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侑李の会社、F&Y株式会社と進めていたプロジェクトの当日を迎えた。紆余曲折ありながら、何とか当日を無事に迎えられて奈月はホッと胸を撫で下ろす。
イベント会場はグリシーヌホテル。奈月たちが所属するテンマ化粧品の今季の目玉、男性用のスキンケアセットの新作発表会ということもあり、会場内には女性よりも男性の率の方が高い。
だが、世間的にはスキンケアは女性がするものというイメージがまだ根強いのは事実だ。そこをどうクリアするかが最大の課題で、亜也も奈月も一番頭を悩ませた部分でもある。
より多くの男性に興味を持ってもらうこと、手に取る機会を増やしてもらうこと。このプロジェクトの柱とも言える部分を支えてくれたのが、侑李たちのイベント会社だった。
男性が周りの目を気にせず足を運べるように導線を確保すること。そして、気軽にテスターを使えるよう、パーテーションで視界を遮るなど空間にも工夫を凝らした。
「お客様の反応も、上々ですね」
会場内を回って戻ってきた亜也がこっそりと耳打ちしてくるのに頷く。ホテルは不特定多数の人間が出入りする場所だ。スキンケアに興味を持ちながらも、恥ずかしさを抱える顧客からすると、目的が知られにくい方がいい。そのため、本来なら2階までの部屋を押さえるところを、4階の中規模の会場を押さえることを提案したのは亜也だった。
「真壁さんの気遣いが効いたね」
「動線が心配でしたけど、問題ないようで安心しました」
互いに視線は会場内に向けたままだったが、隣でホッとしている亜也の様子は良く分かる。途中で抜けてしまったことは悔しかっただろうが、イベントの成功を誰よりも願っているのは彼女だ。
「主任と小鳥遊副社長のお陰です」
「違うわ。真壁さんが作ったしっかりした骨組みがあったからよ」
初めての担当案件で不安も緊張も大きかっただろう。それでもこうしてこの日を迎えられたのは、イレギュラーなことが起こっても、彼女が最後まで自分の仕事を全うしたからだ。
「次の企画も楽しみにしてるわね」
「はい、任せてください」
まだ初日を終えていないのに次のことなんて、とげんなりするかと思ったら、気持ちのいい返事が返ってくる。この前向きで明るいところが、彼女の良いところだ。
「やぁ、香山さん、真壁さん。お疲れ様です」
こちらに向かって歩いてくる男性の姿に、2人は居住まいを正す。先頭で片手を上げ微笑むのは玉沖風磨。そしてその少し後ろに侑李がいて、その隣に見知らぬ男性がいた。
「玉沖社長。この度はありがとうございます」
「いや、無事に今日を迎えられて良かった。真壁さんもお元気になられたようで、安心しました」
「その節は、多大なご迷惑をおかけいたしました」
「ああ、頭を上げてください。事情は小鳥遊から聞いてます。大変でしたね。お怪我はもう?」
「お陰様ですっかり全快いたしました」
風磨の口調は相変わらず軽く感じる。だが、その雰囲気が社長という肩書きで身構えてしまう人を拍子抜けさせ、嫌な緊張を解いてくれるのかもしれないとも思う。
亜也とにこやかに話した後、風磨は少し脇にズレると、後ろから来た男性に声をかける。
「小野原さん、こちらがお話ししていたテンマ化粧品の営業の方で、香山さんと真壁さんです」
紹介されて、何とか微笑みを浮かべ名刺を取り出したものの、風磨が発した言葉に頭が追い付かない。すると、風磨たちとさほど歳の変わらぬように見える男性は、ニッコリと微笑みながら今度は自分の名刺を差し出してくれる。
イベント会場はグリシーヌホテル。奈月たちが所属するテンマ化粧品の今季の目玉、男性用のスキンケアセットの新作発表会ということもあり、会場内には女性よりも男性の率の方が高い。
だが、世間的にはスキンケアは女性がするものというイメージがまだ根強いのは事実だ。そこをどうクリアするかが最大の課題で、亜也も奈月も一番頭を悩ませた部分でもある。
より多くの男性に興味を持ってもらうこと、手に取る機会を増やしてもらうこと。このプロジェクトの柱とも言える部分を支えてくれたのが、侑李たちのイベント会社だった。
男性が周りの目を気にせず足を運べるように導線を確保すること。そして、気軽にテスターを使えるよう、パーテーションで視界を遮るなど空間にも工夫を凝らした。
「お客様の反応も、上々ですね」
会場内を回って戻ってきた亜也がこっそりと耳打ちしてくるのに頷く。ホテルは不特定多数の人間が出入りする場所だ。スキンケアに興味を持ちながらも、恥ずかしさを抱える顧客からすると、目的が知られにくい方がいい。そのため、本来なら2階までの部屋を押さえるところを、4階の中規模の会場を押さえることを提案したのは亜也だった。
「真壁さんの気遣いが効いたね」
「動線が心配でしたけど、問題ないようで安心しました」
互いに視線は会場内に向けたままだったが、隣でホッとしている亜也の様子は良く分かる。途中で抜けてしまったことは悔しかっただろうが、イベントの成功を誰よりも願っているのは彼女だ。
「主任と小鳥遊副社長のお陰です」
「違うわ。真壁さんが作ったしっかりした骨組みがあったからよ」
初めての担当案件で不安も緊張も大きかっただろう。それでもこうしてこの日を迎えられたのは、イレギュラーなことが起こっても、彼女が最後まで自分の仕事を全うしたからだ。
「次の企画も楽しみにしてるわね」
「はい、任せてください」
まだ初日を終えていないのに次のことなんて、とげんなりするかと思ったら、気持ちのいい返事が返ってくる。この前向きで明るいところが、彼女の良いところだ。
「やぁ、香山さん、真壁さん。お疲れ様です」
こちらに向かって歩いてくる男性の姿に、2人は居住まいを正す。先頭で片手を上げ微笑むのは玉沖風磨。そしてその少し後ろに侑李がいて、その隣に見知らぬ男性がいた。
「玉沖社長。この度はありがとうございます」
「いや、無事に今日を迎えられて良かった。真壁さんもお元気になられたようで、安心しました」
「その節は、多大なご迷惑をおかけいたしました」
「ああ、頭を上げてください。事情は小鳥遊から聞いてます。大変でしたね。お怪我はもう?」
「お陰様ですっかり全快いたしました」
風磨の口調は相変わらず軽く感じる。だが、その雰囲気が社長という肩書きで身構えてしまう人を拍子抜けさせ、嫌な緊張を解いてくれるのかもしれないとも思う。
亜也とにこやかに話した後、風磨は少し脇にズレると、後ろから来た男性に声をかける。
「小野原さん、こちらがお話ししていたテンマ化粧品の営業の方で、香山さんと真壁さんです」
紹介されて、何とか微笑みを浮かべ名刺を取り出したものの、風磨が発した言葉に頭が追い付かない。すると、風磨たちとさほど歳の変わらぬように見える男性は、ニッコリと微笑みながら今度は自分の名刺を差し出してくれる。
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