何で僕を?

大器晩成らしい

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「葵、帰ろう」

「うん、ちょっと待ってて、もう少しで、日誌、書き終わるから」

「慌てないでいいよ、待ってるから」

「帰り、コンビニでアイス買って、食べない?」

「うん、いいね。食べたい。・・・・・・よしっ、終わった。職員室に出してくるから、玄関で待ってて」

「「「いやっ、一緒に行くよ」」」


俺、涼太と祐樹と駿は、葵と、小・中・高とずっと同じ学校へと進み、一緒に過ごしている。

ちゃんと確認はしていないけど、恐らく葵に対する気持ちも、一緒なのだと思う。

常に俺らの中心には葵がいた。


「葵、それ一口頂戴」

「いいよ。そっちも食べたい」

「「俺も、葵の頂戴」」

「クスッ、いいよ」

たぶん、気付いていないんだろうな。

葵が食べてるアイスは欲しがっても、他の奴には、一口頂戴なんて言わないって事。

手を引いたり、肩を組んだりも、葵としかしていないって事。


「(涼太、あれ見ろ)」

駿が小声で言った後、顎をしゃくった。

んっ?ああ、またか。

葵の家の隣に住んでいるっていう、奴。

葵が弟のように可愛がっていて、よく葵の後を付いて回って、抱きついたりしている。

葵曰く、寂しがりやで、甘えん坊・・・

俺達に見せる顔とは全然違う。

今も、凄い形相で睨んでるからな。

葵が見ると、一瞬にして、笑顔に変わり、葵ちゃんって言いながら、走り寄ってくる。

二重人格だろってくらい、葵とそれ以外に対する態度や表情が違っていて、吃驚する。

葵に言って、不興なんて買いたくないから、言えないけど。


こいつも、葵が好きなんだろう。

そういう意味では、相手にされる訳などないから、安心している。

4歳も下の、あくまで、弟枠だからな。


そんなあいつが、いなくなったという。

修学旅行中の葵に、連絡が入った。

電話をしている最中、急に座り込んだ葵に、駆け寄って、手を伸ばした。

支えなければ倒れてしまうのでは、と思う程、身体も唇も震え、顔面が蒼白になっている。

抱き締めて、背中を摩り、冷えていく身体を、少しでもマシになるようにと必死に温めた。


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