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side ネイサン
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いつものように訓練場で団員たちと訓練をしていると、今日は非番のはずの副団長が訓練場に来て、訓練を中断させた。皆一斉に副団長の方に視線を向けた。
「おはよう。今日は皆に稽古をつけてくれる講師の方がいるんだ。失礼のないように。」
副団長はそう言って、隣にいる第三騎士団の制服を着た茶髪に緑の瞳をした青年に挨拶を促した。
「はじめまして。皆様の稽古をつけるよう団長から仰せつかった、セインと申します。どうぞよろしく。」
セインという男がそう挨拶をすると、パチパチパチと拍手が送られる。
俺が所属する近衛騎士団は第三まである4つの騎士団の中でも反吐がでるような厳しい訓練を重ねた優秀なものしか入れないところだ。それなのに第三騎士団のそれも自分より若い男が自分たちの稽古をするというのだ。納得できるわけがない。
俺は挙手をし、男に発言の許可を求め、許可が降りたので発言した。
「お初にお目にかかります、近衛騎士第6位長ネイサンと申します。質問をしてもよろしいでしょうか?」
軽く自己紹介をする。ちなみに第6位長というのは近衛の中の実力順位のことだ。
「はい、どうぞ。」
男が質問の許可をくれる。
「失礼ながらセイン様はお強いのでしょうか?第3騎士団の制服を着ているようにお見受けしますが。」
「ネイサン!」
俺は無礼にも思ったことを口にした。副団長が咎めるように俺の名前を男がそれを手で制し話し始めた。
「ネイサン様だけでなく他の団員の方もそう思っているでしょう。正直に言いますと、私は第3騎士団所属のものではございません。この制服は王宮のものに怪しまれないよう団長に用意してもらったものです。ですが、私が皆様の稽古をつけるのにふさわしいか分かりません。ですのでネイサン様、私と試合を致しましょう。」
「セ、セイン様、それは…「よろしくお願いします」
俺が今からしよしようと思っていたことを男が提案してくれた。副団長が焦ったように名前を呼ぶが遮り、受ける。俺より体格の良くないものが強いはずがない。ボッコボッコにしてやろうと俺は思った。
「こちらこそ。あなたが勝ったら私はここを去りましょう。ですが、私が勝ったら私を認めてくださいますね?」
「もちろんでございます。」
男の問いかけに俺は自信満々に応える。
副団長は諦めたようにはぁーと溜息をつく。どうしてだかわからないが気にしないことにした。
「わかった。勝負を認めよう。審判は副団長である俺だ。剣は木刀、相手が完全に負けるところでの寸止めとする。では位置につけ!」
副団長が審判をしてくれるというので言われた通りに動き、5メートルほど離れた位置に着く。
「礼っ!」
副団長の声に男と俺は向かい合って礼をする。団員たちが見守る中、木刀を構え開始の合図を待つ。
「それでは始めっ!」
試合開始の合図が出された。
「「「「えっ?」」」」
俺を含む団員たちが声を出す。それもそのはず、合図を出された瞬間男は俺の視界から消え、気づいた時には俺の後ろに立っていて木刀を私の首に当てていた。
「セ、セインの勝利!」
副団長も状態の把握ができていなかったのか勝敗をいうまで時間がかかる。勝敗の結果を聞き、男は俺の首から木刀を離し、副団長の合図で礼をする。
「互いに礼っ!」
「ありがとうございました」
男は礼をしたが俺は動けずにいた。それは他の団員たちも一緒だ。
すると訓練場に団長が入ってきて俺に向かって話した。
「どうだネイサン、王妃様は強いだろう?剣だけでなく魔法も使えてその腕は魔法師団長以上だ。」
「「「「はっ?」」」」
俺を含む団員たち全員が呆け顔になっている。しばらく固まっていたがやっとの思い出言葉を出す。
「お、おうひさまでいらっしゃるのですか?」
混乱しすぎて噛んでしまった。だがそんなことを気にしている場合ではない。本当ではないと言って欲しいが、本当らしい。そうなると俺はとんでもないことをしてしまったらしい。下手したら不敬罪だ。団長たちが話しているが、そんなことは耳に入ってこない。すると一つ思ったことがあった。王妃様は性別は女であるはずなのに目の前にいるのは男だ。そして王妃様に関する人物像のことも気になった。何か思い当たったことがあったのか男は魔法を発動させた。すると輝くような金色の髪にブルーサファイアのような目になる。噂とは全く違ってとても可愛らしいお方だ。それに団員たちが頬を赤く染める。しばらくその状態が続いていたが、俺を含む団員が一斉に跪き頭を下げる。
