何で僕を?

大器晩成らしい

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月夜に抱きかかえられ、階下に。

うわっ

目の前に見知った面子が・・・

この人達、ここでお泊りしたのか。

この場合、宿泊費ってどうなるんだろ?

お酒飲んで、そのままつぶれたみたい。

4人共机に突っ伏して、あんな体勢で寝てたら、身体中痛くなりそう。

「(気付かれる前に出よう)」

コクッ

確かに、気付かれたら、また絡んでくるだろうからね。

〝イチャイチャしてる~〟って。

ププッ

ちょっと聞きたかったような気もするんだよね。

だから、少し残念。

ラピスさんが、お会計を済ませているから、そのままそっと宿から出て、馬車に乗り込んだ。


「今日は、村とか街に寄ったりするの?」

「いや、途中、道の端に寄って、休憩くらいはするけど、村や街には寄らないよ。寄ってたら、時間がかかるからね。夕方までには湖に着けるよう、真っ直ぐ行こうと思う」

「そっか」

街から出ると、ずっと遠くの方まで、麦みたいな作物の畑が広がっていた。

「当分、穀倉地帯が続くから、外を見てても面白くないと思うよ」

ぱっと見、うわ~って感動するけど、ず~と続いてると、月夜が言った通り、流石に厭きる。

かといって、馬車の中で何もする事がないし。

「葵ちゃん、久しぶりにしりとりしない?」

「ん、いいよ」

「りんご」

「ごま」

「まと」

「とげ」

「げた」

「タイニーコシナダマリン」

「ちょっと待った~。何それ?」

「えっ?海の浅瀬にいる、小さな魚」

「それ、地球上にいる?」

「あ~ごめん、いないかも」

「合ってるか間違ってるか判らないから、違うのに変えて。あと、地球の物限定でね」

月夜は、こっちの生活が長いから、ごっちゃになってるのかな?

僕もそうなっていくんだろうなぁ。

地球の物を忘れていって、代わりに、こっちの物を覚えていく。

地球に戻ることはもう無いのだから、それでいいのかもしれないけど、それって何か寂しくなる・・・

・・・今頃、皆、どうしてるだろ?

「葵ちゃん?」

「あっとごめん、何て言った?」

「たい」

「じゃあ、いるか」

「大丈夫?」

「何が?」

「寂しそうな顔・・・抱き締めていい?」

「・・・うん」

膝の上に乗せられ、隙間なんてないように、ピッタリとくっつき、抱き締めあった。

「大丈夫だよ。月夜がいるから。寂しくなったら、また強く抱き締めてくれるんでしょ?」

「もちろん」

「だから、僕は大丈夫」

うん、大丈夫。



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