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公爵夫妻の新たな楽しみ
しおりを挟む「先程、侯爵家より使いが来ました。こちらが書簡です。」
そう言って年配の執事が公爵夫妻のいるサロンに現れ、書簡を渡す。公爵はそれを受け取り愛する妻と共に読む。
「そうか…婚約破棄されたか。予想通りすぎて少しつまらないがこれからが楽しそうだ。」
「あの副団長の屋敷に行ったんですって?王家の焦る顔が見たいのかしら?これは副団長と共に床入りしたと考えていいのではないかしら?」
「十中八九そうだろうな。我が娘ながらよくやる。他の貴族との子を宿しているかもしれない娘を王家に嫁がせるわけにはいかないからな。陛下を含む重鎮たちの絶望する顔を想像するだけで面白い!」
「そうですわね。王家まるごと潰すのも面白そうではないかしら?あっ、でも!王家側の責任を問うて無理難題突きつけるのも面白そうじゃない?私たちのリリーを貶めた奴らの処罰も私たち自ら提案したくない?」
「それはいい考えだ!あのボンクラどもを叩きのめすのも面白そうだ。」
謀反と捉えられてもおかしくないような会話をしているこの夫妻。普通なら王家に牙を剥くなど許されないが、この家は例外だ。なんたって王家というか国まるごとを救ったのだから。
20年ほど前、隣国から攻め込まれ危機的状況に陥った本国。絶対に負ける戦だった。なんとか粘っていたが食料もなくなり兵たちも限界だった。そんな中、貿易などで国の経済を回していると言われている公爵家が私財を投げ打ち、あらゆる伝手を使って食料問題を解決したのだ。それだけでなく本気を出せば神すらも負けると言われた公爵夫妻が自ら戦地に赴いたのだ。自国の兵を全員下がらせ目にも止まらぬ速さで敵兵を殺していった。かすり傷こそひとつもないが返り血で全身血まみれだったため、その様はまるで死神と恐れられるほどに…。もちろんその姿を見たものはもうこの世にはいない。敵兵は全員殺したし、自国の兵は邪魔になるからととっくに帰らせていたからだ。
自国の勝利を収めて国に帰り、褒美を提案されたがこのまま恩を売っといておくのも面白そうと全部却下した。公爵家を失墜させようと目論んだ貴族はたくさんいたが、彼らには悪事を面白半分で国に報告し、家を丸ごと潰した。
公爵家は国民からの支持が王家よりも高い。そんな彼らに牙を剥けば国民が黙っちゃいない。そんなこんなで王家は公爵家に全く手が出せない。第一王子との婚約の打診もリリアーヌ本人が面白そうだと言ったから受けただけであって、夫妻はそこまで興味がなかった。そして今回の騒動。公爵夫妻は王家も弄ぶいい機会だと楽しみが増えたようでるんるん気分だ。
「明日あたりに王家から使いが来るだろうな。登城までにリリアーヌがここに帰ってくればいいのだが…。まあそこは副団長殿が気を利かせてくれるだろう。」
「あなたはリリーと副団長さんとの婚姻を認めるわよね?」
「もちろん。あの若き天才にも興味がある。私たちの手でさらに強くさせるのも面白そうだ。」
「それはいい考えね!」
夫妻はあははうふふと仲睦まじく笑い合っている。
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