シャム猫

ジョエルの場合６

ちょっと寝過ごしたかな・・・

遅刻するような時間では全然ないが、この時間だと食堂が混んでいるんだよね。

トレーを持って、周りにあまり人の座っていない席を探した。

トレーを置いて、食事を始めようとしたら、後ろから声をかけられた。

「Good morning.ジョエル」

「んっ？Good morning.湖箔」

「隣いいですか？」

「どうぞ」

少し、動揺してしまったが、態度や声に出ていないよな？

朝から会えて、しかも、わざわざ湖箔の方から自分の方へ来てくれるとは思っていなかった。

珍しく、一人のようだな。

ついてる。

憂鬱な気分が、あっという間に吹き飛んだが、話しているうちに、食事に誘いに行った時に、榊が寝坊していたおかげで、一人で先に来た事と、思っていた以上に、榊と湖箔は親密だという事が分かった。

クラスが違うのに何故か一緒に行動していて、どんな接点があって共にいるのか不思議だったが、そうか、隣の部屋なのか。

羨ましい。

生徒と教師では、階が違うからな・・・

ちょっと気分が下がってしまったが、せっかくの二人だけの時間だと、気持ちを切り替えた。

丁度湖箔から、合宿の話題に変えてきたから、候補地の二箇所で迷っている話をし、せっかくだから、どっちがいいかを聞いてみた。

ただ、他の奴等に聞かれると、場所を合わされそうだったから、ちょいちょいと指で招いて、顔を近づけて話した。

湖箔から、シャワーでも浴びてきたのか、甘い果物の香りがしている。

男子高校生の香りじゃないな・・・

湖箔からも、耳を手で覆って、話される度、鼓動が速く脈打つのを感じ、湖箔も同じ様に感じてくれればいいのに
と考えながら、甘い胸の苦しみに耐え続けた。