天魂〜ふたつの魂〜

𦚰阪 リナ

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第一章 日出る者と闇落とす者

第七話 仙連家の当主

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金湖山で共に戦った鳳珠に、当主会議が開かれる仙連家せんれんけの庭園で偶然会った。
「…霊力は戻ったか?」
春月は金湖山で互いの魂が共同する術、共連きょうれん術を使すぎて、自分の霊力を半分も失ってしまっている。失った霊力はまだ戻っていなく、このままでは仙家大会に出場することができない。
「完全にではないけれど、回復に向かいつつある。心配するな」
鳳珠に心配してほしくないので、嘘をつく。
「嘘を仰らないでください、師匠。昨夜だって、苦しい思いをなさったではありませんか…」
「苦しい思いだって?」
俊が鳳珠に昨夜のことを言ってしまい、春月は慌てて誤魔化す。
「霊力が…急に戻ってくるものだから体がついていかなくて…」
「ならいい」
これはいずれ嘘だとわかってしまう。けれど今は、自分の霊力のことを鳳珠に心配してほしくない。
「今年の仙家大会、出れなくて残念だったな」
春月が今年の仙家大会に出場しないという噂は、瞬く間に他の仙家に広まっていった。
「…そうだな」
本当は出場することが決まっているが、今の時点では友にも言うことができないのだ。言えないことに、少々腹が立つ。
「さっきの間はなんだ?」
「いや、何も」
流石鳳珠だ。どんなことも聞き逃さない。春月は鳳珠にじっと見つめられ、冷や汗が出てきた。
「鳳珠殿、春月殿ー!」
仙連家の家の者が、すごい勢いで春月たちの元に走ってくる。
「そんなに急がなくともよい」
「端霞様…」
春月たちの元に来た侍従はとある女人を見ると、その女人に道を開け、慌てて跪いた。
「初めましてかな?鳳珠殿、春月殿」
金色の髪に、綺麗な青色の目。衣は水仙すいせんが咲き誇る上襦じょうじゅに、深い青色のくん牡丹ぼたんが刺繍された被帛ひはくを身につけ、金色の美しい髪には金の歩揺ほようと被帛と同じ牡丹が飾らせている。花鈿かでんはすの形をしており、唇と頬は桃色で塗られていた。いかにも良家の令嬢らしきこの者は、仙連家当主である、仙連 端霞せんれん たんかだ。
「名前を伺ってもよろしいですか?」
春月が少しきつい口調で、その女人の名を聞いた。
「そんなことで警戒していたら、この先生きていけないぞ?」
「今白家の者は命を狙われている。どんなときでも警戒して当然です。それでもあなたは警戒しないでよい、と仰った。このことを私は信じても良いのでしょうか」
敵に回すようないい方かもしれないが、今の春月からすると仕方ない。こんなところで命を落とすわけにはいかないから、わざと敵に回すようないい方をした。だが、今回の場合は逆効果だったかもしれない。なぜなら、もっと面倒なことになろうといているからだ。
「仙連家を敵に回しても良いのかな?」
端霞に見抜かれてしまった。見抜かれてしまったことに気づき、春月はすぐさまこの場を離れようとする。
「滅相もございません。仙連家を敵に回す度胸など、一介の仙士にはありませぬゆえ…」
春月が言った通り、一介の仙士が仙連家を敵に回す度胸などない。
「なら良い。誤解してすまなかったな」
「いえ、非はこちらにありますので、端霞様がお気になされることではございません」
それに対し、端霞は微笑した。
「そうだな。では部屋の中に入ろう。皆様、そなたたちを待っておられる」
「畏まりました」
春月と鳳珠は、端霞に深く頭を下げ、当主会議が行われているという部屋に入った。



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