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No.5

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 ……とりあえず、あの後きちんとお家に帰りまして、現在に至る。

 「だいじょぶかな、俺これ。窃盗罪にならない?」

 目の前にある、バカ高いブランド物の長財布を眺める。

 あのあと結局どうすることも出来なくて、財布を持ち帰ってしまった。

 でも、わざとじゃないんだし許してくれたって良いだろ?

 「っあぁ~、痛ぇぇ、」

 昨日の呑みすぎでズキズキと痛む頭を両手で押さえる。

 何か食べたいな。そう思ってふらつく足取りでキッチンの方へと向かい、引き出しをゴソゴソと漁り始める。

 「うわ、味噌汁もなんもねぇじゃん。」

 寒ぃしココアも飲みたかったのに……とか思いつつ、無いものは仕方が無いのでコンビニに出かけることにした。

 わざわざ着替える余裕なんてサラサラないので、ジャージのまま、財布と携帯だけで外に出る。

 「んぁ~、マジ寒ぃ、」

 本当に今日大学がなくて良かった……あったら確実に講義中死んでたのは間違いない。

 こう見えて俺は真面目チャンな方だから、しっかり授業は受けてんの。

 家から徒歩15分のコンビニに着き、店内に入る。

 入店音が若干うるさく感じ頭が痛むも、とにかく早く帰ろうとインスタントコーナーへ早足で歩く。

 「何にしよ。」

 わかめ味噌汁、コーンスープ、ポタージュ、クラムチャウダー……。

 ポタージュやクラムチャウダーなんて一口食べるや否や、おトイレとお友達になるのは確定なので、消去法でわかめ味噌に手を伸ばす。

 あ、確か水も切れてたよな。買っておこう。

 「お会計、432円でございます。」

 「カードで。」

 財布を取り出そうとポケットに手を突っ込むと、

 ……あれ、これアイツのじゃん。

 例の長財布を掴んでしまったので、

 「すみません、スマホ決済で。」

 スマホで決済アプリを開き、バーコードをかざす。

 やってしまった。

 「ありがとうございます。」

 コンビニ袋を下げ、ノロノロとした足取りでコンビニを後にした。

 「いや、マジで頭痛いんだけど。」

 帰路につき、行きしの足早さは消えさったようにトロトロフラフラ歩いていく。

 これは帰ったらすぐ鎮痛剤だな、と思いつつ先程購入した水を開けようとする。

 今自分の出せる全力でキャップを開けようとするも、ビクともしない。

 やらかした、俺は本気で呑みすぎたんだとそのときに自覚した。

 更に痛んでくる頭を軽くさすりながらショボショボとしていると、

 「あの、大丈夫?」

 自身の背中に誰かの手があてられた感覚がして、後ろを振り返った。

 「ん……?あ、お前あれだ。昨日のイケメン。」

 視界に入ったのは、ハイスペックイケメ……

 じゃなくて、アイツだった。

 「え、イケメン?いや、そうじゃなくて。大丈夫ですか?顔色が悪いようだけど。」

 そう言うと、心配そうに眉をひそめながらこちらを覗き込む。

 ちょっと、覗き込むん辞めろよ。

 俺のが背ちっさいのバレんだろうが。

 「あぁ、大丈夫大丈夫。昨日呑みすぎただけだから。」

 「いや、そういう類いじゃないでしょ。ほら、熱あるんじゃない?」

 イケメンくんの手が俺の額に触れ、ひやっとした感覚が伝わる。

 「うわ、冷たくて気持ちい。」

 その手を掴み、そのまま自身の頬へと当てる。

 「っちょ……」

 「あ、そーだ。」

 ちょいと不服そうな?困ったような顔をするイケメンくんを他所に、ポケットから長財布を取り出す。

 「これ、お前のだろ?浮須うきま澄也くん。」
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