第七魔眼の契約者

文月ヒロ

文字の大きさ
上 下
50 / 64
第二章:光と叡智交錯する魔の祭典

第49話魔眼【契約者】の選択(1)

しおりを挟む
 ――数日が経過した頃。

 担任の琴梨から用意された補習も全て終え、悟は完全な意味で日常を取り戻していた。

「で、実戦演習サボってるワケだけど、どうしたの?」

 授業中、【魔術演習場】にて魔術を交わす生徒達から少し離れた場所で、彼らの様子を眺める赤眼瞳は、隣の悟に尋ねた。

「休憩中、な。サボりなんて、滅多な事言うもんじゃねぇぞ」

「はいはい、そうね。そういう事にしておいた方が、都合いいし」

「そーゆーこった。……んで、瞳、ちょっと話があんだけどさ」

 本題に入ったな、と思い、瞳は悟の方へ顔を向けた。

「話?」

「そっ、もうすぐ魔法祭あるだろ。一緒に出ねぇかって思ってさ」

「えっと……操紗達と出るんじゃなかったの?ていうか、さっきから、その三人が見あたらないけど……」

「さぁ?連れションとかじゃねぇの。まぁ、それは置いておいて、話を戻すとだな。俺も徹達と出るつもりだったんだけど、色々理由付けられてなかった事になって」

「理由ねぇ……ちなみに、どんなのよ?」

 そう訊くと、悟は何か引っかかるのか、少し考えるような顔をする。
 心なしか、その表情は困惑しているようにも見えた。

「分かんねぇんだよな。理由らしい理由は聞いたけど、本当のところは多分はぐらかされて。ま、そんなこんなで暇になったんだけど、折角だし一回魔法祭に出てみようかなと思ってんだ」

「なるほどね。でも、【魔術師】科とか【魔具師】科とかならまだしも、【迷宮】科は団体出場が必須でしょ。ほら、毎年うちの科は魔法祭で【迷宮】攻略で競うし、確か最低三人だったような気がするけど。仮に私が出たとして、条件人数が足りてないじゃない」

「いや、当ては一人いる。だから、瞳が入ってくれりゃあ人数は足りるけど、どうする?駄目なら他の――」

「そう、だったら出る」

「……えっ、いいの、か?本当に。だって、あれ団体行動で…………」

 自分から誘っておいて、予想が外れた、とでも言いたそうな表情を悟は浮かべた。
 それがおかしくて、瞳はクスッと笑った。

「えぇ、【迷宮】を一人で潜るの、やめたから。それに――一緒に【迷宮】攻略した仲でしょ?」

 悟はきょとんとした顔になる。
 しかし、それも一瞬の事。

「……そうか、そうだな」

 吸血鬼のような鋭い犬歯をあらわにして、ニィと快活な笑みを浮かべた。

「それじゃあ、そろそろ授業に戻って実戦演習の続きね。悟、私の相手しなさい」

「おう、任せとけ――っとワリィ、その前にちょっと便所」

「ったく、アンタは……」

 ――【名無し】を相手にしてた時みたいに振る舞ってたら、少しは格好がつくのに。
 思わず、そう口にしそうになって、瞳は口をつぐんだ。
 何故だろう、大した発言じゃないはずなのに、いざ言おうとしたら恥ずかしい。というより、顔が心なしか熱くなって来る。

「ん?どうしたよ瞳?」

「う、うっさい!とっとと行きなさいッ」

「お、おぉ、キレてらっしゃる……」

 てっきり呆れられたと思っていたのだが、どうやら、怒りを買ったようだった。

 ――分かんねぇ。ノウズみたく、相手の思考が見えりゃあな……。

 無論、行使する能力に制限のかかった【契約者】には出来ないが。
 瞳から逃げるようにして、トイレに向かって走りながら、悟は少しだけ【適合者】が羨ましいと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ナマズの器

螢宮よう
キャラ文芸
時は、多種多様な文化が溶け合いはじめた時代の赤い髪の少女の物語。 不遇な赤い髪の女の子が過去、神様、因縁に巻き込まれながらも前向きに頑張り大好きな人たちを守ろうと奔走する和風ファンタジー。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

満月の夜に烏 ~うちひさす京にて、神の妻問いを受くる事

六花
キャラ文芸
第八回キャラ文芸大賞 奨励賞いただきました! 京貴族の茜子(あかねこ)は、幼い頃に罹患した熱病の後遺症で左目が化け物と化し、離れの陋屋に幽閉されていた。一方姉の梓子(あづさこ)は、同じ病にかかり痣が残りながらも森羅万象を操る通力を身につけ、ついには京の鎮護を担う社の若君から求婚される。 己の境遇を嘆くしかない茜子の夢に、ある夜、社の祭神が訪れ、茜子こそが吾が妻、番いとなる者だと告げた。茜子は現実から目を背けるように隻眼の神・千颯(ちはや)との逢瀬を重ねるが、熱心な求愛に、いつしか本気で夢に溺れていく。しかし茜子にも縁談が持ち込まれて……。 「わたしを攫ってよ、この現実(うつつ)から」

処理中です...