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第二章:光と叡智交錯する魔の祭典
第52話学院内の侵入者(1)
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「なッ、悪魔だと?チッ、またか……!」
「東条待て」
唐突なノウズの警告。それを聞き、動こうと急く東条を妨げるように、悟は右腕を前に出し彼を制止した。
そうして、瞼を閉じたかと思うと、次の瞬間にスッと目を開く。
「三十」
「は?」
「悪魔の数だよ、合計で三十体いる。【天眼】で見た」
至って冷静な思考と態度で、悟は把握した現状を告げた。
「魔眼の力か」
「あぁ。で?どうするよ」
「……決まっている、【魔術師】の本分を果たしに行くのさ。最弱者、悪魔達の位置が分かるのなら手伝え」
「りょーかいっ。つっても、結構な数だぞ」
「確かにそうだが、まぁ、問題ない……やはりな。アレを見ろ」
言われて、悟は東条が視線だけで示した空の方を見た。
【天眼】を使うまでもなく、悪魔のような翼を広げ、空中を飛ぶ数体の石像の姿が見える。
「何だ?あの化け物……」
「ガーゴイル。学院に配置されてる、侵入者の排除役だ。知っているだろ」
「動くのは今初めて知ったけどな。てか、アレ落ちねぇよな。頼っていいんだよな?」
「安心しろ。アレでも、存在の起源になっているのは竜の伝説だから。そこそこ強いし、頼りにしていい。それに【魔術師】は僕達だけじゃない」
「ほぉん、そいつぁ心強い事で。んじゃあ、まずは――コイツからだな」
言いながら半身になった悟。次の瞬間、その眼前を矢の如く通り過ぎようとする影。
だが、叡智の魔眼の【契約者】たる和灘悟にとっては、影の動きはあまりに遅過ぎた。
――魔力を纏った拳が猛威を振るう。
「――ッ!」
拳が、奇襲を仕掛けた襲撃者に直撃する。
しかし、
「前から思ってたけどよ、悪魔って意外とタフじゃねぇか?あと、結構キモい」
ドラゴンのような翼に一対の角、人間のような体躯をしつつも紫染みた鱗付きの肌。
悟が見据える視線の先、魔力を伴った打撃に吹き飛ばされた悪魔が、片手で腹を抱えてこちらを睨んでいた。
その全身から魔力を迸らせているのは、威嚇のためか攻撃のためか。
軽く拳を構えて戦闘態勢に入る悟。
が、動き出す直前だった。
炎の塊が中空を一気に駆け抜ける。
「気のせいだろう。分かったなら、さっさと行くぞ」
断末魔さえも火炎の“轟”という音と熱に飲み込まれ、悪魔が焼き払われた。
炎を生み出したであろう東条の方を見ると、鼻を鳴らしてそう言葉を返される。
「へいへい……」
言いつつ、大きく息を吐いた後、悟はややつり目がちな目を微かに細め、構内を屋上から静かに見下ろしたのだった――。
「東条待て」
唐突なノウズの警告。それを聞き、動こうと急く東条を妨げるように、悟は右腕を前に出し彼を制止した。
そうして、瞼を閉じたかと思うと、次の瞬間にスッと目を開く。
「三十」
「は?」
「悪魔の数だよ、合計で三十体いる。【天眼】で見た」
至って冷静な思考と態度で、悟は把握した現状を告げた。
「魔眼の力か」
「あぁ。で?どうするよ」
「……決まっている、【魔術師】の本分を果たしに行くのさ。最弱者、悪魔達の位置が分かるのなら手伝え」
「りょーかいっ。つっても、結構な数だぞ」
「確かにそうだが、まぁ、問題ない……やはりな。アレを見ろ」
言われて、悟は東条が視線だけで示した空の方を見た。
【天眼】を使うまでもなく、悪魔のような翼を広げ、空中を飛ぶ数体の石像の姿が見える。
「何だ?あの化け物……」
「ガーゴイル。学院に配置されてる、侵入者の排除役だ。知っているだろ」
「動くのは今初めて知ったけどな。てか、アレ落ちねぇよな。頼っていいんだよな?」
「安心しろ。アレでも、存在の起源になっているのは竜の伝説だから。そこそこ強いし、頼りにしていい。それに【魔術師】は僕達だけじゃない」
「ほぉん、そいつぁ心強い事で。んじゃあ、まずは――コイツからだな」
言いながら半身になった悟。次の瞬間、その眼前を矢の如く通り過ぎようとする影。
だが、叡智の魔眼の【契約者】たる和灘悟にとっては、影の動きはあまりに遅過ぎた。
――魔力を纏った拳が猛威を振るう。
「――ッ!」
拳が、奇襲を仕掛けた襲撃者に直撃する。
しかし、
「前から思ってたけどよ、悪魔って意外とタフじゃねぇか?あと、結構キモい」
ドラゴンのような翼に一対の角、人間のような体躯をしつつも紫染みた鱗付きの肌。
悟が見据える視線の先、魔力を伴った打撃に吹き飛ばされた悪魔が、片手で腹を抱えてこちらを睨んでいた。
その全身から魔力を迸らせているのは、威嚇のためか攻撃のためか。
軽く拳を構えて戦闘態勢に入る悟。
が、動き出す直前だった。
炎の塊が中空を一気に駆け抜ける。
「気のせいだろう。分かったなら、さっさと行くぞ」
断末魔さえも火炎の“轟”という音と熱に飲み込まれ、悪魔が焼き払われた。
炎を生み出したであろう東条の方を見ると、鼻を鳴らしてそう言葉を返される。
「へいへい……」
言いつつ、大きく息を吐いた後、悟はややつり目がちな目を微かに細め、構内を屋上から静かに見下ろしたのだった――。
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