俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「そうなんだ。不思議なところで接点があったね」

 ホテルで働いていた侑李と、旅館が実家の奈月。共通点があったことに、少し嬉しくなる。

「じゃあ、時期をずらした方がいいかな?」

「大丈夫だと思いますけど……本当に行きます?」

「嫌?」

 首を傾げられ、慌てて首を振る。

「嫌ではないです。むしろ嬉しい……けど、うちの母、強烈なので」

 母が何と言うだろう。あれだけ結婚は、子供はとうるさいくらいに言ってきていたのだ。貰い手が見つかった、と喜ぶのかもしれないが、両手を上げて、とはいかないだろう。それは、姉の時に経験済みだ。

「正直に言いますけど、うちの母、ちょっと厄介で。姉の結婚の時にもちょっと悶着があって。姉は長女だし、旅館継いで女将になるって小さい時からなってて。だから相手は婿に来れる人って条件があって。結婚した今の旦那さんは姉の同級生で、私もよく遊んでもらってて、すごくいい人なんです。家族ぐるみの付き合いもあったし、年末年始の忙しい時期とか、手伝いにも来てくれて。その人、三男だし婿にも行けるって、何の問題もないように思ったんですが、母が難癖つけ出して……本当、しょーもない理由で結婚を伸ばし伸ばしにしたり、いろいろ妨害的なことをしてきたんです。まぁ、最後は板さんの資格も取ったからってことで納得したみたいですけど」

 一気に話したせいで息が苦しい。深く息を吐いて視線を落とした奈月は、そのまま顔を上げられなくなった。こんな話を聞いて、侑李はどう思っただろう。彼に軽蔑や不快な思いをさせたのでは、と不安になる。

「お母様は、娘さん想いなんだね」

 優しく響いた低い声。そして、テーブルの上で組んだ奈月の両手を包み込むように重なった、大きな手。顔を上げると、ブルーの瞳が優しく微笑んでいた。

「俺も正直に言うけど、不安がないわけじゃない。奈月さんの家族に認めてもらえるか、不安しかない。でも、俺は奈月さん以外に考えられないし、諦めるなんてできないから。認めてもらえなくても、認めてもらえるまで何度でも会いに行く。もちろん早く結婚したい気持ちはあるけどね」

 侑李の言葉に奈月も微笑み返す。正直に話してくれる彼が好きだ、と改めて感じた。

「私も、侑李さん以外に考えられない」

「良かった。なら、大丈夫だよ。一緒に乗り越えよう」

 笑みを深くする侑李の姿が霞む。瞬きするとポロリと溢れた涙が、奈月の頬を濡らした。その涙を拭ってくれた彼の手を取り、頬を擦り寄せた奈月は幸せを噛み締めていた。
 
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