何で僕を?

大器晩成らしい

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「月夜様、先の方に、休憩に丁度いい木陰が見えるのですが、休憩されますか?」

「そうだね、葵ちゃんも、外の空気を吸いたいだろうし、いったん休憩にしようか」

「はい、では、停めさせて頂きます」

そう言うと、徐々にスピードを落とし、滑らかに馬車を停止させた。

ラピスさんって、馬車を操るの、凄く上手いよね。

窓枠に掴まっていなくても、前のめりとかにならないですんでるんだもん。

「扉を開けても宜しいでしょうか」

「頼む」

「足元にお気を付けて、お降り下さい」

月夜に抱えられて外に出ると、麦っぽい作物の畑の中で、この場所にだけ大きな木が植わっていて、いい感じに木陰を作っていた。

木の下には、丸太を輪切りにしただけの、簡単なイスが5つ、並べてある。

「恐らく、ここら辺の農家の方が、休憩する時の為に置いているのでしょう」

「ふ~ん。じゃあ、もしかしたらこの木も、わざわざ植えたのかもね、木陰を作る為に」

「たぶん、そうかも。日除けになる場所、他に無いからね。あっ、葵ちゃん、左上のほう見てごらん。ほら、小さい動物がいる」

「えっ、どこ?・・・・ほんとだ。いた。可愛い・・・」

ヤマネっぽい。

「あれは、フクロウサですね。普通、もっと木が生い茂っているような、森の中にいる筈なのですが・・・」

「迷子かな?1匹でいるなら可哀相かも。捕まえて、森を通った時にでも、放してあげられないかな?」

「う~ん、どうだろう。パンくずとかで、誘き寄せてみる?」

「うん、やってみたい」

「ついでに、ちょっと早いけど、昼食にする?」

「いいんじゃない?朝、早かったし」

「では、ご用意しますね。少々お待ち下さい」

魔法鞄の中から、テーブルとイスを取り出し、並べ、僕達の意見を聴き、おにぎりとサンドウィッチ、ミックスジュースを取り出して、並べていった。

サンドウィッチの端を千切り、掌の上にのせ、月夜に食べさせてもらいながら、じっと、来てくれるのを待った。

「こっちを見てはいるんだけどねぇ、やっぱり、警戒してるのかな?それとも、パンじゃなくて、果物や木の実の方が良かったのかな?」

確か、収納の中に葡萄があった筈、そっちを出すか。

そう思って、掌の上のパンを口の中に入れようとしたら、

キュ~

?何、今の鳴き声。

木の上を見ると、フクロウサが、木の幹を途中まで下りて来ていた。

もしかして~と思って、パンをまた口に入れる振りをしたら、

キュキュ~

って鳴いて、さらに近くに。

「クスクス、食べたかったら、早くここにおいで」

パンで良かったらしい。

笑顔を見せたのが良かったのか、パンを食べる素振りが効いたのか、とうとうテーブルの上に。

僕の顔とパンを何度も見比べているから、どうぞって頷いたら、そろ~と匂いを嗅ぎながら、手の上にのってきて、パンを両手で持ちあげると、ちょこんと座って、そのまま、掌の上で食べ始めた。

この子、危機感0だ。

食べ物に釣られて、ホイホイ人に近付いて来ちゃ危ないと思うんだよね。

自分でやっておいて何だけど。

ともあれ、フクロウサ君、ゲットって事でいいのかな?

モキュ

うっわ、モキュって、可愛すぎ!!

あんまり可愛いと、放してあげられなくなりそうなんだけど?



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