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マツヲ。

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34:お茶会イベントは無事クリア!?

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 保健室内での秘密のお茶会からのバックハグときたら、まちがいなくセラーノルートの親密度があがってからのラブイベントだけど……。
 だから、俺はヒロインとはちがうんだってば!
 全然話してたことだって異なるし、ヒロインみたいに相手をはげますようなことも言えないのに。

 でも、俺に後ろから抱きついてくるセラーノの手が、かすかにふるえているのがわかった。
 ひょっとして、例の従者のことでも思い出しちゃったんだろうか?
 それなら相手が落ちつくまでなら……まぁいいか。

 だったら少しでもセラーノが安心できるようにと、おどろきのあまりに強ばりかけていたからだから力を抜くと、さらにふるえている手のうえに、己のそれをそっと重ねた。
 大丈夫だから、安心して。
 そんな気持ちが少しでも相手に伝わればいいと願いながら……。





「ホントに君には、なんてあやまったらいいのカナ……僕もヤラかしたけど、昨日のブレインくんは相当ヤンチャにヤラかしたみたいだし……止められなくてゴメンネ?」
 しばらくしてから満足したのか、セラーノはパッと腕を解いてくれた。
 もうその口調は、いつものフワフワしたものにもどっていた。

「いやぁ、たしかにいまだに本調子とは言えないですけども、少しはここで休ませてもらえたので……寝不足は解消された感じですかね?」
 少なくとも陽のかたむき加減からしても、体育のあとの時間も、ここで寝かしてくれてたんだろうしな。
 心なしか、体力は回復した気がする。

「ウンウン、だろうねぇ?そんなにたくさんの痕をつけられるほど溺愛されたなら、なかなか昨夜のブレインくんは離してくれなかったンだろうしネェ?そりゃ寝不足にもなるヨネ!」
 したり顔でうなずくセラーノは、さらりと爆弾を投げ込んでくる。

「えっ?」
 ちょっと待て、『そんなにたくさんの痕』って、見たのか?
 つーか、どこまで見たんだ!?

「いやぁ、君が連れてこられたときにいっしょにいた赤い髪の大きな子が、めちゃくちゃ心配してたカラね。あと君にボールぶつけちゃった黒髪の子?彼も心配してたカラ、念には念を入れて、じっくりとすみずみまで診察しといてあげたンだヨ」
 にこにこの笑顔で言うセラーノは、とても楽しそうに見える。

 うん?
 赤い髪……ってことはカイエンか?
 それに黒髪ってことは───まさか俺にとっての最愛の『うちの子』セブンのことか!?

 うわ、なんだその『星華せいかとき』攻略キャラクターの大渋滞!
 今さらながらゲームのなかのモブって、そんな豪華なメンバーのそばにいられるんだって、おどろかされるな。

「───まぁ、その痕もこうして君がここに運ばれてくる可能性も視野にいれたうえでの、僕にたいする牽制だったのかもしれないけど。ブレインくんの勘はするどいカラなぁ」
「えっと……?」
「君はサ、もう少し自分の価値を知って危機感を持ったほうがイイと思うヨ?」
 俺の、価値ねぇ……んなもの、表向きはたいしてないだろうに。

「君は……僕にとって、いちばん大切だった人にどこか似てるンだヨネ。見た目とかじゃなくて、中身が。さっき言ってくれた『どうすればジャマをせずに済むか』っていうのもそっくりで……久しぶりに彼に会えたみたいな気持ちになって、実はちょっと泣きそうダッタ」
「あ…………」
 名前こそ出さないものの、だれのことを指しているのかはすぐわかった。

「あのネ……君さえよければ、またこうしてお茶飲みにキテくれるカナ?」
「……そうですね、自分でいいのなら」
 そんな今にも消え入りそうな儚い笑みを浮かべられたら、うなずくしかできないだろ!

「ありがとう……って、そろそろ授業も終わる時間ダネ。お友だちも心配しているだろうし、君は一度教室にもどるとイイ」
「そうします。お茶、ごちそうさまでした」
 あいさつをして、保健室を出ようとしたところで、ちょうど授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

「あ、そうそう、さっき診察するのに上着脱がせてネクタイもはずしてるカラ、ちゃんとつけてったほうがイイと思うヨ?今のままだと、ブレインくんにつけられたキスマークも歯形も見放題だしネ!」
「っ!?」
 だけど部屋を出る直前にかけられた声に、あわててふりかえる。

「ちなみにベストとネクタイはこっちにあるからネ。いやぁ、思春期の学生に今の君の姿は、ちょっと刺激が強すぎるンじゃないカナァ」
 最後の最後に特大の爆弾を投げこんできたセラーノは、にこにこと笑顔のままにそんなことを口にする。
 俺をからかう姿からは、ブレイン殿下にも通じる、腹黒キャラの匂いがした。

 あれっ、セラーノのキャラクター改変は無事に止められたんだよな?!
 たしかに昨晩、あの『声』とともに世界の改変を却下できたはずなのに……。
 思わずドキリとして、相手の真意を探ろうと、じっと目を見つめるけれど、いつもどおりの糸目からは、なにも読み取ることはできなかった。

 あらためて己の姿をかえりみれば、たしかにベストは脱がされてネクタイもはずされていたし、シャツのボタンも上からいくつかはずされたままだったけど。
 でもあたまを打ったかもしれない人の救護なら、着ている衣服をゆるめて楽にするのは当然の処置でもあるわけで。

 ───ダメだ、わからん!
 親しい相手に軽口をきくような雰囲気でもあり、心をゆるしただけにも見えるし、弱った姿を見せてしまった照れ隠しも兼ねて、俺をからかっているだけにも見える。

「~~~~~っ、貸してください!すぐに着ますからっ!」
 でもとりあえず今できることは、あわてて走り寄って受けとり、しっかりと着込むことだけだった。
 あわてるあまりに、あまりきれいにはできなかったけど、それはこの際もういいとして。

「失礼しましたっ!」
「うんうん、それだけ元気なら、もう大丈夫そうダネ~♪」
 ピシャッと音を立てて扉をしめると、足早に教室へと向かったのだった。
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