人外さんと恋をする〜狼さんは怖くない〜

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５

「鐘を鳴らしたい？」
「……うん」

　メイベルの言葉に、やけに素直な返事が返ってくる。いくら口が悪くなったとはいえ、まだまだ十にも満たない子供だ。メイベルは手を伸ばし、二人の頭をワシワシと撫で回した。

「なんだよっ！」
「ほら、もう時間ないわよ。さっさと着替えて行きなさい。鐘を鳴らす時は心を落ち着けてね」

　パァッと顔を綻ばせ、二人は一目散に駆け出して行く。

「ごめんね、クラリア」

　廊下に出ると身支度を終えた少女たちの姿がある。その先頭にいたクラリアには、男子部屋でのやり取りが聞こえていただろう。彼らを動かすダシに使ってしまったことを謝ると、微笑んで首を横に振った。

「ありがとう」

クラリアはビルと同じ七歳。喉に障害があり、喋ることはできないがとても聡明な子で、一週間後には里親に引き取られることが決まっていた。

「じゃあ、みんな、お祈りをしてきてね。それからご飯よ」
「はーい」

　元気な返事と共に、子供たちは互いに手を繋いで教会の方へと向かう。こうした時に少女たちが率先して、下の子の面倒を見てくれるのはメイベルが子供だったときから変わらない光景だ。まだ男子二人はバタバタしているけれど、鐘を鳴らす時間には間に合うだろう。彼女たちに任せておけば心配はない、とキッチンに向かったメイベルは朝ご飯の支度を始める。

　といっても大したものはできない。前日に勤め先であるパン屋でもらってきた売れ残りのパンを切り、昨夜作っておいた野菜くずのスープに火を入れる。

「あ、今日はこれもあった」

　もう一つの勤め先である宿屋は、酒場も兼ねているのだが、そこで出る賄いをメイベルは少し多目に取り分けてもらっている。甘辛いタレでトロトロに煮込まれた肉は、匂いだけでも美味しそうだ。

「ん～、でもこれはお昼ご飯が良いかな？」

　朝ご飯にしては少し重いか？　と考え直し、切ったお肉を容器に移して戸棚にしまう。裏の畑にはレタスが実っていたはずだ。それと一緒にパンに挟めばいい。メイベルが晩ご飯はどうしようかと思った時だった。

　思考を遮るようにドアがノックされた。