第七魔眼の契約者

文月ヒロ

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第二章:光と叡智交錯する魔の祭典

第53話学院内の侵入者(2)

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「それで?どうすんのよ徹」

 昼休み。授業終わりの閑散とした教室内に、鳴神徹、小萌蛇操沙、如月小雪の姿があった。
 窓際の席に座る徹は机に頬杖をつきながら、前に座る操紗の声に反応して、そちらへ顔を向けた。

「【決闘】の件。鳴神のお爺ちゃんも言ってたけどさ……普通にやっても勝算低いよ?」

「分かってるっての。だから、どの組よりも姑息に賢く戦うんだ。まっ、幸いにもうちの科は、【迷宮】の攻略とその内容が審査対象だからな。他の連中からの妨害を避けるようにすりゃあ、そこそこ良い線行けるだろ。それにさ……相手にしたら不味そうな連中のリストアップは悟にしてもらってるしよ」



「……伝えなくていいのかな、この事。和灘君に」

 一瞬、言葉に詰まって、徹は小雪を見た。

「そりゃあ――」





 言いかけた、その時だった。

 徹は唐突に目を見開く。
 いな、徹だけではない。操紗、小雪もから放たれる魔力を感じ取り、ハッと顔を上げた。

 ――教室が爆発により吹き飛ばされたのは、その直後だった。

「ギィヤハハハ……!」

 空中。そこに、自らが起こした破壊の一部始終を見て、醜悪に嗤う低級悪魔の姿があった。
 そうして、眼前に突き出した掌の前に、悪魔は再び魔法陣を浮かべる。





「――【霹靂神はたたがみ】!」

 閃光が、幾重にも折れ曲がった歪な線を描きながら、瞬時に空を駆け昇った。
 小規模ないかづちに打たれた悪魔が、羽ばたく力を失って地面に向かって落ちていく。

「ったく……いてぇだろーが、バカ悪魔」

 風に流されていく土煙の中から、徹が現れる。
 その最中、彼の人差し指と中指に挟まれていた【呪符】は、魔力の粒子となって散っていった。
 【呪符】として使用していた式札が、役目を終えた。

「徹君……!」

「あっ。防御魔術サンキューな、如月さん」

「ううん。本当はもっと、強い魔術が使えれば良かったんだけどね。皆、怪我させちゃったから」

「大丈夫ですって。こんなの掠り傷、掠り傷」

「それよりも」と、徹が周囲を見渡す。
 壁が崩れ、教室の窓際に無視出来ない大きさの風穴が空いてしまっていた。

「これじゃ、暫く部屋使えないわね」

「おぉ小萌蛇、生きてやがったか」

「余裕。で、悪魔は?」

「そこでぶっ倒れてる」

 地に伏した悪魔の方へ徹が顔を向けると、操紗もそちらに視線を向けた。
 不意打ちを喰らい、無防備で雷撃を浴びた事で、最早虫の息だ。

「やりぃ、徹」

「下級悪魔倒したくらいじゃ威張れねぇよ、腹立つ事にな。ほら、とっとと祓って、誰でもいいから先生呼んで――」





「ギィヤッ!」

 致命的という程の油断はしていなかった。徹も、他の二人も。
 しかし、足元の影より現れた新たな悪魔の存在には、直ぐに気付けなかったッ。

「カ――ハッ……!」

 影のような黒い魔力を纏った悪魔の拳に、徹は殴られる。吹き飛び、地面を転がる。

「徹君!?」

「小雪後ろ!」





「――えっ?」

 操紗の声が耳に届いた時には、もう遅かった。
 小雪の背後に三体目の悪魔の姿。
 その悪魔の掌の前に構築された魔法陣が、紅蓮色の光を強めている最中だった。
 この先に待っているのは死。どうしようもない程に絶対的な。

 しかし、その理を、魔眼の【契約者】は拒絶する。

 ――が悪魔の眼前を通り過ぎた。
 そう思った直後、小雪の姿が消えていた。
 当惑する悪魔が、咄嗟に周囲へ視線を彷徨わせ、見つけた。
 如月小雪を両手に抱え、その場に佇む和灘悟の後ろ姿を。

「――ッ!」

 獲物を仕留め損ねた苛立ちに、悪魔は歯軋りと共に顔を歪めた。
 悪魔は体内の魔力を熾すと、魔法陣を再展開し、炎を両手の掌の上に浮かべる。




 不意に、その真横からスッと掌が現れた。

「戦闘中のよそ見はした方が良い。――でないと、死ぬこうなるような羽目になる」

 回避する間もなく、魔法陣より高火力の火炎が一気に放出され、悪魔は炎熱の中に消えた。

「大丈夫か、如月さん」

「わ、和灘君……?」

「おう、ろすから」

「う、うんッ」
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