「「「「王妃様とは知らず、申し訳ありません!」」」」
すぐに無礼を詫びた。
「あっ、頭を上げて!これからセインとして仲良くしてくれると嬉しいわ。」
王妃様は不敬罪ほどのことをした俺をいとも簡単に許してしまった。そして最後ににっこりと微笑む。その笑顔が素敵すぎて何人か鼻血を出した。俺はすんでのところで止める。止血しまた頭を下げる。
「「「「光栄でございます」」」」
「ははっ!それでいい。では王妃様、私ともお手合わせしていただいても?」
団長が茶化したように言う。俺たちは失礼ながらも彼らが戦っているところを見たいと思った。
審判を頼まれた副団長は2人の準備が終わる前に始めの合図を出した。
お決まりのように王妃様が視界から消える。
カンッと剣がぶつかり合う音がする。団長は俺が反応出来なかったことにはんのうしていた。王妃様は空中を回転して少し離れに着地する。その姿は空を舞う蝶のようだった。そしてものすぎスピードで向き合い正面から打ち込む。何度も打ち合い、王妃様は訓練場照らすライトを背にし高く飛び上がった。そして暗器を団長めがけて6個飛ばす。団長はライトを直視してしまい目を瞑る。高いところから照らしている照明などいつも気にならないからそこを狙われたのだと思う。
「しまったっ!」
団長はなんとか暗器を剣で飛ばし、すぐさま後ろに向き直り剣を振る。俺にはその意味がわからなかったが次の瞬間、王妃様は団長の後ろにいた。団長は本命が後ろだったと気づいていたのだ。王妃様はそれを余裕で交わし団長の足の間をくぐり抜け、すぐに立ち上がり団長の首に木刀を当てる。
「勝者セインッ!」
副団長が判決をくだされ、王妃様は木刀を離し団長と向き合い互いに礼をする。
「「ありがとうございました」」
「「「「お~」」」」
俺たちから感嘆の声が上がる。それに対して団長は
「これが王妃様の実力だ。俺は決して手を抜いていない。それがわかったらさっさと稽古をつけてもらえ。俺は休む。」
そう言って団長は訓練場を出て行った。そして俺はもう一度王妃様に謝罪をする。
「数々の無礼をお許し下しさい。王妃様とは知らず申し訳ございません。」
私の謝罪をいとも簡単に許してしまわれた。そのことに俺たちは感動を覚える。
感動したのはここまでで俺たちはこの後、地獄を見ることになった……
「おはよう。今日は皆に稽古をつけてくれる講師の方がいるんだ。失礼のないように。」
副団長はそう言って、隣にいる第三騎士団の制服を着た茶髪に緑の瞳をした青年に挨拶を促した。
「はじめまして。皆様の稽古をつけるよう団長から仰せつかった、セインと申します。どうぞよろしく。」
セインという男がそう挨拶をすると、パチパチパチと拍手が送られる。
俺が所属する近衛騎士団は第三まである4つの騎士団の中でも反吐がでるような厳しい訓練を重ねた優秀なものしか入れないところだ。それなのに第三騎士団のそれも自分より若い男が自分たちの稽古をするというのだ。納得できるわけがない。
俺は挙手をし、男に発言の許可を求め、許可が降りたので発言した。
「お初にお目にかかります、近衛騎士第6位長ネイサンと申します。質問をしてもよろしいでしょうか?」
軽く自己紹介をする。ちなみに第6位長というのは近衛の中の実力順位のことだ。
「はい、どうぞ。」
男が質問の許可をくれる。
「失礼ながらセイン様はお強いのでしょうか?第3騎士団の制服を着ているようにお見受けしますが。」
「ネイサン!」
俺は無礼にも思ったことを口にした。副団長が咎めるように俺の名前を男がそれを手で制し話し始めた。
「ネイサン様だけでなく他の団員の方もそう思っているでしょう。正直に言いますと、私は第3騎士団所属のものではございません。この制服は王宮のものに怪しまれないよう団長に用意してもらったものです。ですが、私が皆様の稽古をつけるのにふさわしいか分かりません。ですのでネイサン様、私と試合を致しましょう。」
「セ、セイン様、それは…「よろしくお願いします」
俺が今からしよしようと思っていたことを男が提案してくれた。副団長が焦ったように名前を呼ぶが遮り、受ける。俺より体格の良くないものが強いはずがない。ボッコボッコにしてやろうと俺は思った。
「こちらこそ。あなたが勝ったら私はここを去りましょう。ですが、私が勝ったら私を認めてくださいますね?」
