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ぎゃああああああ
グガァア
叫び声と唸り声が響き渡った。
「うおっ、なっ、何だ。叫び声?」
跳ねるように起き、ヤリを片手に、テントから顔だけ出し、辺りを見回す。
霧が出ていた。
空はやっと白み始めたばかりで、あたりはまだ、薄明るいって程度。
周りが見えずらい。
「篤志~!とっとと起きて、逃げろ!!!」
涼の声だ!
「起きてるっつうの!」
声を聞き、直ぐ様、走り出した。
獣が現れたら、さっさと屋根に逃げろと言われた通り、後ろから悲鳴や、何かを切り裂くような音、獣の唸り声等が聞こえてきても、振り返らず〝逃げろ〟って叫びながら、コテージに向かって、一直線に走り抜けた。
コテージの裏手に回り、木の陰に立てかけておいた梯子を、印の位置に移動し、屋根の上へと、素早く上った。
全力疾走でここまで来たから、かなり息が上がって、胸が苦しい。
だが、どうにか無事にここまで辿り着けた。
寝苦しくはあったが、涼に言われた通り、靴を履いたままでいて、良かった。
「ハァハァハァ・すぅ~っふ~」
どうにか呼吸を整え、目を開き、俺のテントが張られていた付近を、目を凝らして眺めると、大きな獣が、丁度、生徒に襲い掛かるところだった。
「うわっ!」
思わず目を瞑ってしまった。
その先を見る勇気はなかった。
ヤリで応戦している人達もいるようだが、どこから湧いてきたのか、かなりの数が入り込んでいるのが見えた。
ここまで、逃げてきたが、俺も戦った方が良かったのだろうかって考えが、チラッと浮かんだ。
でも、涼に、
「夢の中で、篤志は殺されていた。自分から戦おうなんて思わないで、さっさと逃げて。僕を助けにも来ないで、場所的に無理だから。篤志には、絶対に、生き残って欲しい。あんな風に殺されるところなんて、見たくない」
って、何度も強く言われて・・・
自分だって、どうなるか判らないのに、俺が助かる術を真剣に考えてくれ、自分が使う訳でもないのに、コテージのスタッフに頭を下げ、梯子を貸してくれるよう、お願いまでしてくれた。
そんな涼の厚意を、無駄にはできなかった。
「おいっ!!」
声が聞こえ、そっちの方に視線を向けると、こっちに向かって逃げてくる人が見えた。
「裏に、急げ!!」
そう言って、手で合図し、梯子を押さえに、裏へ向かった。
扉から出て来る気配はないけど、先生達もいい加減、外の騒ぎに気付いている事だろう。
救助の要請は、してくれたのだろうか?
涼の姿を、見つける事は、出来なかった。
でも、夢の通りなら、殺される事なく、逃げ回る事になる筈。
捕まらないよう、救助が行くまで、頑張って逃げ続けて欲しい。
どうか無事でいてくれ。
そう祈る事しか、俺にはできなかった。
グガァア
叫び声と唸り声が響き渡った。
「うおっ、なっ、何だ。叫び声?」
跳ねるように起き、ヤリを片手に、テントから顔だけ出し、辺りを見回す。
霧が出ていた。
空はやっと白み始めたばかりで、あたりはまだ、薄明るいって程度。
周りが見えずらい。
「篤志~!とっとと起きて、逃げろ!!!」
涼の声だ!
「起きてるっつうの!」
声を聞き、直ぐ様、走り出した。
獣が現れたら、さっさと屋根に逃げろと言われた通り、後ろから悲鳴や、何かを切り裂くような音、獣の唸り声等が聞こえてきても、振り返らず〝逃げろ〟って叫びながら、コテージに向かって、一直線に走り抜けた。
コテージの裏手に回り、木の陰に立てかけておいた梯子を、印の位置に移動し、屋根の上へと、素早く上った。
全力疾走でここまで来たから、かなり息が上がって、胸が苦しい。
だが、どうにか無事にここまで辿り着けた。
寝苦しくはあったが、涼に言われた通り、靴を履いたままでいて、良かった。
「ハァハァハァ・すぅ~っふ~」
どうにか呼吸を整え、目を開き、俺のテントが張られていた付近を、目を凝らして眺めると、大きな獣が、丁度、生徒に襲い掛かるところだった。
「うわっ!」
思わず目を瞑ってしまった。
その先を見る勇気はなかった。
ヤリで応戦している人達もいるようだが、どこから湧いてきたのか、かなりの数が入り込んでいるのが見えた。
ここまで、逃げてきたが、俺も戦った方が良かったのだろうかって考えが、チラッと浮かんだ。
でも、涼に、
「夢の中で、篤志は殺されていた。自分から戦おうなんて思わないで、さっさと逃げて。僕を助けにも来ないで、場所的に無理だから。篤志には、絶対に、生き残って欲しい。あんな風に殺されるところなんて、見たくない」
って、何度も強く言われて・・・
自分だって、どうなるか判らないのに、俺が助かる術を真剣に考えてくれ、自分が使う訳でもないのに、コテージのスタッフに頭を下げ、梯子を貸してくれるよう、お願いまでしてくれた。
そんな涼の厚意を、無駄にはできなかった。
「おいっ!!」
声が聞こえ、そっちの方に視線を向けると、こっちに向かって逃げてくる人が見えた。
「裏に、急げ!!」
そう言って、手で合図し、梯子を押さえに、裏へ向かった。
扉から出て来る気配はないけど、先生達もいい加減、外の騒ぎに気付いている事だろう。
救助の要請は、してくれたのだろうか?
涼の姿を、見つける事は、出来なかった。
でも、夢の通りなら、殺される事なく、逃げ回る事になる筈。
捕まらないよう、救助が行くまで、頑張って逃げ続けて欲しい。
どうか無事でいてくれ。
そう祈る事しか、俺にはできなかった。
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