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「びっくりしたぁ、おっきくなったね」
「俺もびっくりした。茉歩姉、今、ちょっと睨んだろ」
懐かしい顔に思わず顔が緩む。すると、それは相手も同じだったようで、よく見知った顔がそこにあった。ふわりと微笑んだ顔は昔と変わらない。近所に住んでいた、二歳年下の徳田葉一。茉歩が中学に上がる頃に引っ越してしまった幼馴染だった。
母親同士の仲が良く、家も近所だった彼とは、よく近所の公園で遊んだ。お互いに兄弟がいないのこともあり、自然と姉弟のような関係になった。
幼い頃の葉一は茉歩より小さなく、頭一つ分は下だったはずなのに、今は逆だ。おまけにワックスを使っているのか、整えられた髪は真面目そうな彼の人柄を表しているように感じる。ビシッと決まったスーツも相まって、カッコいい大人に成長した彼に思わず見惚れてしまうほどだ。
「ごめん、まさか葉ちゃんだとは思わなくて」
「別に良いけどな。ていうか、すごい荷物だな」
「お母さんの手伝いでね」
小さめとはいえ、茉歩が持つボストンバックはパンパンだ。何が必要になるか分からず、心配性な茉歩はどうしても荷物が増えてしまう。特に何かしら手伝いなどに出向くとなると、さらにその心配性に拍車がかかる。
今回の手伝いは、以前にも行ったことのある形式のようだったので、前回と同じ装備だがたぶん要らないものも入っている。母には荷物は必要ないと言われたが、念のためだ。備あれば憂いなし。重たいのさえ我慢すればいいのだ。
「持つよ」
「え⁈ いいよ」
断ろうとした茉歩だが、葉一は笑って彼女の手から荷物を奪い取る。確かに持ってもらうのはありがたいのだが、それより申し訳なさが立つ。だが、葉一は荷物を返すつもりはないらしい。
「俺もびっくりした。茉歩姉、今、ちょっと睨んだろ」
懐かしい顔に思わず顔が緩む。すると、それは相手も同じだったようで、よく見知った顔がそこにあった。ふわりと微笑んだ顔は昔と変わらない。近所に住んでいた、二歳年下の徳田葉一。茉歩が中学に上がる頃に引っ越してしまった幼馴染だった。
母親同士の仲が良く、家も近所だった彼とは、よく近所の公園で遊んだ。お互いに兄弟がいないのこともあり、自然と姉弟のような関係になった。
幼い頃の葉一は茉歩より小さなく、頭一つ分は下だったはずなのに、今は逆だ。おまけにワックスを使っているのか、整えられた髪は真面目そうな彼の人柄を表しているように感じる。ビシッと決まったスーツも相まって、カッコいい大人に成長した彼に思わず見惚れてしまうほどだ。
「ごめん、まさか葉ちゃんだとは思わなくて」
「別に良いけどな。ていうか、すごい荷物だな」
「お母さんの手伝いでね」
小さめとはいえ、茉歩が持つボストンバックはパンパンだ。何が必要になるか分からず、心配性な茉歩はどうしても荷物が増えてしまう。特に何かしら手伝いなどに出向くとなると、さらにその心配性に拍車がかかる。
今回の手伝いは、以前にも行ったことのある形式のようだったので、前回と同じ装備だがたぶん要らないものも入っている。母には荷物は必要ないと言われたが、念のためだ。備あれば憂いなし。重たいのさえ我慢すればいいのだ。
「持つよ」
「え⁈ いいよ」
断ろうとした茉歩だが、葉一は笑って彼女の手から荷物を奪い取る。確かに持ってもらうのはありがたいのだが、それより申し訳なさが立つ。だが、葉一は荷物を返すつもりはないらしい。
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