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*21:相手のヒーロー力が強すぎる*

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*前回に引きつづき、しょっぱなからの肌色だらけ展開です。
*閲覧時には周囲からの視線にご注意ください。
*また、そういったシーンの描写が苦手な方は、読み飛ばしを推奨します。





 絶対にそんなモノ、入りっこないって思ってたのに……。
「フフ、ようやく飲み込めましたか。よくがんばりましたね?」
 背後から抱きしめてくるブレイン殿下からうなじへのキスがふり散らされ、まるで小さな子どものあたまでもなでるみたいに、やさしくお腹をなでさすられる。

「ンッ、や、それは……っ!」
 お腹なんて別にどうってことなさそうな場所なのに、薬で高められたままのからだでは、たったそれだけのことですら、ビクつく原因となる。
 その奥で、せまいところを押しひろげて存在を主張している、のかたまりを意識してしまう。

「やっぱり、はじめてじゃ苦しかったですかね?ほら、ちゃんと息をしないと」
 空気をもとめて、俺の口もとがハクハクと声も出せずにあえいでいるのに気づいたのか、ブレイン殿下は背後から耳もとにささやきかけてくる。

「うぅ、だってぇ……」
 指と比べたら、圧迫感が全然ちがう。
 内臓を押し上げるようなその感覚は、これまで生きてきたなかで、味わったことがないようなものだ。
 ……なのに困るのは、思ったよりもそれが痛くないってことのほうだった。

 いや、もちろんだれも好きこのんで痛みを感じたいとか、そういう願望は一切ないけれど。
 ただあまりにも抵抗なく受け入れてしまえるのも、男としてのプライドに、音を立ててヒビが入るような気がするというか……。

 それこそ、まるでこの世界を改変しようとする腐女子の妄想力に屈したみたいで、おなじクリエイターとしてくやしいというのでもあるんだろうか?
 でも。

「大丈夫、ほら息を吸って……吐いて……」
 俺が落ちつくのを待つように、ブレイン殿下は動きもせずに、からだを強ばらせる俺をなだめてくれる。
 うなじをなめられ、いくつもキスを落とされれば、その腰に響くエロい声とあいまって、なけなしの俺の理性はけずりとられていってしまう。

 ───ヤバい、さっきからその紳士的な対応に俺のなかの乙女心成分が、キュンキュンと反応している。
 それは男だとか女だとかは関係なく、乙女ゲームを開発しようというスタッフなら、だれしもが持っているべきモノだ。

 しかも相手だって、こんなにを硬くしているなら早く動きたいだろうに、あくまでもはじめての俺を優先して、気づかおうとしてくれているのがわかるから、思わずうれしくなってしまう。
 どうしようこの人、カッコよすぎるだろ!?

「も、いいです……っ、好きにうごいても……っ!」
 やさしくなんて、しないでほしい。
 都合のいい性欲処理の相手だとしてもかまわない。
 いっそのこと、本当に薬効を抜くためだけだとわかるように適当にあつかってくれれば、こんな気持ちにならないで済んだのに……。

「ダメだよ、キミを傷つけたくない」
 なのに、この期におよんでなお、こちらを気づかうようなセリフを吐くなんて!
 こんなことを言うのなんて、ゲームのなかの攻略キャラクターとしての彼が、『ふだんはイジワルな言動もするけれど、あくまでもベッドのなかでは紳士的』という性格の存在として定められているから、だけなのかもしれないのに……。

 でも乙女ゲーのなかという二次元の───もっと言えば、データのなかにしか存在しなかったハズの彼は、現にこうしてこの世界に生きるひとりの人間としてここにいる。
 それも、プログラミングされただけのキャラクターでは、決して出せない存在感とかがやきがある。

 あーもう、クソッ、お手上げだ!!
 こんなのカッコよすぎて、ブレイン殿下に落ちるの不可避なヤツじゃん!!
 もうやだ、これって乙女ゲーの攻略キャラクターのヒーローりょくが強すぎ案件じゃないのかよっ!!!

 なかばヤケを起こしたようにそんなことを思ったところで、相手はあくまでも俺のことを、まるでヒロインにするかのようにやさしくあつかおうとする。
 だけどこんなことされたら、おなじ世界に生きる存在のひとりとして、俺のことが大切だって思ってくれてるのかも……なんて、勘ちがいしそうになるだろ!?

 好きになっても報われない───いや、報われちゃいけない相手なのに。
 だって、もう何度もくりかえしてきたことだけど、彼は『星華せいかとき』の隠し攻略キャラクターなんだから。

 ヒロインとの出会いのフラグを折るような、そんな物語の改変にあたるようなこと、それを阻止しなきゃいけない立場の俺なら、絶対にしちゃダメなヤツだろ!
 それがわかっているからこそ、胸が苦しくてたまらなかった。

「~~~っ、なんでそんなにやさしくするんですか!?俺なんて、雑にあつかっても問題ない相手でしょう?!」
 本当はわかってるんだ、こんなのやつあたりでしかないってことは。
 相手に惚れたくないから、『雑にあつかえ』だなんて。

「……キミにそんな趣味があるとは知らなかったな。できるだけ要望に添ってあげたいから、ほかにも特殊な性癖があるのなら、早めに申告してもらいたいものだね」
「~~っ、ちがいます!そんなの、あるわけないでしょう!」
 なのに俺のムチャクチャなセリフでさえ、受け止めてくれる。

 なんなんだよ!
 いったいその懐の深さは、どこから来てるんだよ?!
 文句を言いたくて、必死に身をよじって相手の顔をにらみつける。

「せっかくだからこの際、言いたいことはすべて口に出してしまいなさい」
 ほら、相手もこう言ってくれているんだ。
 そう思うのに、でも間近で見るブレイン殿下の顔は、それはもう神絵師による作画を具現化したことで、とてつもないうるわしさを放っていた。

「ん?なにかな?」
 あ、ダメなヤツだこれ。
 だってもう、まぶしすぎるもん、このお顔。

「そんなの言われても、こまる……からぁっ!」
 結局その顔面の造作の良さに負け、そう泣きごとを口にすることしか、今の俺にはできなかったのである。
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