年下クンと始める初恋

鈴屋埜猫

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「結婚って……まずはお付き合いからじゃないの……?」
「早い方が良くない? もうお互い大人だし」

 葉一に手を引かれるまま車へと戻りながら、茉歩が尋ねると彼は笑いながら事もなげに言う。確かにお互いいい大人だ。茉歩だって年齢を考えたらいろいろ早い方がいいに決まっている。だから母だって見合いなんて突拍子もないことを考えたのだろう。
 茉歩だって、結婚したくないわけではない。相手さえいれば、と思っていたのだ。それも相手は勝手知ったる幼馴染。多少のブランクはあるとはいえ、互いによく知った仲だ。彼の気質を知っているからこそ、相手として申し分ない。だが、だからこそ自分なんかでいいのかと思ってしまう。

「でも、その、親御さんとか……」
「いや、お互いに知ってるだろ。それにお見合いの席で結婚式の話までしてたし」
「そうだった……」

 あの日の母親たちのはしゃぎっぷりは半端ではなかった。本人たちそっちのけで、会場はどこがいいとかドレスか着物かと、具体的な話までし出したのでさすがに止めたのだ。きっとあの二人は喜ぶだろう。父親たちは分からないが。
 車に辿り着くと、助手席のドアを当たり前のように葉一が開けてくれる。スムーズなエスコートに、女の子の扱いに慣れていることが見て取れて若干複雑な気分だ。

「まぁ、急に結婚って言われても戸惑うよな。茉歩姉の気持ちが追いつくまで、少しなら待つよ」

 少し、を強調されて思わず吹き出した。

「少しなの……でも、葉ちゃんはいいの?」
「俺? 俺は結婚するなら茉歩姉とって決めてたから」

 至極当然のように言われて、茉歩はポカンとする。決めてたって、いつからだ。
 茉歩が呆けていると、運転席に乗り込んだ葉一が彼女の頬に軽く口付けてきた。お陰でびっくりして飛び上がった茉歩は、腕をドアにぶつけてしまった。

「ま、俺の片想い歴、相当だから待つのは慣れてるよ。でも、もう逃してあげられないから覚悟しててね」

 微笑む葉一の嬉しそうな表情に、茉歩は不覚にもときめいてしまう。こんなの逃れるわけがない。

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