「もちろんでございます。」
男の問いかけに俺は自信満々に応える。
副団長は諦めたようにはぁーと溜息をつく。どうしてだかわからないが気にしないことにした。
「わかった。勝負を認めよう。審判は副団長である俺だ。剣は木刀、相手が完全に負けるところでの寸止めとする。では位置につけ!」
副団長が審判をしてくれるというので言われた通りに動き、5メートルほど離れた位置に着く。
「礼っ!」
副団長の声に男と俺は向かい合って礼をする。団員たちが見守る中、木刀を構え開始の合図を待つ。
「それでは始めっ!」
試合開始の合図が出された。
「「「「えっ?」」」」
俺を含む団員たちが声を出す。それもそのはず、合図を出された瞬間男は俺の視界から消え、気づいた時には俺の後ろに立っていて木刀を私の首に当てていた。
「セ、セインの勝利!」
副団長も状態の把握ができていなかったのか勝敗をいうまで時間がかかる。勝敗の結果を聞き、男は俺の首から木刀を離し、副団長の合図で礼をする。
「互いに礼っ!」
「ありがとうございました」
男は礼をしたが俺は動けずにいた。それは他の団員たちも一緒だ。
すると訓練場に団長が入ってきて俺に向かって話した。
「どうだネイサン、王妃様は強いだろう?剣だけでなく魔法も使えてその腕は魔法師団長以上だ。」
「「「「はっ?」」」」
俺を含む団員たち全員が呆け顔になっている。しばらく固まっていたがやっとの思い出言葉を出す。
「お、おうひさまでいらっしゃるのですか?」
混乱しすぎて噛んでしまった。だがそんなことを気にしている場合ではない。本当ではないと言って欲しいが、本当らしい。そうなると俺はとんでもないことをしてしまったらしい。下手したら不敬罪だ。団長たちが話しているが、そんなことは耳に入ってこない。すると一つ思ったことがあった。王妃様は性別は女であるはずなのに目の前にいるのは男だ。そして王妃様に関する人物像のことも気になった。何か思い当たったことがあったのか男は魔法を発動させた。すると輝くような金色の髪にブルーサファイアのような目になる。噂とは全く違ってとても可愛らしいお方だ。それに団員たちが頬を赤く染める。しばらくその状態が続いていたが、俺を含む団員が一斉に跪き頭を下げる。
「「「「王妃様とは知らず、申し訳ありません!」」」」
すぐに無礼を詫びた。
「あっ、頭を上げて!これからセインとして仲良くしてくれると嬉しいわ。」
王妃様は不敬罪ほどのことをした俺をいとも簡単に許してしまった。そして最後ににっこりと微笑む。その笑顔が素敵すぎて何人か鼻血を出した。俺はすんでのところで止める。止血しまた頭を下げる。
「「「「光栄でございます」」」」
「ははっ!それでいい。では王妃様、私ともお手合わせしていただいても?」
団長が茶化したように言う。俺たちは失礼ながらも彼らが戦っているところを見たいと思った。
審判を頼まれた副団長は2人の準備が終わる前に始めの合図を出した。
お決まりのように王妃様が視界から消える。
カンッと剣がぶつかり合う音がする。団長は俺が反応出来なかったことにはんのうしていた。王妃様は空中を回転して少し離れに着地する。その姿は空を舞う蝶のようだった。そしてものすぎスピードで向き合い正面から打ち込む。何度も打ち合い、王妃様は訓練場照らすライトを背にし高く飛び上がった。そして暗器を団長めがけて6個飛ばす。団長はライトを直視してしまい目を瞑る。高いところから照らしている照明などいつも気にならないからそこを狙われたのだと思う。
「しまったっ!」
団長はなんとか暗器を剣で飛ばし、すぐさま後ろに向き直り剣を振る。俺にはその意味がわからなかったが次の瞬間、王妃様は団長の後ろにいた。団長は本命が後ろだったと気づいていたのだ。王妃様はそれを余裕で交わし団長の足の間をくぐり抜け、すぐに立ち上がり団長の首に木刀を当てる。
「勝者セインッ!」
副団長が判決をくだされ、王妃様は木刀を離し団長と向き合い互いに礼をする。
「「ありがとうございました」」
「「「「お~」」」」
俺たちから感嘆の声が上がる。それに対して団長は
「これが王妃様の実力だ。俺は決して手を抜いていない。それがわかったらさっさと稽古をつけてもらえ。俺は休む。」
そう言って団長は訓練場を出て行った。そして俺はもう一度王妃様に謝罪をする。
「数々の無礼をお許し下しさい。王妃様とは知らず申し訳ございません。」
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