何で僕を？

２９５

月夜に抱きかかえられるようにして、ベッドの中に。

「まだ、起きるには早いよ。ずっとこうしてるから、安心して眠って」

胸元に頬を寄せ、小さく頷く。

そして、目を閉じ、月夜の鼓動を感じながら、眠りについた。



ピチュチュチュ

小鳥の囀りに、意識が浮上。

「葵ちゃん、おはよう」

「んっ、おはよう・・・月夜、いつから起きてたの？」

僕が目を開くと、すぐに声をかけられた。

それ、僕の寝顔をずっと見てないと、できないよね？


何だろう、異常にご機嫌？

それはもう、誰が見ても明らかな位、テンションが高い。

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。

僕の顔中に、キスを降らせると、収納から洋服を取り出し、いそいそと、僕に着せていった。

自分の着替えは後回しなのね・・・

選ぶ権利を、譲ってくれないっていうのもあって、服を選ぶのは、毎回、月夜任せ。

そのまま髪の毛も整えられて、可愛い仕上がりに。

でもこれ、外に出る時は、上からローブを羽織っちゃうから、他の人の目に触れたりはしないんだよねぇ。

だからもうねぇ、諦めた。

好きにしてって。

それに、凄く楽しそうにしてるから、楽しみを取り上げるのもね・・・


コンコン

「失礼します。おはようございます。お目覚めのようですね。お支度はお済みですか？何か、お手伝いする事はありますか？」

「ん～ん、大丈夫、月夜がしてくれたから」

ラピスさんが、支度とか手伝うのは、僕にだけ。

月夜は、他人に触れられるのを嫌がって、この世界にきた当初から、そういうのはしないでいいって、断わっていたらしいからね。

「では、お食事の用意が整っておりますので、どうぞ、食堂まで」

「ありがと、月夜の着替えが終わったら、すぐに行くから」

「葵ちゃん、着替え終わったから、もう行けるよ」

えっ、いつの間に？

月夜を見ると、髪の毛を手で軽く梳きながら、整えているところだった。

早くない？