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「清河さん、あの……」
「ごめんね、日誌出しに行ってそのまま帰るつもりだったんだけど、英語の教科書忘れてて」
「ああ……」
奇しくも茉歩の席は冬馬の隣。茉歩は机の中を弄りながら、笑ってみせる。
「明日、私当たるからさ。もう、嫌になる」
目的のものを見つけ出し、茉歩はカバンに教科書を終うと立ち上がって背伸びをした。そして、戸惑っている様子の冬馬を見る。
「こんなこと言うのも変だけどさ、言いたいことは溜めない方がいいよ。ストレス溜まってハゲちゃうよ?」
「え?」
視線を彷徨わせていた冬馬と目が合うと、茉歩はニカっと笑う。そして、徐に一つに結んでいた髪を解き、ある一箇所の地肌を露わにして見せる。
「ほら」
「……えぇ⁈ ちょ……それ、大丈夫なの⁈」
いわゆる円形脱毛症。それに気付いたのはもう半年ほど前のことだ。一応、病院にはかかったけど、ストレスが原因とのことで自然治癒が望めるため、ほぼ放置している感じだ。
「ちょっと生えてきてるんだけどね」
「……大丈夫なの?」
「うん、気にするのが一番よくないからね。でも、からかわれるのは嫌だから隠してる。誰にも内緒ね?」
偶然知ってしまった彼の秘密。それを黙っているよ、という代わりに茉歩が考えたのが秘密を共有することだった。彼とは違って、茉歩の秘密は一過性のものだけれど。
悪戯っぽく笑ってみせた茉歩に、ポカンとしていた冬馬だったが、次の瞬間、声を上げて笑ってくれたのだ。
「ごめんね、日誌出しに行ってそのまま帰るつもりだったんだけど、英語の教科書忘れてて」
「ああ……」
奇しくも茉歩の席は冬馬の隣。茉歩は机の中を弄りながら、笑ってみせる。
「明日、私当たるからさ。もう、嫌になる」
目的のものを見つけ出し、茉歩はカバンに教科書を終うと立ち上がって背伸びをした。そして、戸惑っている様子の冬馬を見る。
「こんなこと言うのも変だけどさ、言いたいことは溜めない方がいいよ。ストレス溜まってハゲちゃうよ?」
「え?」
視線を彷徨わせていた冬馬と目が合うと、茉歩はニカっと笑う。そして、徐に一つに結んでいた髪を解き、ある一箇所の地肌を露わにして見せる。
「ほら」
「……えぇ⁈ ちょ……それ、大丈夫なの⁈」
いわゆる円形脱毛症。それに気付いたのはもう半年ほど前のことだ。一応、病院にはかかったけど、ストレスが原因とのことで自然治癒が望めるため、ほぼ放置している感じだ。
「ちょっと生えてきてるんだけどね」
「……大丈夫なの?」
「うん、気にするのが一番よくないからね。でも、からかわれるのは嫌だから隠してる。誰にも内緒ね?」
偶然知ってしまった彼の秘密。それを黙っているよ、という代わりに茉歩が考えたのが秘密を共有することだった。彼とは違って、茉歩の秘密は一過性のものだけれど。
悪戯っぽく笑ってみせた茉歩に、ポカンとしていた冬馬だったが、次の瞬間、声を上げて笑ってくれたのだ。
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