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40:ライバル令嬢があらわれた!
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原作ゲームにおけるキャロライナ嬢は、いわゆるわかりやすいヒロインの『ライバル令嬢』だった。
ちょっぴり高飛車でイジワルなところもあるけれど、とびきりの美人で、高位貴族令嬢としての所作やマナーも完ぺきな存在だ。
侯爵家の一人娘という身分の高さに加え、毛先がタテ巻きロールになっている長い金髪に、猫のようにつり上がったきれいなアーモンド型の青の瞳、そしてツンととがった鼻と可憐なくちびると、さらには抜群のスタイルのよさをかねそなえている。
そんな優良物件のはずの彼女に、いまだに特定の許嫁がいないのは、ひとえに彼女が一人娘であることに起因していた。
つまりは彼女の夫となる男───しかも当然のように入り婿となるわけだが、彼こそが次期レッドサヴィナ侯爵家の当主となるわけで。
そんな相手ともなれば当然のように、ただ家柄がいいだけではなく、レッドサヴィナ家の莫大な財産を正しく運用できるだけの器と知力を持った男でなくては、娘の相手としては認められないという父親の思いもあって、貴族にありがちな『幼いころから決められた許嫁』がいないという背景があった。
公式の『なかの人』たちで決めた裏設定では、そこで出てくるのがブレイン殿下とリオン殿下のおふたりだった。
皇太子たる長兄のハバネロ殿下が無事に王となれば、その他の兄弟たちは王に仕える臣下とならなくてはいけない。
けれど、ブレイン殿下ほどの知略に長けた人物がそのまま王家にのこっていた場合、ちょっとしたことで派閥ができて跡目争いともなりかねないわけだ。
もちろん、少し俺様キャラなところもあるけれど、カリスマ性という点においてはリオン殿下もまた、人のうえに立つことが自然だと思えるようなリーダー気質だった。
王という存在には、そのカリスマ性の高さは非常に向いていると言ってもいい。
───つまり、どちらの王子ともに、王となるのにふさわしいだけの器があるわけで。
そうなれば当然のように心配になるのが、彼ら三兄弟による跡目争いというわけだった。
それを回避するために、ここで鍵をにぎるのがレッドサヴィナ侯爵家となる。
かの裕福なる侯爵家からの長年にわたる王家への貢献度の高さは折り紙つきで、それに加えて、もし将来王弟となる人物が婿入りしたのなら、まず公爵家への昇爵もあり得なくない話となる。
つまりレッドサヴィナ家へ婿入りをすることで、確実にブレイン殿下やリオン殿下が王家から国内の貴族に下ることになれば、跡目争いはもちろんのこと、ハバネロ陛下の治世の助力としてはこの上ない解決法であり、この国の安泰は約束されるようなものだった。
実際問題として、キャロライナ嬢はブレイン殿下を慕っているし、ふたりの王子にたいしてその身分や年齢がつりあうご令嬢とかんがえたとき、さらには今現在特定の許嫁がいないことが条件となると、国内で候補となれるご令嬢はそう多くない。
仮に諸外国も対象に入れたところで、あまり大きなちがいはなかった。
だからこそ、『星華の刻』本編におけるブレイン殿下とリオン殿下のルートのライバルとして、このキャロライナ嬢が出てくるのだ。
───そうなると俺からすれば彼女は、ある意味でブレイン殿下の本来の恋人となるべき人物でもあるわけで、最も顔を合わせにくい存在の筆頭でもあるというわけだった。
「さぁ、聞かせてくださいな、昨夜のあなたとブレイン殿下のあいだになにがあったのかを!」
くりかえされる要求は、気持ちはわかるけれどすなおにこたえにくい───というか、こたえたくない内容で……。
「……黙秘します。俺だけの問題ではないので」
ブレイン殿下の許可がなければ話せないとばかりに拒否すれば、相手はわかりやすくほっぺたをふくらませて不機嫌になる。
まぁ一応、昨夜のアレコレには風紀委員も絡んでいたから、この言い訳もウソにはならないはずだ。
「ズルいですわ!殿下との秘密の思い出だから、内緒にしたいんでしょう?!」
「どうしてそうなるっ?!」
なのに想定のななめうえの解釈をしたキャロライナ嬢は、机をバンっとたたいて抗議してきた。
「そうでなければ、いつの間に殿下との愛を育んでらっしゃったのです?!ワタクシとしたことが、まったく気づきませんでしたのよっ!」
キャロライナ嬢の目尻にじわりと浮かぶ涙に、罪悪感が広がっていく。
そうだよな、この子にとっては多少の貴族令嬢的打算もあったかもしれないけれど、それ以上に純粋に『王子様』にあこがれる気持ちもあったわけだろ?
