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謝罪

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「公爵夫妻、並びにご令嬢、近衛騎士団副団長が参られました。」

謁見の間に入る際、騎士が声を張り上げて言った。

重そうな扉がギギギと音を立てながらゆっくりと開いていく。その扉には精密な彫刻がほられていて長い時間をかけて作られたものということが見てとれるほどだ。

「(とっても綺麗だわ)」

リリアーヌはルシアンに抱きかかえられながらそんなことを考えていた。

「「ヒュッ」」

謁見の間に入った途端に息をのむような変な音が響いた。
それは国王と宰相だ。一昨日一回だけならなんとか周りを誤魔化して王家に嫁いで来てもらうことができるかもしれないと淡い期待を抱いていた2人。それがリリアーヌがルシアンに抱っこされて登場したことで昨晩も床入りしたと暗に言っている。周りには他にも重鎮たちがいるので緘口令を出そうにも効果はとてもとは言えないが期待できない。おまけに仕上げと言わんばかりに見えるところに咲いている無数の赤い花。もうどうにもならない状態だ。宰相はなんとか平静を取り戻したが、国王の方は無理のようだ。顔が絶望に染まっている。

「お久しぶりでございます。国王陛下」

公爵は跪きながらも不敬とも取られかねない挨拶をした。
リリアーヌはルシアンにおろしてもらい、ルシアンと共に公爵に倣う。

「あ、ああ…よく来てくれた。顔を上げたまえ」

皆、顔を上げるがリリアーヌだけは俯いていた。なぜなら、国王の「ああ」が元婚約者と同じで密かにツボっていたからである。

「(何?今の馬鹿みたいな声、元婚約者とまるっきり同じじゃない!親子揃って馬鹿なのかしら?ダメだわ、気抜いたら笑ってしまうわ。ダメよ、リリアーヌ、我慢しなくちゃ)」

リリアーヌは我慢しなくてはと思いながらも遠目から判断できないくらいに小さく肩を震わせている。
こうなったら、放っておくのが一番いいのだとリリアーヌの周りの人間は知っている。だから、王家側から話を切り出されるのを待っている。

「ボソッ陛下、まずは謝罪を…」

宰相は国王にそう問いかける。

「公爵、夫人、そしてリリアーヌ嬢先日は我が愚息がとんでもないことをした。まずそのことを公式の場で謝罪させて頂こう、本当に申し訳なかった…」

国王と共に宰相、魔法師団長、騎士団長が頭を下げる。

「こちらこそ、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。」

公爵、夫人が形式的に謝罪をする。

「それでこれからのことなのですが、この機会に話し合いを進めていってよろしいでしょうか、国王陛下?」

騒ぎを起こした息子の父親たちは公爵の気迫に気圧されながらもなんとか国王が返事をする。

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