年下クンと始める初恋

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「あれから春江おばあちゃん、具合はどう？」
「大丈夫、今はピンピンしてる。車椅子乗りこなすってさ」
「良かった。施設の方までは家族じゃないし、さすがにね」

　気になっていた春江の様子が聞けて、茉歩は嬉しくなる。とそこで、エレベーターが三階に到着したことを告げた。

「そういえば、葉ちゃんは今日仕事なの？」
「いや……」
「あら、あなたたち、一緒に来たの？」

　エレベーターが開くや否や、驚いたような声が飛んできた。到着を待ちわびていた客かと思ったが、その内容に疑問符が浮かぶ。そして聞き覚えのある声。

「おばさま？」

　扉の向こうにいたのは葉一の母、江津子えつこだ。その隣には茉歩の母の姿もある。

「やっぱりな……」

　ため息混じりの葉一の言葉に茉歩は眉を潜める。だが、彼はそれきり口を噤むと、茉歩の背を押してエレベーターを降りた。
　説明を求めて茉歩は母を見るが、母はニヤニヤと笑っているだけだ。

「茉歩ちゃん、久しぶりね！　綺麗になって！」
「おばさま……お久しぶりです」

　嬉しそうにはしゃく江津子は、どう見ても母と同い年には見えない。明るくて元気なところもそうだが、何より肌が綺麗なのだ。どちらかというと、おばさんと呼ぶよりお姉さんと呼びたいくらいだ。

「葉一くんも立派になって。見違えたわ」
「どうも、ご無沙汰してます」

　茉歩の避難の目を無視して、母は葉一に声をかける。それに応える葉一の落ち着いた声音に、茉歩は彼も大人になったんだな、と感心してしまった。

「あなたたち、お似合いよ」
「へ？！」

　ニコニコと茉歩の手を取り放たれた江津子の言葉に、素っ頓狂な声が出る。その背後からは、葉一のため息が聞こえて来た。