彼女自身は公言していないにせよ、公式設定がそうだったから俺は知っている。
「ホント、隠されるとかえって気になるというか、今までテイラーってそういうのうまく裏で済ますタイプだと思ってたから、なんか意外だったというか……」
目の前の机に腰かけたカイエンにまで言われると、やっぱり言葉に詰まってしまう。
そりゃな、俺だってうまく表に見えないように立ちまわりたかったよ!
今回は、なぜだか失敗したけどな?!
「いや、あの……だから今朝も言ったけど、俺の場合は完全にもらい事故なだけだから!愛を育むもなにも、全然それまでの接点なんてなかったし……」
あぁもう、居たたまれない。
こういうネタでからかわれるのは、どうも苦手だ。
「まぁ!では恋に落ちるのは一瞬だったということですのね!?」
「スゲーな、一夜にしてブレイン様からの独占欲もスゴいことになってるしなー」
今度は一転して目をキラキラさせながら、さらに身を乗り出して食いついてくるキャロライナ嬢と、笑いを浮かべたままのカイエンにたたみこまれる。
「いや、ちが……っ!」
なぜだかさらに誤解を加速させていっているふたりに、もはや俺は、どう止めていいのかわからなくなっていた。
いったい、どうしたらいいんだよ、これ!?
ちょっぴり高飛車でイジワルなところもあるけれど、とびきりの美人で、高位貴族令嬢としての所作やマナーも完ぺきな存在だ。
侯爵家の一人娘という身分の高さに加え、毛先がタテ巻きロールになっている長い金髪に、猫のようにつり上がったきれいなアーモンド型の青の瞳、そしてツンととがった鼻と可憐なくちびると、さらには抜群のスタイルのよさをかねそなえている。
そんな優良物件のはずの彼女に、いまだに特定の許嫁がいないのは、ひとえに彼女が一人娘であることに起因していた。
つまりは彼女の夫となる男───しかも当然のように入り婿となるわけだが、彼こそが次期レッドサヴィナ侯爵家の当主となるわけで。
そんな相手ともなれば当然のように、ただ家柄がいいだけではなく、レッドサヴィナ家の莫大な財産を正しく運用できるだけの器と知力を持った男でなくては、娘の相手としては認められないという父親の思いもあって、貴族にありがちな『幼いころから決められた許嫁』がいないという背景があった。
公式の『なかの人』たちで決めた裏設定では、そこで出てくるのがブレイン殿下とリオン殿下のおふたりだった。
皇太子たる長兄のハバネロ殿下が無事に王となれば、その他の兄弟たちは王に仕える臣下とならなくてはいけない。
けれど、ブレイン殿下ほどの知略に長けた人物がそのまま王家にのこっていた場合、ちょっとしたことで派閥ができて跡目争いともなりかねないわけだ。
もちろん、少し俺様キャラなところもあるけれど、カリスマ性という点においてはリオン殿下もまた、人のうえに立つことが自然だと思えるようなリーダー気質だった。
王という存在には、そのカリスマ性の高さは非常に向いていると言ってもいい。
───つまり、どちらの王子ともに、王となるのにふさわしいだけの器があるわけで。
そうなれば当然のように心配になるのが、彼ら三兄弟による跡目争いというわけだった。
それを回避するために、ここで鍵をにぎるのがレッドサヴィナ侯爵家となる。
かの裕福なる侯爵家からの長年にわたる王家への貢献度の高さは折り紙つきで、それに加えて、もし将来王弟となる人物が婿入りしたのなら、まず公爵家への昇爵もあり得なくない話となる。
つまりレッドサヴィナ家へ婿入りをすることで、確実にブレイン殿下やリオン殿下が王家から国内の貴族に下ることになれば、跡目争いはもちろんのこと、ハバネロ陛下の治世の助力としてはこの上ない解決法であり、この国の安泰は約束されるようなものだった。
実際問題として、キャロライナ嬢はブレイン殿下を慕っているし、ふたりの王子にたいしてその身分や年齢がつりあうご令嬢とかんがえたとき、さらには今現在特定の許嫁がいないことが条件となると、国内で候補となれるご令嬢はそう多くない。
仮に諸外国も対象に入れたところで、あまり大きなちがいはなかった。
だからこそ、『星華の刻』本編におけるブレイン殿下とリオン殿下のルートのライバルとして、このキャロライナ嬢が出てくるのだ。
───そうなると俺からすれば彼女は、ある意味でブレイン殿下の本来の恋人となるべき人物でもあるわけで、最も顔を合わせにくい存在の筆頭でもあるというわけだった。
「さぁ、聞かせてくださいな、昨夜のあなたとブレイン殿下のあいだになにがあったのかを!」
くりかえされる要求は、気持ちはわかるけれどすなおにこたえにくい───というか、こたえたくない内容で……。
「……黙秘します。俺だけの問題ではないので」
ブレイン殿下の許可がなければ話せないとばかりに拒否すれば、相手はわかりやすくほっぺたをふくらませて不機嫌になる。
まぁ一応、昨夜のアレコレには風紀委員も絡んでいたから、この言い訳もウソにはならないはずだ。
「ズルいですわ!殿下との秘密の思い出だから、内緒にしたいんでしょう?!」
「どうしてそうなるっ?!」
なのに想定のななめうえの解釈をしたキャロライナ嬢は、机をバンっとたたいて抗議してきた。
「そうでなければ、いつの間に殿下との愛を育んでらっしゃったのです?!ワタクシとしたことが、まったく気づきませんでしたのよっ!」
キャロライナ嬢の目尻にじわりと浮かぶ涙に、罪悪感が広がっていく。
そうだよな、この子にとっては多少の貴族令嬢的打算もあったかもしれないけれど、それ以上に純粋に『王子様』にあこがれる気持ちもあったわけだろ?
彼女自身は公言していないにせよ、公式設定がそうだったから俺は知っている。
「ホント、隠されるとかえって気になるというか、今までテイラーってそういうのうまく裏で済ますタイプだと思ってたから、なんか意外だったというか……」
目の前の机に腰かけたカイエンにまで言われると、やっぱり言葉に詰まってしまう。
そりゃな、俺だってうまく表に見えないように立ちまわりたかったよ!
今回は、なぜだか失敗したけどな?!
「いや、あの……だから今朝も言ったけど、俺の場合は完全にもらい事故なだけだから!愛を育むもなにも、全然それまでの接点なんてなかったし……」
あぁもう、居たたまれない。
こういうネタでからかわれるのは、どうも苦手だ。
「まぁ!では恋に落ちるのは一瞬だったということですのね!?」
「スゲーな、一夜にしてブレイン様からの独占欲もスゴいことになってるしなー」
今度は一転して目をキラキラさせながら、さらに身を乗り出して食いついてくるキャロライナ嬢と、笑いを浮かべたままのカイエンにたたみこまれる。
「いや、ちが……っ!」
なぜだかさらに誤解を加速させていっているふたりに、もはや俺は、どう止めていいのかわからなくなっていた。
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