何で僕を?

大器晩成らしい

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このままの速度で行っては、時間通りに教会には着けないだろうって話になり、馬車のスピードをアップさせ、間に合うよう、走り抜けた。


ガラガラと音を立てながら、敷地内に入り、教会の正面に急停止で横付け。

・・・

結婚式に、こんな慌ただしく、滑り込みセーフな感じで来るとは、予想してなかったっていうか、何ていうか・・・

風で崩れてしまった髪を、ラピスさんに整えてもらい、出迎えてくれた神官さんに案内されるまま付いて行き、扉の前へ。

月夜は、すぐに扉を開こうとする神官さんを制止し、僕の前に跪いた。

そして僕の手をそっと持ち上げると、掌に口付けし、

「僕に、貴方の全てを下さい」

そう言うと、今度は、手を引っ繰り返し、甲へと口付け、

「俺の全てをかけ、幸せにします。俺の愛を貴方に捧げます。結婚して下さい」

・・・プロポーズっぽい。

っていうか、なんでまた、今ここでプロポーズ?

あれ?そういえば僕、ちゃんとしたプロポーズ、されてなかったかも?

驚きの新事実。

この一月を思い起こしていたら、

「葵ちゃん?」

上目遣いのうるうるの目で、名前を呼ばれ、

「はい。宜しくお願いします」

慌てて、返事をした。

「良かった」

立ち上がると、ふんわりと抱き締められた。

「おめでとうございます。扉を開けますが、宜しいですか?」

成り行きを見守ってくれていた神官さんに、そろそろとお伺いを立てられた。

「あっ、はい、お願いします」

「では、幸多からん事をお祈り申し上げます」

そう言って、扉を開け放った。

・・・

まず、人の多さに吃驚。

どこの大聖堂?ってくらい、重厚で巨大なのに、びっしり詰まっている。

「(各国の王族に、主だった貴族達が参列してるようだね)」

緊張するから、そんな情報はいらない。

そして、二階席に楽団?がいて、扉が開いた瞬間から、厳かな曲を奏でてくれている。

そんな中、月夜にエスコートされながら、神父様の前まで歩かなきゃいけないのに、足が縺れて転んでしまいそう。

どうしよう。

「(ゆっくり歩くから、落ち着いて。なんなら、お姫様抱っこで運んでもいいよ?)」

「(自分で歩く・・・でも、転びそうになったら、助けてね?)」

「(もちろん。転ぶ前に抱き留めるから、安心して)」

「(うん。ありがと)」

転ばないよう、気を遣われながら歩き、どうにか神父様の前へ。

プログラムを打ち合わせてあったのか、和異折衷なのに、淀みなく式は進んでいった。





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