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第一章:始まりの契約
第15話凸凹コンビの【迷宮】探索
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訳が分からない。
和灘悟という存在に関して、赤眼瞳が初めにそう思ったのは果たして何時だっただろうか。
三日程前、出会い頭に、彼から告白紛いの頼み事をされた時か。
それともその後、彼が圧倒的な実力差のある第四位階の【魔術師】を負かした時か。
もしかしたら、一年前くらいに、三百年ぶりに第一位階の【魔術師】が現れたと聞いた時かもしれない。
正直に言えば、はっきりと覚えていない。
ただ、今明確に言える事があるとするならばこれに限る。
「なんっなのよアンタッ……!さっきから見てれば、目に付く【罠】【罠】全部発動させて、ホント何がしたい訳!?」
こめかみに青筋を浮かべた瞳の口から、堰を切ったように怒声が飛び出し【迷宮】内で響いた。
視線の先、そこには仰向けに倒れている和灘悟の姿があった。
そう、この男だ、この男は一体何なのだろうか?
【迷宮】へと潜って十秒も経たない内に、悟が最初の【罠】に引っ掛かった事が発端だった。
それから数分後、またしても【罠】に嵌まり、三つ目を発動させてしまったのがそれから一分前後経った頃の話。
その後も、事あるごとに【罠】の設置された場所に触れ、悟は被害を被っていた。
飛び出して来た矢や剣によって、服が所々裂かれており、地雷を喰らって焦げているのがその証拠。
ちなみに悟が今倒れているのは、十秒程前に発動させた地雷系の【罠】に嵌まり、回避したはいい物の衝撃波で吹き飛んだ為である。
「んな事、言ったって……これ体質なんだからしょうが――」
――シュトンッ。
上体を起こしながら言い訳をしようとした悟の眼前を矢が横切り、直後、【迷宮】の壁にそれが突き刺さる音がした。
ギギギギッ、と悟が壊れたロボットのように顔を下へ向け、地面に着いた手を見れば、床が不自然な形で、もっと言えば長方形に凹んでいる。なるほど、どうやらまた【罠】を発動させてしまったらしい。
あと数センチ頭に近ければ、脳味噌を【迷宮】内の床にぶちまけていたかもしれない。
肝を冷やしつつ、当たらなくて良かったと安堵した悟は、瞳に視線を戻すと再び口を開く。
「兎に角、俺が【罠】に嵌まりやすいのは体質――てか多分、文字通りの意味で何かの呪いだから。今のとか、さっきのとか、その前のとか全部仕方ねぇんだよ」
「なッ……!」
悟の発言に、瞳は心底呆れた。
ここは本物の【迷宮】、偽物とは訳が違うのだ。悟の話が正しいのだとして、そんなふざけた呪いに掛かった人間が立ち入って良い場所ではない。
だが、どうも眼前のこの少年は引き返す気などないらしい。
「はぁ、何でこんな馬鹿に付いて行こうなんて考えただろ私……」
「知らねーよ」
「うっさい、別にアンタに訊いてないってのッ。ほら、とっとと立って歩く。試験合格するんでしょ?……ったく」
呑気に座ったままいる悟に背を向け、瞳は止まっていた歩みを再び進め出した。
悟への協力を約束してしまった手前、ここで投げ出す訳にはいかない。
とはいえ、こんな手伝い早く終わらせるに限る。
――そんな風に、油断をしていた。
「踏むな、赤眼ッ!」
背後から飛んで来た悟の声。
だが、もう遅かった。
「ぇ……?」
足元に浮かび上がった魔法陣。
急速に輝きを増していくその白光。
――しまッ……避け、ないと…!
