人外さんと恋をする〜狼さんは怖くない〜

４

１７ ★

　絶頂を迎え、ビクビクと身体を震わせているとクロードの指が引き抜かれた。その僅かな刺激にさえ反応してしまうと、ギュッと抱きつかれ頬に彼の鼻が擦り付けられる。

「大丈夫か？」

　心地良い気怠さで全身から力が抜けていく。喘ぐばかりで言葉が出ないメイベルは、コクコクと首を縦に振るしかなかった。

　達したことで敏感になった身体は、少しの衣擦れでさえも快感を得てしまい、クロードの手でシャツを脱がされている最中も、勝手にビクビクと震えてしまった。

「寒いか？」
「ぃ、え……」

　違う、と首を横に振ると、フワフワの毛が頰をくすぐる。自ら頬を擦り寄せて感触を楽しみながら、彼の匂いを吸い込んだ。

「クロードさん、いい匂い」
「メイベル……」
「クロードさんも、私の匂い嗅いで……？　いっぱい触ってください」

　大きな手のひらを自分の胸に導く。申し訳程度にしかない胸だが、クロードの手のひらで優しく押しつぶされると甘い痺れが走る。クロードの熱い舌がうなじをなぞり、メイベルは喘いだ。

「ふぁ……っ」
「メイベル……ここに、痕をつけてもいいか？」

　うなじに獣人特有の牙が当てがわれる。カリっと甘噛みされて、ゾクリと快感が走る。

「あ、痕……？」
「マーキングは知ってるか？」
「えっと、番つがいになる相手に付けるって……」

　マーキングという言葉を聞いたのは、白猫亭で働き始めてすぐの頃だったか。調理担当のオーク、ロアナの二の腕にある花のようなアザ。初めて見るそれを不思議に思っていると、照れ臭そうに番の印なのだと教えてもらったのだ。

　番つがいとは亜人間におけるいわゆる夫婦の呼び名だというが、人族の夫婦にはない深い結びつきがあるのだという。その代表的なものがマーキングで、心を決めた相手に印を残すことで将来を誓う。印の場所は種族によって異なるそうだが、方法としては至ってシンプル。噛んで痕を残す。その歯形が花のようなアザとなり、一生消えることはない。

「私に、マーキングするんですか……？」
「嫌か？」
「……私と番つがいに？」
「そうなりたいと思っている」

　淡々と答えるクロードの声に、僅かに呻り声が混じっている。首を巡らせると、青い瞳と目が合った。

「クロードさん……」
「メイベルと番つがいになりたい……好きなんだ」

　鼻先が触れ合う。ただそれだけが嬉しくて、メイベルは誘うように唇を薄く開いた。スルリと入ってきた長い舌が口内をなぞっていく。一度離れて顔を見合わせ、メイベルは微笑んだ。

「嬉しいです。私も、クロードさんが好き」

　ようやく告げられた想いは掠れた声となって空気に溶けていく。だが、三角の耳にはしっかりと届いたらしく、クロードの瞳が細められた。