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見合い場所のホテルには予定より早く着いた。自分がこんなにも彼女に会うのを心待ちにしていたのか、と笑ってしまう。しばらくラウンジで時間を潰そうか、と思っていると目の端に映った鮮やかな朱色。何気なく視線で追って、それが茉歩だとすぐに気が付いた。
ヒラリと落ちたハンカチに気付くことなく、重そうな荷物を運ぶ彼女を追いかける。すると、不審がられて若干睨まれた。男性に対して警戒心を剥き出しにしてしまうところは変わってないらしい。まぁ、ちょっと抜けているところもあるので、それくらいがちょうどいいと思うが。
だが、相手が葉一だと分かるや否や、彼女の表情は一変した。昔と変わらぬ笑顔。いや、昔よりもっと綺麗になった眩しいくらいの笑顔だった。その顔を見て、葉一は彼女への恋心がまざまざと蘇る。
ところが、彼女は葉一を見ても懐かしそうにするだけだった。見合い相手が葉一だと知らないだけかと思ったが、どうやら見合いのこと自体知らないらしい。そうなると、彼女に現在、彼氏がいないのかが気になった。もしいると言われたら、彼女に恋い焦がれるこの気持ちはどうしたらいいのだろう。
「茉歩姉は、彼氏いるの?」
とにかく聞いてみよう、と覚悟を決めて尋ねてみた。いると言われたらそれまでだ。
「ん? 今はいないけど……」
「今は、か」
いないことには安堵したが、今度は別の問題が浮上する。今は、ということは以前はいたのだ。そう思うと、なんだか悔しくなってくる。
ヒラリと落ちたハンカチに気付くことなく、重そうな荷物を運ぶ彼女を追いかける。すると、不審がられて若干睨まれた。男性に対して警戒心を剥き出しにしてしまうところは変わってないらしい。まぁ、ちょっと抜けているところもあるので、それくらいがちょうどいいと思うが。
だが、相手が葉一だと分かるや否や、彼女の表情は一変した。昔と変わらぬ笑顔。いや、昔よりもっと綺麗になった眩しいくらいの笑顔だった。その顔を見て、葉一は彼女への恋心がまざまざと蘇る。
ところが、彼女は葉一を見ても懐かしそうにするだけだった。見合い相手が葉一だと知らないだけかと思ったが、どうやら見合いのこと自体知らないらしい。そうなると、彼女に現在、彼氏がいないのかが気になった。もしいると言われたら、彼女に恋い焦がれるこの気持ちはどうしたらいいのだろう。
「茉歩姉は、彼氏いるの?」
とにかく聞いてみよう、と覚悟を決めて尋ねてみた。いると言われたらそれまでだ。
「ん? 今はいないけど……」
「今は、か」
いないことには安堵したが、今度は別の問題が浮上する。今は、ということは以前はいたのだ。そう思うと、なんだか悔しくなってくる。
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