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「メイベル、結婚を申し込みに来た」
「…………は?」
叫ぶように言ったルシアスの声が耳の奥で木霊している。だが、全く言葉の意味が理解できない。
「俺と結婚してくれっ」
「正気?」
「当たり前だろっ」
「いやいや、あり得ないでしょ」
一歩踏み出してくるルシアスに、メイベルは文字通り頭を抱える。
「何の嫌がらせよ」
「嫌がらせのつもりなんかない。俺は本気で……」
「だったら尚更タチが悪い。アンタは頼りないし、こんな奴に任せられるのか心配なとこはあるけど、一応、いずれはこの村を担ってく存在だわ。結婚相手も然るべき人を選ぶべきよ」
「……然るべきって、何だよ」
「貴族のご令嬢と結婚すればいいじゃない。こんな平民なんかと……」
「俺は令嬢との結婚なんか望んでない。身分のことなら心配いらない。母も平民だった、問題ない」
「私は親もいない、孤児よ」
言葉にしてはじめて、自分がどれだけこの言葉に傷ついていたかに気付かされた。気まずくなって目を伏せる。
「……昔、そのことでお前に散々酷いこと言った。謝って済むことじゃないと思ってるけど、全部お前の気を引きたくて言ったことだ。本心じゃない」
今、ルシアスはどんな表情をしているのだろう。トーンを落とした彼の声がやけに耳に刺さる。
「俺はガキだったんだ。お前に振り向いて欲しくて傷つけて。最低だ。でも、信じてくれ。俺はずっと好きだったんだよ、メイベル」
「…………は?」
叫ぶように言ったルシアスの声が耳の奥で木霊している。だが、全く言葉の意味が理解できない。
「俺と結婚してくれっ」
「正気?」
「当たり前だろっ」
「いやいや、あり得ないでしょ」
一歩踏み出してくるルシアスに、メイベルは文字通り頭を抱える。
「何の嫌がらせよ」
「嫌がらせのつもりなんかない。俺は本気で……」
「だったら尚更タチが悪い。アンタは頼りないし、こんな奴に任せられるのか心配なとこはあるけど、一応、いずれはこの村を担ってく存在だわ。結婚相手も然るべき人を選ぶべきよ」
「……然るべきって、何だよ」
「貴族のご令嬢と結婚すればいいじゃない。こんな平民なんかと……」
「俺は令嬢との結婚なんか望んでない。身分のことなら心配いらない。母も平民だった、問題ない」
「私は親もいない、孤児よ」
言葉にしてはじめて、自分がどれだけこの言葉に傷ついていたかに気付かされた。気まずくなって目を伏せる。
「……昔、そのことでお前に散々酷いこと言った。謝って済むことじゃないと思ってるけど、全部お前の気を引きたくて言ったことだ。本心じゃない」
今、ルシアスはどんな表情をしているのだろう。トーンを落とした彼の声がやけに耳に刺さる。
「俺はガキだったんだ。お前に振り向いて欲しくて傷つけて。最低だ。でも、信じてくれ。俺はずっと好きだったんだよ、メイベル」
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