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No.3

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 「……は?お前、俺を騙してたのか?」

 「あ、ご、ごめん……」

 聞いてない……聞いてない!!!

 「お前がモデルだなんて聞いてねぇよ!!」

 あれからずっと実のない話を延々とべっていると、ふと"モデルでもあんな呑み会をするだなんて、全然知らなかった。"なんてのうのうと自慢話が始まるとは。

 「だって言ってないから。」

 そりゃモデルなんだったら筋が通るわな!

 そのご尊顔も、そのスタイルも、その雰囲気も!

 「でも、ベータのモデルも最近は珍しくないか?はぁ、ほんっと羨ましいわ。」

 一昔前、アルファのモデルが一斉を風靡ふうびしていた気がする。

 えっと、なんて名前なんだっけ。

 あのアルファのチョー人気モデル。

 「あ……べータか、」

 「ん?お前、アルファじゃないならべータだろ?」

 「んや、えっとぉ……俺、」
 
 俺がそう言うと、今まで飄々としていたコイツが急に、しどろもどろになりながら視線を泳がせていた。

 「ん?今度はなんだよ、別にべータのモデルが居たって良いだろ。」

 「いや、俺、違くて……」

 両手の拳をギュッと力を込めて握ったかと思えば、口の端を結んで俯く。

 「オメガ……なんだよ、」

 そう、今にも消え入りそうなか細い声で呟いたっきり、踵を返して橋の向こうへ駆けてしまった。

 「ちょっ、待っ……!」

 慌てて引き留めようと手を伸ばすも、その手は宙を舞って滑り落ちた。

 引き留めて良いのか、分からなかった。

 俺がこれ以上、オメガの奴と関わって良いのか分からなかったのだ。

 「あーあ、だからアイツに惹かれたのか。」

 やっぱり俺はおかしい、本当におかしい。

 恋愛に対して億劫な俺が、誰かにこんなにも惹かれることなんて絶対にありえない。

 ベータ、ましてや嫌悪感を抱いているアルファに惹かれるなんてことも絶対にありえない。

 でも……でも、オメガだったら例外なんだよ。

 アイツがオメガだなんて、最後の最後まで気が付かなかった。

 アイツだって抑制剤だのなんだのでアルファ対策しているだろうし。

 だってモデルだ。なら尚更一般のオメガより気を付けないといけないことも多いだろう。

 だから俺が悪いんだ、この俺の体質が悪いんだよ。

 「あー、もう。本当に最悪だ。」

 俺は痛いほど分かってる。

 アルファという生き物が、どんなに醜い生態系であるということを。

 俺がアルファでなければ、今頃もっと楽しく、大学生らしく恋愛が出来ていたんだろうか。

 でも、俺がアルファである限りそんなことは叶いっこない。

 なぜならアルファとは、本能と欲望にまみれた、この世で最も絶滅すべき存在だからだ。
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