死ぬ。
【罠】に気付いてからまだ約一秒。理由は分からない、けれど、瞳の勘がそう言っていた。
だが、間に合わない、回避が間に合わないッ。
体は自然と、次の瞬間に来る激痛に耐える準備をしていた。
大丈夫だ、死なない、死なない。この分なら、最悪でも重傷で済――
「【加速】!」
「きゃッ……」
そんな瞳を、悟が突き飛ばした。
転んだ瞳は、咄嗟に、先程まで自分がいた場所へ首を向ける。
【罠】が発動し悟を襲ったのは、その直後だった。
「……ッ!」
衝撃的な光景に、大きく見開かれる瞳の目。
時の流れが、遅くなったように感じた。
駆け出さなければならない。
逃げろ、と叫ばなければならない。
分かっているのに、体の動きが遅くって。
眼前。赤眼瞳の目に映った物。
それは、数本の巨大な鉄の棘、その一つが悟の胸を貫いている様子だった。
和灘悟という存在に関して、赤眼瞳が初めにそう思ったのは果たして何時だっただろうか。
三日程前、出会い頭に、彼から告白紛いの頼み事をされた時か。
それともその後、彼が圧倒的な実力差のある第四位階の【魔術師】を負かした時か。
もしかしたら、一年前くらいに、三百年ぶりに第一位階の【魔術師】が現れたと聞いた時かもしれない。
正直に言えば、はっきりと覚えていない。
ただ、今明確に言える事があるとするならばこれに限る。
「なんっなのよアンタッ……!さっきから見てれば、目に付く【罠】【罠】全部発動させて、ホント何がしたい訳!?」
こめかみに青筋を浮かべた瞳の口から、堰を切ったように怒声が飛び出し【迷宮】内で響いた。
視線の先、そこには仰向けに倒れている和灘悟の姿があった。
そう、この男だ、この男は一体何なのだろうか?
【迷宮】へと潜って十秒も経たない内に、悟が最初の【罠】に引っ掛かった事が発端だった。
それから数分後、またしても【罠】に嵌まり、三つ目を発動させてしまったのがそれから一分前後経った頃の話。
その後も、事あるごとに【罠】の設置された場所に触れ、悟は被害を被っていた。
飛び出して来た矢や剣によって、服が所々裂かれており、地雷を喰らって焦げているのがその証拠。
ちなみに悟が今倒れているのは、十秒程前に発動させた地雷系の【罠】に嵌まり、回避したはいい物の衝撃波で吹き飛んだ為である。
「んな事、言ったって……これ体質なんだからしょうが――」
――シュトンッ。
上体を起こしながら言い訳をしようとした悟の眼前を矢が横切り、直後、【迷宮】の壁にそれが突き刺さる音がした。
ギギギギッ、と悟が壊れたロボットのように顔を下へ向け、地面に着いた手を見れば、床が不自然な形で、もっと言えば長方形に凹んでいる。なるほど、どうやらまた【罠】を発動させてしまったらしい。
あと数センチ頭に近ければ、脳味噌を【迷宮】内の床にぶちまけていたかもしれない。
肝を冷やしつつ、当たらなくて良かったと安堵した悟は、瞳に視線を戻すと再び口を開く。
「兎に角、俺が【罠】に嵌まりやすいのは体質――てか多分、文字通りの意味で何かの呪いだから。今のとか、さっきのとか、その前のとか全部仕方ねぇんだよ」
「なッ……!」
悟の発言に、瞳は心底呆れた。
ここは本物の【迷宮】、偽物とは訳が違うのだ。悟の話が正しいのだとして、そんなふざけた呪いに掛かった人間が立ち入って良い場所ではない。
だが、どうも眼前のこの少年は引き返す気などないらしい。
「はぁ、何でこんな馬鹿に付いて行こうなんて考えただろ私……」
「知らねーよ」
「うっさい、別にアンタに訊いてないってのッ。ほら、とっとと立って歩く。試験合格するんでしょ?……ったく」
呑気に座ったままいる悟に背を向け、瞳は止まっていた歩みを再び進め出した。
悟への協力を約束してしまった手前、ここで投げ出す訳にはいかない。
とはいえ、こんな手伝い早く終わらせるに限る。
――そんな風に、油断をしていた。
「踏むな、赤眼ッ!」
背後から飛んで来た悟の声。
だが、もう遅かった。
「ぇ……?」
足元に浮かび上がった魔法陣。
急速に輝きを増していくその白光。
――しまッ……避け、ないと…!
死ぬ。
【罠】に気付いてからまだ約一秒。理由は分からない、けれど、瞳の勘がそう言っていた。
だが、間に合わない、回避が間に合わないッ。
体は自然と、次の瞬間に来る激痛に耐える準備をしていた。
大丈夫だ、死なない、死なない。この分なら、最悪でも重傷で済――
「【加速】!」
「きゃッ……」
そんな瞳を、悟が突き飛ばした。
転んだ瞳は、咄嗟に、先程まで自分がいた場所へ首を向ける。
【罠】が発動し悟を襲ったのは、その直後だった。
「……ッ!」
衝撃的な光景に、大きく見開かれる瞳の目。
時の流れが、遅くなったように感じた。
駆け出さなければならない。
逃げろ、と叫ばなければならない。
分かっているのに、体の動きが遅くって。
眼前。赤眼瞳の目に映った物。
それは、数本の巨大な鉄の棘、その一つが悟の胸を貫いている様子だった。
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