけだろうし……」
さすがに今から外泊許可をとるのは厳しいだろうしなぁ。
あれ、ひょっとして詰んだ?
「あんたバカか?!数日前に野郎どもに襲われかかったばっかりだってのに、危機感どこに忘れてきた?!」
なぜだか、セブンにすごい剣幕で叱られた。
「……あれはだれでもいいからヤリたいだけの不良っていう特殊な事例だろ?それにアイツらは風紀委員に補導されて、もうここにはいないし。だいたい俺みたいのは、本来そういう対象にならないんじゃないのか?」
ふつうに顔は地味だし、背だってそこそこあるから女っぽくもないわけだし。
「でも実際、怖かったんだろ?トラウマになるくらいには。もしまた複数で襲われたら、あんたどうすんだよ!?」
「そりゃそうだけど……」
なのにセブンはめちゃくちゃ心配だって顔で、俺に説教をしてくる。
「あんたを外に放置するくらいなら、オレの部屋貸してやるから!」
「貸すって、それでセブンはどうするんだよ?」
たしかセブンの部屋は狭いひとり用の個室だったから、来客用ソファーとかはなかったはず。
もし俺を部屋にまねいたところで、ベッドはひとつしかないわけで。
別に俺は床でも大丈夫だとは思うけど、たぶんこの調子だと、セブンのほうが床で寝るとか言い出しそうだ。
「それこそオレは、ロビーの長椅子で寝ればいい。あんたとおなじ部屋で一晩すごすとか、あとで紫殿下からなにを言われることか……!」
「むしろそっちのがダメだろ!セブンはなんも関係ないんだから!」
だってあの部屋の交代はパレルモ様のワガママで、それを受け入れたのはほかでもない俺自身の責任でなのに。
「オレなら心配いらねぇ!変なのが来たところでかえり討ちにしてやるし。でもあんたの細腕じゃ、どうかんがえても無理だろ」
なんだよ、そんなに心配されるほどか?
……そりゃ、俺のステータスは悲しいくらいにショボいけどもっ!
言葉につまって、俺は視線の少し下にあるセブンの顔をじっと見る。
トゲトゲしい雰囲気にだまされがちだけど、年齢よりも若干幼く見える顔立ちで、よっぽどかわいいと思うのにな?
実際、『星華の刻』の薄い本を愛するお腐れ様なお姉さま方には、セブンは主に『受け』側のキャラクターと思われていたみたいだし。
その場合、相手は陽キャなカイエンが多かったっけ……。
たしか『陽キャ×陰キャは定番なんだ』とか語られてたのを見たけど、まぁ、それはわからなくもない。
なにしろセブンは、かわいいツンデレさんだし。
カイエンくらい積極的にからんでいくタイプなら、ワンチャン仲よくなれるんじゃないだろうか?
「心配するに決まってるだろ、俺にとってのセブンは『特別』なんだから!それに顔だってイケメンだし、でも俺より小さいし、かわいいところもあるし!」
だからつい、そんなことを口にしてしまってから、ハッとなる。
いや、いくらなんでもこれくらいの年齢の男子に向かって『かわいい』は失礼だろ!
あやまろうとしたところで、しかし目の前のセブンの顔は真っ赤に染まっていた。
「なっ……あんた、そういうことサラッと言うんじゃねぇ!」
「ん?『そういうこと』って?」
たぶん、なんもおかしなことは言っていないハズ……。
「つーかあんたこそ、いいかげん危機感持てって!自分が紫殿下の恋人だって自覚あんのかよ?!」
「あ?……あー、そっちかぁ……」
そうだ、一応作戦の一環で恋人だと偽装してたんだった。
あのブレイン殿下の恋人とされる人物が、部屋を追い出されたみたいにロビーで寝てたら、いくらなんでも殿下のほうも外聞が悪いよな?
それにあの方を慕うヤツらからの嫉妬を一身にあつめている以上、こんなところで無防備に寝てたら刺されかねないってことだ。
なにしろ公式設定からして、ブレイン殿下は男女どちらもイケる人なわけだし、校内屈指のモテキャラだ。
ゲーム本編では、ヒロインみたいにかわいい子ですら嫉妬されていじめられる展開があったんだから、まして俺みたいなモブが恋人だなんて、おこがましすぎて恨みを買うのは必至だろう。
「わかった、それじゃ今からでもセラーノ先生に頼んで保健室でベッドを借りるとか?あそこなら鍵もかかるし、人目もないから問題ないだろ」
これならブレイン殿下の醜聞にもならずに済むだろう。
「あんた、なにひとつわかってないだろっ!!わざわざなんで、そんな危険なことするんだよ?!」
「っ!?」
けれどそんな提案をした俺は、セブンから思った以上の大声で怒鳴られ、思わず肩がビクリとハネた。
えっ、いや、なんで??
なんでセブンはこんなに怒ってるんだ??
この世界を腐海に沈めようとしている侵食者は、あくまでもパレルモ様総受け主義なんだし、俺なんて歯牙にもかけられないだろうに……。
けれど、どうやらそう思っているのは、俺のほうだけらしかった。
目の前に立つセブンは、これ以上ないくらい、不機嫌そうだった。
なんとなく話がはずんでいたこともあったし、おたがいに離れがたいような気持ちもあるような気がして。
そうしてかえってきた寮のロビーを見れば、けっこう立派なソファーや長椅子が、至るところにあるのに気づく。
あぁ、そっか、一晩だけなら無理にだれかの部屋に泊めてもらう必要はないのかも。
だってこれだけあったら、夜中に長椅子をひとつ占拠したところで問題なくないか?
「うーん、最悪ここでもいいか……?」
「どうした、テイラー?」
俺のかんがえは、思わず口からもれていたらしい。
「あ、いや、今俺の部屋改装してもらってるところなんだけど、今夜中にはおわらなさそうでさ。ちょっと寝る場所ないから……」
「はぁっ?!」
セブンに聞きかえされ、寮の部屋の交代劇を知っているならこれで通じるだろうと苦笑を浮かべてこたえたとたん、素っ頓狂な声があがった。
「あんたそれ、本気で言ってんのか!?」
なぜか必死の形相で、正面切って両肩をつかまれる。
「えっ?だって、いきなり泊めてくれとか言われても、だれだって迷惑だろ?……かといって改装作業中の部屋にいても、職人さんのジャマになるだけだろうし……」
さすがに今から外泊許可をとるのは厳しいだろうしなぁ。
あれ、ひょっとして詰んだ?
「あんたバカか?!数日前に野郎どもに襲われかかったばっかりだってのに、危機感どこに忘れてきた?!」
なぜだか、セブンにすごい剣幕で叱られた。
「……あれはだれでもいいからヤリたいだけの不良っていう特殊な事例だろ?それにアイツらは風紀委員に補導されて、もうここにはいないし。だいたい俺みたいのは、本来そういう対象にならないんじゃないのか?」
ふつうに顔は地味だし、背だってそこそこあるから女っぽくもないわけだし。
「でも実際、怖かったんだろ?トラウマになるくらいには。もしまた複数で襲われたら、あんたどうすんだよ!?」
「そりゃそうだけど……」
なのにセブンはめちゃくちゃ心配だって顔で、俺に説教をしてくる。
「あんたを外に放置するくらいなら、オレの部屋貸してやるから!」
「貸すって、それでセブンはどうするんだよ?」
たしかセブンの部屋は狭いひとり用の個室だったから、来客用ソファーとかはなかったはず。
もし俺を部屋にまねいたところで、ベッドはひとつしかないわけで。
別に俺は床でも大丈夫だとは思うけど、たぶんこの調子だと、セブンのほうが床で寝るとか言い出しそうだ。
「それこそオレは、ロビーの長椅子で寝ればいい。あんたとおなじ部屋で一晩すごすとか、あとで紫殿下からなにを言われることか……!」
「むしろそっちのがダメだろ!セブンはなんも関係ないんだから!」
だってあの部屋の交代はパレルモ様のワガママで、それを受け入れたのはほかでもない俺自身の責任でなのに。
「オレなら心配いらねぇ!変なのが来たところでかえり討ちにしてやるし。でもあんたの細腕じゃ、どうかんがえても無理だろ」
なんだよ、そんなに心配されるほどか?
……そりゃ、俺のステータスは悲しいくらいにショボいけどもっ!
言葉につまって、俺は視線の少し下にあるセブンの顔をじっと見る。
トゲトゲしい雰囲気にだまされがちだけど、年齢よりも若干幼く見える顔立ちで、よっぽどかわいいと思うのにな?
実際、『星華の刻』の薄い本を愛するお腐れ様なお姉さま方には、セブンは主に『受け』側のキャラクターと思われていたみたいだし。
その場合、相手は陽キャなカイエンが多かったっけ……。
たしか『陽キャ×陰キャは定番なんだ』とか語られてたのを見たけど、まぁ、それはわからなくもない。
なにしろセブンは、かわいいツンデレさんだし。
カイエンくらい積極的にからんでいくタイプなら、ワンチャン仲よくなれるんじゃないだろうか?
「心配するに決まってるだろ、俺にとってのセブンは『特別』なんだから!それに顔だってイケメンだし、でも俺より小さいし、かわいいところもあるし!」
だからつい、そんなことを口にしてしまってから、ハッとなる。
いや、いくらなんでもこれくらいの年齢の男子に向かって『かわいい』は失礼だろ!
あやまろうとしたところで、しかし目の前のセブンの顔は真っ赤に染まっていた。
「なっ……あんた、そういうことサラッと言うんじゃねぇ!」
「ん?『そういうこと』って?」
たぶん、なんもおかしなことは言っていないハズ……。
「つーかあんたこそ、いいかげん危機感持てって!自分が紫殿下の恋人だって自覚あんのかよ?!」
「あ?……あー、そっちかぁ……」
そうだ、一応作戦の一環で恋人だと偽装してたんだった。
あのブレイン殿下の恋人とされる人物が、部屋を追い出されたみたいにロビーで寝てたら、いくらなんでも殿下のほうも外聞が悪いよな?
それにあの方を慕うヤツらからの嫉妬を一身にあつめている以上、こんなところで無防備に寝てたら刺されかねないってことだ。
なにしろ公式設定からして、ブレイン殿下は男女どちらもイケる人なわけだし、校内屈指のモテキャラだ。
ゲーム本編では、ヒロインみたいにかわいい子ですら嫉妬されていじめられる展開があったんだから、まして俺みたいなモブが恋人だなんて、おこがましすぎて恨みを買うのは必至だろう。
「わかった、それじゃ今からでもセラーノ先生に頼んで保健室でベッドを借りるとか?あそこなら鍵もかかるし、人目もないから問題ないだろ」
これならブレイン殿下の醜聞にもならずに済むだろう。
「あんた、なにひとつわかってないだろっ!!わざわざなんで、そんな危険なことするんだよ?!」
「っ!?」
けれどそんな提案をした俺は、セブンから思った以上の大声で怒鳴られ、思わず肩がビクリとハネた。
えっ、いや、なんで??
なんでセブンはこんなに怒ってるんだ??
この世界を腐海に沈めようとしている侵食者は、あくまでもパレルモ様総受け主義なんだし、俺なんて歯牙にもかけられないだろうに……。
けれど、どうやらそう思っているのは、俺のほうだけらしかった。
目の前に立つセブンは、これ以上ないくらい、不機嫌そうだった。
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