泉の聖

１５

こうして、騙されるように泉での生活が始まった。

予想通り退屈な日々。

持ってきたスマホも案の定、電波が通じないただの荷物と化した。

それでも、無くしたり、壊したくなかったから、アイテムボックスの中へと早々に収納しておいた。

狼に言われた通りに、森の木々を間引き、薪をつくる。

鬱蒼とした森が、爽やかな森林公園かなってくらいになるのに、そう時間もかからなかった。

保護動物も滅多に現れないし、治療が済めば、次の日には出て行ってしまう。

マジ辛い。

やる事がない。

そんなのが、約一年続いた。

正確な日数は判らなくなっていたが、米が奉納されて、初めて、一年が過ぎたんだなと気付かされた。


そんなある日、いつものように目が覚めて、ハンモックから降り、蚊帳から抜け出して、顔を洗おうと泉へ向かった。

んっ？・・・・・・・・・うわああああああ！！

初め何か落ちてると思って、近付いて行って見たら、草むらから出ていたのが、人の手だったという。

ホラーだ

トラウマレベルだ

狼が、私の上げた叫び声で、やっと起き出して来た。

お前、鼻詰まっているのか？

この御倒れになっている物体が、結界内に入った時に気付かないなんて、どうした？

動物って、気配とか敏感なんじゃ？

「この中って、安全だから、つい油断しちゃうんですよね～」

確かに、よく仰向けに大の字で寝てるのを見かける。

か・わ・い・い～って思ってたけど、野性ではアウトだ。