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「怒るとシワが増えるんだぜ……」
「誰のせいだと思ってるのよ。いいから早く起きなさいって!」
「やだー」
「……あっそう。じゃあ、今日の鐘当番は放棄するわけね」

 布団で出来た二つの山が、メイベルの言葉にピクリと反応する。メイベルは引き剥がそうとしていた手を離し、大仰にため息をついた。

「仕方ないわね。クラリアにお願いして……」
「汚ねぇぞ!?」
「女子は昨日もしたじゃん!」

 ガバリと布団が捲れ上がり、二人の少年はメイベルに真っ赤な顔をして怒鳴る。だが、メイベルも負けてはいない。

「鐘を鳴らすのは時間厳守だって言ったでしょ? ねぼすけを待ってはいられないの。それは鐘当番をやるって決まった時に、最初に説明したわよね?」
「うっ……」
「あなたたちが時間通りに起きられなかったら、別の子がやる。そういう約束だったはずだけど?」
「ううっ……」

 教会の鐘を鳴らすのは大事な仕事だ。それを子供たちに任せるよう決めたのは、今は亡きシスター・モリーだった。優しく温厚なシスターだったが、彼女は厳し人でもあった。

 鐘当番は決まっていたが、シスターは子供たちを叩き起こしたりしない。自主的に起き出してくるのを待ち、当番の子が起きてこられない場合は起きている翌日以降の当番の子に役割を任せる。そして寝坊してしまった子は、一番後ろに回されてまた一から順番待ちすることになるのだ。

 誰だって朝起きるのは辛い。けれど、当番を飛ばされる悲しさがよく分かっている子供たちは、互いに起こし合うようになる。きっとシスターは助け合うことを教えるため、そうしていたのだろう。メイベルがいた頃よりも子供たちの人数は減っている。なので今は女子組と男子組に分かれ、一日交代で当番を勤めているのだ。
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