人外さんと恋をする〜狼さんは怖くない〜

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　困っている人を見過ごせないのは、亡きシスターの教えだから曲げることはできない。だが、クロードが心配してくれているのは素直に嬉しかった。彼とこんな風に仲良くなれたのだ。村に住む亜人たちとももっともっと仲良くなりたい。

　国境沿いにあるという土地柄、ジョセ村には多くの旅人が行き来する。その半数が亜人種となったのは、最近のこと。それに応じて、村に移住してくる亜人も徐々に増えつつある。大半の村人が亜人との生活に慣れつつあるのだが、領主の息子・ルシアスのようにまだ亜人に対して偏見を持つ者も少なくのも事実だ。

　そんな中、獣人であるマリリンが経営する『白猫亭』は今日も繁盛していた。一階の食事スペースには客が犇き、笑い声が満ちている。ここにいると、亜人も人族も垣根なく共存できるのではと希望が持てる。

「いらっしゃいませ！」
「おー、今日も繁盛してるな」

　ドアベルの音に条件反射で振り返ったメイベルは、見知った顔にあっと声を上げる。

「団長さん、みなさんも。いらっしゃいませ」
「元気そうだな、メイベル嬢」

　先頭切って入店した髭をたっぷり蓄えた自警団の団長は、ニカリと笑って手を上げた。その後ろから入って来た紺色の揃いの制服に身を包んだ自警団の面々も、メイベルと目が合うと思い思いの挨拶を返してくれる。

「四人なんだが」
「はい、あちらのお席へどうぞ」

　ちょうど片付けたばかりだった窓際の席へ案内する。一度裏に向かい、メニュー表と水を取って戻ってきたメイベルは、初めて見る団員がいることに気付いた。

「ああ、彼女は……」
「はじめまして、オリーブです。あなたがメイベルさんね」

　団長の言葉を遮り、立ち上がった彼女は見上げる程に高い身長をしている。長い鼻先に赤茶色のフサフサの毛に覆われた身体。三角の耳は先っぽが少し垂れているのは元々なのだろうか。