15 / 61
2
1
しおりを挟む
パン屋での仕事を終え、その足で村の中心地から少し離れた歓楽街に向かう。奥に配置されている宿屋では軽食は出るものの、酒は出ない。そのため歓楽街の入り口付近には飲み屋が並んでいるのだが、今は昼を少し過ぎた時分のためまだ開店している飲み屋はない。
メイベルが働く『白猫亭』は宿屋と酒場が一緒になっている。村ではまだ珍しい獣人が経営する店で、従業員のほとんどが亜人だが利用においての垣根はない。昼からでも酒が飲めるとあって、今では村一番の売り上げを誇っているほどだ。
「おはようございます」
「おはよう、メイベル」
勝手口から入ると、調理場にいた大柄な女性が振り返った。ロアナはオークという亜人で、おっとりとした性格だ。だが、調理のスピードは以上に早く、店の注文は彼女一人でさばいている猛者だ。
「ああ、メイベル。来てくれたのね~」
「おはようございます、店長」
「悪いわね、助かるわ~」
「いえ、働くの好きですから」
ガバリと抱きついてきたのは、胸元の大きく開いたキラキラのドレスを身に纏ったマダム。『白猫亭』の店主、アマリリスは大きくため息を吐く。綺麗なオッドアイが陰って見えるのは、彼女の疲れの現れだろう。
「本当助かるわ、ネリスに続いてコリンまで休みになっちゃって人手が足りなくて」
「発情期でしたっけ?」
「そうなの。仕方ないことだけど、日にちが被っちゃうと困っちゃうわね」
発情期は亜人だけにみられる症状だ。種別によって症状の出方は様々らしく、個体差もある。ネリスはアマリリスと同じ猫の獣人で、メイベルがここで働きだした頃からの付き合いになる女の子だ。
メイベルが働く『白猫亭』は宿屋と酒場が一緒になっている。村ではまだ珍しい獣人が経営する店で、従業員のほとんどが亜人だが利用においての垣根はない。昼からでも酒が飲めるとあって、今では村一番の売り上げを誇っているほどだ。
「おはようございます」
「おはよう、メイベル」
勝手口から入ると、調理場にいた大柄な女性が振り返った。ロアナはオークという亜人で、おっとりとした性格だ。だが、調理のスピードは以上に早く、店の注文は彼女一人でさばいている猛者だ。
「ああ、メイベル。来てくれたのね~」
「おはようございます、店長」
「悪いわね、助かるわ~」
「いえ、働くの好きですから」
ガバリと抱きついてきたのは、胸元の大きく開いたキラキラのドレスを身に纏ったマダム。『白猫亭』の店主、アマリリスは大きくため息を吐く。綺麗なオッドアイが陰って見えるのは、彼女の疲れの現れだろう。
「本当助かるわ、ネリスに続いてコリンまで休みになっちゃって人手が足りなくて」
「発情期でしたっけ?」
「そうなの。仕方ないことだけど、日にちが被っちゃうと困っちゃうわね」
発情期は亜人だけにみられる症状だ。種別によって症状の出方は様々らしく、個体差もある。ネリスはアマリリスと同じ猫の獣人で、メイベルがここで働きだした頃からの付き合いになる女の子だ。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」
まほりろ
恋愛
聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。
だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗
り換えた。
「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」
聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。
そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。
「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。
※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。
※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。
※二章はアルファポリス先行投稿です!
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます!
※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17
※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる