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「やはりおかしい。お前はどう思う?」

ダークウルフの大群が山に入ったと聞き、周囲を警戒しながらここまで来たが、動物の気配が極端に薄い。

問題の、ダークウルフも見当たらない。

「そうですね。静か過ぎますね」

「総隊長、失礼します。見張りからの報告ですが、斥候が戻ってきたようです」

「連れて来い」

「はい」

森の異変に、軍全体で移動するのは危険と判断。

その場にテントを張らせ、斥候を出していた。

6人ずつの小隊を、3方向へ向け。

暫くして、戻ってきた順に、それぞれの小隊長が、報告に来た。

「失礼します。ただ今戻りました。」

テーブル上の地図を指で辿りながら、説明を受けるが、先に帰ってきた2人からは、動物が多く流れてきているという点以外、特に有益な情報は、得られなかった。

だが、最後に入ってきた小隊長の報告は奇妙なものだった。


「鳥や動物はいたか?」

「いえ、通常、山奥の方が、そういうのは多くいる筈なんですが、先に行けば行くほど、見なくなり、不気味なほど静かでしたね・・・そういえば、風の音すらなかったような」


「ダークウルフの足跡は見つけたか?」

「はい。ですが、見失いました。くっきりと線を引いたような、不自然な霧が立ち込めている場所の前までは、ダークウルフと思われる足跡が、多数付いていたのですが、その場所を境に、変な途切れ方をしています。違和感のある霧でしたので、中には入らず、外から探りました。それで、隊員の一人が、ふざけて、こぶし大の石を足で突いて、少しずつその霧の中へ押し込んでみたのですが、驚く事に、霧の中に入った部分から、消えてなくなりました」

「見えなくなった。ではなく、消えたのか?」

「はい、その後、いろいろ投げ込んでみたのですが、落下したであろう地点に、何の痕も付きませんでしたし、地面に衝突する音すらありません。霧の中に入った瞬間に消えているという事だと思われます。」

「ダークウルフ達は、その霧の中に入って行ったって事か」

「何故ですかね?先頭が消えていけば、普通入るのを躊躇いませんかね」

「・・・もっと詳しく調べてみないと判らないが、消える=死ではないのかもしれない。奴等は、仲間内の絆だけは強いからな。もし、上半身が見えなくなって行っても、前進しているのであれば、死んではいないだろ?見えないだけで無事なんじゃないのか?だとしたら、見捨てる事なく、付いて行く可能性の方が高い」

「そうかもしれませんが、死なないか、試してみる気にはなりませんね」

「・・・死刑囚でも連れて来て、やらせるか?」

「今からですか?すぐには無理じゃないですか?手続きが必要ですし」

かと言って、何もしないで、このまま居るのもなぁ・・・何かしらの目的をもって、敢えて入って行ったって線もあるからな。

見極めず、このまま帰る訳にもいかないだろう。

「とりあえず、現状を総団長へ伝え、判断を仰ごう。すぐに、報告書を書く。伝書用の鳥を用意しておいてくれ」





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