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No.6

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 「あ、なんでそれ……」

 「橋のとこに置いてあったんだよ。ほら、返すよ。」

 「……ありがとう。」

 財布を受け取るなりなんなり、中身を点検し出す。

 「安心しろよ、いくら俺がお前より貧相だろうが、中身とかは抜いてないから。」

 「……でも俺の名前知ってるってことは中身開いたんだよね?」

 「いや、そりゃ誰のか分かんねぇから開けたんだろうが。てか、お前有名人らしいじゃん。別に俺が知ってても普通じゃね?」

 「君そういうの、うとそうだから言ってるの。」

 ガタンッ。

 大人しくイケメンくんの財布の点検を見届けるも、手からコンビニ袋と水の入ったペットボトルが滑り落ちた。

 「あーもう、大丈夫?」

 いつの間にか財布をしまっていたイケメンくんが、俺の目の前にしゃがんで、辺り一帯に散乱したものを片付け始める。

 「あたまいてぇの。」

 「だから、風邪かなんかでしょ。」

 「二日酔いじゃねぇの?」

 「だから、その類いじゃないでしょ。」

 袋を手渡され、感謝の意を述べようとするも、すぐにその袋を奪い取られる。

 「わ、何すんの。」

 「俺の家、ここから近いから。」

 「ん?お前ん家がどーしたんだよ。」

 「休んでいきなよ。俺一人暮らしだし、今日は予定なんもないし。」

 「ちょっと君、大丈夫?」

 「これがだいしょーぶに見えっかよ。」

 「はいはい、ごめんごめん。」

 結局このイケメンくんに家に連れ込まれた。

 クールな顔しといて、思ったより強引でマジでビビった。

 「もう俺これで死んでも良いかも。こんなフカフカ高級ベッド、俺じゃ到底買えない。」

 「何馬鹿なこと言ってんだか。」

 イケメンくんの家にお邪魔した瞬間、熱がだんだんと上がってきた。

 今さっきまではただ単に火照っているだけだと思ってたけど、マジで風邪引いてるとか聞いてない。

 「君、ホントに運が良いと思う。良かったね、俺とすれ違って。」

 「お前こそ財布拾えたんだぞ、ありがたく思え。」

 「風邪引いてても尚減らず口は治らないの?」

 不覚ながらも、俺はコイツに看病されてしまっている。

 正直、顔が良すぎて動揺するので、早くうちに帰りたい。

 余計に熱上がんじゃねぇの、これ。

 「うん、ちょっと熱下がったね。なんか食べる?」

 下がってたわ。イケメンのマイナスイオン効果パねぇ。

 「いや。」

 だがしかし、どれだけイケメンのマイナスイオン効果があろうとも、俺の食欲は死んでいる。

 「嫌じゃないでしょ。雑炊かなんか作ってくるから。」

 「俺お粥派なんだけど。」

 「うるっさい、ほら。ちょっと席外すから、寝てなよ。」

 そう言うなり、俺の身体に布団をバサッとかける。

 おい、ちょっとバサッてしないでくれる?

 バサッて、乱暴なんか?

 「いや。」

 「……っねぇ、」

 そのまま立ち去ろうとするイケメンくんの手首を掴んで、自身の方へ引く。

 「……俺、さっきから行くなって言ってんだけど。」

 「あーもう、君ってばホントめんどくさい。」
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