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ピアノやバイオリンの音色が響く店内は、それなりにお客がいるというのに静かだ。それは、客同士がこの静かな空間を楽しんでいるからなのだろう。会話をする声も最低限。間接照明だけの薄暗さが、上品さを醸し出しているようだった。
バーと聞くと、茉歩はカウンター席くらいしかないと思っていたのだが、ここはベンチシートも置いてある。
「いらっしゃいませ」
白のブラウスに黒のベスト、パンツルックの制服は動きやすい。茉歩はベンチに腰掛けた客の前に片膝をつくと、テーブルにおしぼりを置く。そして、注文を受けるとカウンターでコップを磨いていた男にオーダーを通した。
「ごめんねぇ、茉歩」
手際よくカクテルを作りながら彼、菱川冬馬は困り眉を作る。茉歩と同じ制服に身を包んだ彼は、鼻筋がスッと通っていて瞳も大きい。どちらかというと可愛い系のイケメンだ。
こんな容姿だから、女の子にモテるのだが彼の方はまるで興味がない。というのも、彼が好きなのは男性だからだ。
「ちょうど仕事探してたし、声かけてくれて助かった」
「本当? 良かったわ」
ニッコリと微笑む冬馬の笑顔に、コロッと落ちる女の子は多いだろう。だが、柔らかなこの話し方を聞くと気付くのだ。彼がいわゆる『オネェ』だということに。
バーと聞くと、茉歩はカウンター席くらいしかないと思っていたのだが、ここはベンチシートも置いてある。
「いらっしゃいませ」
白のブラウスに黒のベスト、パンツルックの制服は動きやすい。茉歩はベンチに腰掛けた客の前に片膝をつくと、テーブルにおしぼりを置く。そして、注文を受けるとカウンターでコップを磨いていた男にオーダーを通した。
「ごめんねぇ、茉歩」
手際よくカクテルを作りながら彼、菱川冬馬は困り眉を作る。茉歩と同じ制服に身を包んだ彼は、鼻筋がスッと通っていて瞳も大きい。どちらかというと可愛い系のイケメンだ。
こんな容姿だから、女の子にモテるのだが彼の方はまるで興味がない。というのも、彼が好きなのは男性だからだ。
「ちょうど仕事探してたし、声かけてくれて助かった」
「本当? 良かったわ」
ニッコリと微笑む冬馬の笑顔に、コロッと落ちる女の子は多いだろう。だが、柔らかなこの話し方を聞くと気付くのだ。彼がいわゆる『オネェ』だということに。
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