6 / 61
1
4
しおりを挟む
「怒るとシワが増えるんだぜ……」
「誰のせいだと思ってるのよ。いいから早く起きなさいって!」
「やだー」
「……あっそう。じゃあ、今日の鐘当番は放棄するわけね」
布団で出来た二つの山が、メイベルの言葉にピクリと反応する。メイベルは引き剥がそうとしていた手を離し、大仰にため息をついた。
「仕方ないわね。クラリアにお願いして……」
「汚ねぇぞ!?」
「女子は昨日もしたじゃん!」
ガバリと布団が捲れ上がり、二人の少年はメイベルに真っ赤な顔をして怒鳴る。だが、メイベルも負けてはいない。
「鐘を鳴らすのは時間厳守だって言ったでしょ? ねぼすけを待ってはいられないの。それは鐘当番をやるって決まった時に、最初に説明したわよね?」
「うっ……」
「あなたたちが時間通りに起きられなかったら、別の子がやる。そういう約束だったはずだけど?」
「ううっ……」
教会の鐘を鳴らすのは大事な仕事だ。それを子供たちに任せるよう決めたのは、今は亡きシスター・モリーだった。優しく温厚なシスターだったが、彼女は厳し人でもあった。
鐘当番は決まっていたが、シスターは子供たちを叩き起こしたりしない。自主的に起き出してくるのを待ち、当番の子が起きてこられない場合は起きている翌日以降の当番の子に役割を任せる。そして寝坊してしまった子は、一番後ろに回されてまた一から順番待ちすることになるのだ。
誰だって朝起きるのは辛い。けれど、当番を飛ばされる悲しさがよく分かっている子供たちは、互いに起こし合うようになる。きっとシスターは助け合うことを教えるため、そうしていたのだろう。メイベルがいた頃よりも子供たちの人数は減っている。なので今は女子組と男子組に分かれ、一日交代で当番を勤めているのだ。
「誰のせいだと思ってるのよ。いいから早く起きなさいって!」
「やだー」
「……あっそう。じゃあ、今日の鐘当番は放棄するわけね」
布団で出来た二つの山が、メイベルの言葉にピクリと反応する。メイベルは引き剥がそうとしていた手を離し、大仰にため息をついた。
「仕方ないわね。クラリアにお願いして……」
「汚ねぇぞ!?」
「女子は昨日もしたじゃん!」
ガバリと布団が捲れ上がり、二人の少年はメイベルに真っ赤な顔をして怒鳴る。だが、メイベルも負けてはいない。
「鐘を鳴らすのは時間厳守だって言ったでしょ? ねぼすけを待ってはいられないの。それは鐘当番をやるって決まった時に、最初に説明したわよね?」
「うっ……」
「あなたたちが時間通りに起きられなかったら、別の子がやる。そういう約束だったはずだけど?」
「ううっ……」
教会の鐘を鳴らすのは大事な仕事だ。それを子供たちに任せるよう決めたのは、今は亡きシスター・モリーだった。優しく温厚なシスターだったが、彼女は厳し人でもあった。
鐘当番は決まっていたが、シスターは子供たちを叩き起こしたりしない。自主的に起き出してくるのを待ち、当番の子が起きてこられない場合は起きている翌日以降の当番の子に役割を任せる。そして寝坊してしまった子は、一番後ろに回されてまた一から順番待ちすることになるのだ。
誰だって朝起きるのは辛い。けれど、当番を飛ばされる悲しさがよく分かっている子供たちは、互いに起こし合うようになる。きっとシスターは助け合うことを教えるため、そうしていたのだろう。メイベルがいた頃よりも子供たちの人数は減っている。なので今は女子組と男子組に分かれ、一日交代で当番を勤めているのだ。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる