何で僕を?

大器晩成らしい

文字の大きさ
上 下
223 / 358

222

しおりを挟む
どうしかけてくるのか分からないので、最大に警戒をしながら、動向を窺う事に。

「うわっ、っとっとお、すみません」

・・・

私としたことが、思考が一瞬止まってしまいました。

近くまで来たと思ったら、目の前で、手に抱えていた果物をわざと落とし・・・これはあれですかね、ハプニング的な出会いを演出してるとか?

そんな手で来るとは。

強硬手段は控えたのですかね、一応。

あれを見たからでしょうか。

彼の思惑通り、咄嗟にしゃがんで拾ってあげようとした葵様の腰を、月夜様がガッチリホールドし、流れるように抱き上げた為、失敗に終わってますが。

「えっ、ちょっ、月夜?」

何事も無かったかのように、落ちた果物を避け、月夜様が歩き出したので、葵様が戸惑ってますね。

では、私がフォローしておきましょうかね。

「すぐに追いつきますので、お先に行ってて下さい」

そう月夜様に言って、足元に落ちている果物を拾いながら、その男だけに聞こえるよう小声で告げた。

「大漁旗を出てすぐの所から、隠れながら、ずっと付いて来ていたのを、知っていますよ。忠告です。あの方達に付き纏ったり、進路を塞ぐのは、お止め下さい。次は容赦なく捕縛し、牢屋にぶち込みますよ」

「フハッ、そんな事で、牢屋にぶち込むなんて、できないだろ?」

「できますよ?彼らには手を出すなと、国王が直接、公布されてますから。ご存じないですか?試してみますか?人生をかける事になりますので、お勧めはしませんが。・・・私からの忠告は、以上です。他に話す事はありませんので、これで、失礼しますね。後は、ご自分で拾って下さい」

手にしていた果物を男に渡し、その場を後にした。

月夜様が歩いて行かれた方へ、足早に進むと、別れ道の手前の木陰で立ち止まり、こちらへ振り返ったのが見えた。

どうやら、私が追いつくのを、待っていてくれてるようですね。

さらに足を速め、お二人の許へ。

「お待たせしました」

「ん~ん。ありがとう。大丈夫だった?怪我とかさせられてない?治療が必要だったら、遠慮せず言ってよ?」

おや?

月夜様から、あの場をすぐに立ち去った理由と、私が残った理由でも、お聴きしたのですかね?

・・・葵様は、優しいですね。

仕事としてやって当たり前と認識されているので、侍従に対し、その様な声がけをしてくれる方等、いないのですよ?

葵様の専任侍従になれて、私は幸せ者ですね。

「ありがとうございます。どこもなんともありませんよ」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄に異議を唱えたら、王子殿下を抱くことになった件

雲丹はち
BL
双子の姉の替え玉として婚約者である王子殿下と1年間付き合ってきたエリック。 念願の婚約破棄を言い渡され、ようやっと自由を謳歌できると思っていたら、実は王子が叔父に体を狙われていることを知り……!?

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【本編完結】義弟を愛でていたらみんなの様子がおかしい

ちゃちゃ
BL
幼い頃に馬車の事故で両親が亡くなったレイフォードは父の従兄弟に当たるフィールディング侯爵家に引き取られることになる。 実の子のように愛され育てられたレイフォードに弟(クロード)が出来る。 クロードが産まれたその瞬間からレイフォードは超絶ブラコンへと変貌してしまう。 「クロードは僕が守るからね!」 「うんお兄様、大好き!(はぁ〜今日もオレのお兄様は可愛い)」 ブラコン過ぎて弟の前でだけは様子がおかしくなるレイフォードと、そんなレイフォードを見守るたまに様子のおかしい周りの人たち。 知らぬは主人公のみ。 本編は21話で完結です。 その後の話や番外編を投稿します。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...