46 / 64
第二章:光と叡智交錯する魔の祭典
第45話第一魔眼の【適合者】(1)
しおりを挟む
「別に悪い奴じゃねぇよ、悪戯癖はあるけどな。【魔術師】の中じゃ礼儀正しい方だし、位階じゃ瞳のが上だろうが。それに、落第にならなかったのはあいつのお陰だしな」
『こうなる事を見越して知恵を絞ったんです』
緋嶺の言葉が悟の脳裏に蘇った。
落第を通告されたあの日に、確かそんな事を言われたのだったか。
――今度、何か礼しとかねぇとな……。
「まっ、兎に角、あのにゃんこに関しては位階だとか、んなくだらねぇ事は気にすんなって話」
思考を途中で切り替え、悟はそう続けた。
「わぁってるって。位階は飾り、大事なのは魔術と魔力の使い方、だろ?」
「琴梨先生の受け売りだけどな。……んじゃ徹、やっぱ――出るのか?」
「おうよ。出るぜ、今年の魔法祭は」
左右の如月小雪、小萌蛇操紗へ確認するように目配せすると、徹はニィッと笑みを作って返事を告げた。
どうやら、本人達の意思は固そうだ。
「え、ちょ、ちょっと待って。魔法祭に出るの?その、流石に危険じゃ……」
話に割って入ったのは瞳だった。
しかし、
「そうも言ってらんないのよねぇ、瞳。あたし等みたいな本当に弱っちい【魔術師】の家だとかは、多少無理してでもどっかで良い実績残して家盛り立ててかないと、近いうちに廃業よ廃業」
「ぁ、そっか……」
操紗が愚痴を零すようにして自分達の現状を伝えた事で、瞳は何も意見出来なくなった。
何か思うところでもあったのだろう。
――なるほど、君は彼等の手伝いのために出る、と。
ノウズの思念を受け取った悟は、魔眼が浮かべる納得の微笑を横目で見る。
――何か言いたそうだな?
――ふふっ、【魔術師】を辞めるために……だったかな。いいのかい?あまり彼等と関係を深め過ぎると、返って後で辞めにくくなる気もするけれど。
――何を言い出すかと思えば、んな事かよ。お前と契約した時点で、今更だっての、ノウズ。こっちはもう長生き出来りゃそれで良いし、それに……あいつらを焚き付けたの、俺なんだよ。なら、その責任取るのは当たり前だろ?
「ん?どうしたよ、悟」
不意に、徹が首を傾げて訊いて来た。
「ぁあ、いや、何でもねぇよ」
悟はノウズとの会話を切り上げると、ニィと口角を上げ、吸血鬼のような鋭い犬歯を見せた。
「それより徹、魔法祭に出る奴のリストアップはしてんのか?」
「当然。ほら、これだ。で、それがどうしたよ」
「俺が【天眼】で、相手にした時に相性悪そうな奴の魔力を見る。同じクラスの奴等は兎も角、他の連中の情報はあんまり持ってねぇだろ?まぁ、時間ねぇから後でだけど」
「なるほど、そいつぁ助かるな。てか悟、お前の眼、んな事も出来んのかよ……」
「他に簡単な透視とか、霊視とか、色々な。例えば、この食堂だったら……」
と、【天眼】で食堂内の生徒達を見つつ、そこまで言った時だった。
悟の意識が、一人の男子生徒に集中した。
――白い、【魔術師】?
『こうなる事を見越して知恵を絞ったんです』
緋嶺の言葉が悟の脳裏に蘇った。
落第を通告されたあの日に、確かそんな事を言われたのだったか。
――今度、何か礼しとかねぇとな……。
「まっ、兎に角、あのにゃんこに関しては位階だとか、んなくだらねぇ事は気にすんなって話」
思考を途中で切り替え、悟はそう続けた。
「わぁってるって。位階は飾り、大事なのは魔術と魔力の使い方、だろ?」
「琴梨先生の受け売りだけどな。……んじゃ徹、やっぱ――出るのか?」
「おうよ。出るぜ、今年の魔法祭は」
左右の如月小雪、小萌蛇操紗へ確認するように目配せすると、徹はニィッと笑みを作って返事を告げた。
どうやら、本人達の意思は固そうだ。
「え、ちょ、ちょっと待って。魔法祭に出るの?その、流石に危険じゃ……」
話に割って入ったのは瞳だった。
しかし、
「そうも言ってらんないのよねぇ、瞳。あたし等みたいな本当に弱っちい【魔術師】の家だとかは、多少無理してでもどっかで良い実績残して家盛り立ててかないと、近いうちに廃業よ廃業」
「ぁ、そっか……」
操紗が愚痴を零すようにして自分達の現状を伝えた事で、瞳は何も意見出来なくなった。
何か思うところでもあったのだろう。
――なるほど、君は彼等の手伝いのために出る、と。
ノウズの思念を受け取った悟は、魔眼が浮かべる納得の微笑を横目で見る。
――何か言いたそうだな?
――ふふっ、【魔術師】を辞めるために……だったかな。いいのかい?あまり彼等と関係を深め過ぎると、返って後で辞めにくくなる気もするけれど。
――何を言い出すかと思えば、んな事かよ。お前と契約した時点で、今更だっての、ノウズ。こっちはもう長生き出来りゃそれで良いし、それに……あいつらを焚き付けたの、俺なんだよ。なら、その責任取るのは当たり前だろ?
「ん?どうしたよ、悟」
不意に、徹が首を傾げて訊いて来た。
「ぁあ、いや、何でもねぇよ」
悟はノウズとの会話を切り上げると、ニィと口角を上げ、吸血鬼のような鋭い犬歯を見せた。
「それより徹、魔法祭に出る奴のリストアップはしてんのか?」
「当然。ほら、これだ。で、それがどうしたよ」
「俺が【天眼】で、相手にした時に相性悪そうな奴の魔力を見る。同じクラスの奴等は兎も角、他の連中の情報はあんまり持ってねぇだろ?まぁ、時間ねぇから後でだけど」
「なるほど、そいつぁ助かるな。てか悟、お前の眼、んな事も出来んのかよ……」
「他に簡単な透視とか、霊視とか、色々な。例えば、この食堂だったら……」
と、【天眼】で食堂内の生徒達を見つつ、そこまで言った時だった。
悟の意識が、一人の男子生徒に集中した。
――白い、【魔術師】?
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
デリバリー・デイジー
SoftCareer
キャラ文芸
ワケ有りデリヘル嬢デイジーさんの奮闘記。
これを読むと君もデリヘルに行きたくなるかも。いや、行くんじゃなくて呼ぶんだったわ……あっ、本作品はR-15ですが、デリヘル嬢は18歳にならないと呼んじゃだめだからね。
※もちろん、内容は百%フィクションですよ!
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる