何で僕を?

大器晩成らしい

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お店を出て、目的の店へと向かって歩き出して直ぐ、

「うわっ」

海風って言うの?

下の方から吹き上がった強めの風で、フードが外れちゃって、思わず声が出ちゃった。

慌ててフードを被りなおしたんだけど、これって、不可抗力だよね?

ねぇ?

月夜?

僕の手を握る力が強くなったから、見上げたら、月夜は、周囲を見ながら眉を顰めていた。

何かあったのかな?

僕、フードを被るのにわたわたしてたから、周りを見る余裕がなくて、何か、見逃した?

手をくいって引っ張って、〝どうしたの?〟って訊いてみたんだけど、〝何でもない〟って微笑んで終わり。

何でもないって顔、していなかったのに・・・




「(付いて来てますね)」

「(そうだな)」

葵様の素顔を見られたのは、やはり、不味かったようです。

風の悪戯で、フードが外され、葵様の可愛らしい声が聞こえた瞬間、数多の視線が葵様に集中し、固定されたのが判りました。

物語に出てくる妖精のように、可憐ですからね。

凝視してしまうのは、仕方ないと言えば、仕方ないのですが、ずっとついて来るのは、いただけませんよね。

3人ほどですが、付かず離れず、距離を保ちながら、後を追ってきていて、はっきり言って、鬱陶しいです。

月夜様がいらつく原因ですね。

かといって、まだ何もしてきていないのに、こちらから手を出すわけにはいかないって事が、また何とも・・・

仮に、今、捕まえて問い詰めても、たまたま、行く場所が同じだっただけとか、いくらでも言い訳もできますからね。

嫌ですが、泳がせるしかないのが現状です。


目的は何なのでしょう?

勇者から、溺愛というか、執着というか、されている相手を、まさか掻っ攫おうとでもしているのでしょうか?

だとしたら、ある意味勇者ですね。

もしくは、ただの自殺願望者。


葵様を掴んだ瞬間、犯人は、月夜様の手によって、この世とはお別れになりますので。

生け捕りを希望されても無駄ですよ。




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