俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「素敵なお式でしたね」

「そうだね」

 幸せそうな新郎新婦を見ているだけで感慨深い気持ちになったのに、さらに奈月の手にはブーケがある。花嫁である英理から、侑李がもらったものだ。
ブーケの由来を聞いた時、知らなかったことに驚いたと同時に、彼らが侑李に渡した意味を捉えかねて困惑した。でも、披露宴会場へと向かう中庭で、膝を突いてプロポーズしてくれた彼が本物の王子様に見えた。
 以前、会話の途中で何気なく言われた言葉がプロポーズのようだと冗談めかして言った時、彼はあなた以外考えられない、と言った。その想いは奈月だって同じ。同じ気持ちでいてくれたことが嬉しくて、いずれは、と彼との未来を夢に見た。でもまさか、ハッキリとした言葉で、またプロポーズしてくれるなんて思ってもみなかった。
 幸せそうな岸田たちから幸せをお裾分けしてもらい、あとは帰るだけ。そう思っていた奈月の手を取り、侑李は何故か出口とは反対方向に歩き出す。背中に触れている彼の手に押され、乗せられたエレベーターで向かったのは5階フロア。そこは宿泊部屋が並ぶ階だったはず。

「あの、侑李さん?」

「……勝手にごめん。部屋を取ったんだ」

 いつの間に、と目を丸くすると向かい合わせに立った彼に抱き寄せられる。エレベーターのドアが閉まるとすぐ、顎をすくわれ、唇を啄まれる。腰を抱き寄せられ、身体の奥が甘く疼きだしてしまう。

「っは……」

「朝から我慢してた。綺麗に着飾ったあなたが欲しくて堪らなくて」

 濡れた音を立てて唇が離れた。熱い視線を送ってくるブルーの瞳にドキドキする。
 エレベーターの到着音がして、ドアが開いた。侑李は奈月の手を引き、目的の部屋に脇目も降らず歩いていく。奈月は手を引かれるまま、転ばないように歩くのがやっとだった。

「いつ、部屋を?」

 胸元から取り出したカードキーを差し込み、ドアを開けた侑李に中へと促される。戸惑いながらも中へと足を踏み入れると、広い室内に驚いた。

「ジュニアスイート。奈月さんと結婚式に出席すると決めてから、予約してた」

 背中に添わされた大きな手のひらに押され、部屋の中へと誘われる。目の前に広がる大きな窓。そこから見えるのは、夕日に染まる町並み。

「綺麗……」

 高台にあるホテルだから、眼下に広がる町がミニチュアのように小さく見える。夕暮れ時だから、ポツポツと街灯も灯り始め、山間に沈んでいく夕陽も合間って幻想的だ。
 このホテルも小野原グループ系列で、人気の結婚式場だ。チャペルや宴会場だけでなく、宿泊施設も併設しているこのホテルが人気なのは、サービスだけでなく景観が美しいのが魅力だからだ。

「気に入った?」

「はい……」

 窓際に立って景色に目を奪われていると、背後から侑李の腕が抱き締めてくる。その腕にそっと触れながら、奈月は胸がいっぱいになっていた。

「どうして、そんな前から……?」

「ちゃんとプロポーズがしたくて」

「え?」

 驚いて見上げると、微笑んだ侑李と目が合う。

「手を出して」

 言われるがまま、ブーケを左手に持って、右手を差し出す。

「違う、反対」

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