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「じゃあ、真壁さんも、もうじき退院かな?」
「月末には復帰することになって、プロジェクトの方は当日に手伝いとして参加することになりました」
夕食を終え、食器を片付けながら病院でのことを話す。
今日の夕食は早めに帰宅したこともあり、奈月が作った。まだ強く物を握ったりすることは難しいため、包丁を使わず、ペペロンチーノとサラダをつくった。抜糸が済んで、包帯が取れればやれることも増える。だが、テープを貼ってるとはいえ極力濡らさない方がいいだろう、と侑李が食器を洗い、奈月は拭いているだけだ。
「真壁さんが頑張ってた企画だから、最後だけでも参加できるなら良かった」
「はい」
今回のことで亜也は悔しい思いをしただろう。自分が企画し、初めて担当を任された案件を仕方のないこととはいえ、途中で抜けなくてはならなかったのだから。
「それで、侑李さん」
最後の1枚を拭き終えて食器棚にしまい、奈月は深く息を吐く。
怪我をしたことで始まった同棲生活。親戚も近くにおらず、友人も家庭を持っている人ばかりで、頼れる人がいなかったとはいえ、すっかり甘えきった2週間だった。でも、もう抜糸も終わり、日常生活に支障はない。それは、この生活の終了を意味していた。
「大変、お世話になりました」
「……突然、どうしたの?」
深々と頭を下げた奈月に、侑李は静かに聞く。その声が僅かだがいつもより低くなっているのに気付いて、顔が上げられなくなった。
「もう大丈夫なので、私は家に戻ろうと思います」
今日、早めに帰ってきたのには食事を作ることともう1つ理由がある。それは荷造りだ。侑李に連れられて来てから、毎日使うものなどは各々場所を借りて置かせてもらっていたが、大半のものはスーツケースに入れたまま。それは彼との生活に本気で慣れてしまわないようにするため。いつでも、彼の側を離れられるようにという、奈月なりの配慮だった。
「……俺は、お役御免?」
「え?」
思いの外、寂しそうな声音に思わず顔を上げる。すると、捨てられた子犬のような顔をした侑李が、奈月を見下ろしていた。
「いや、だって、怪我が治るまでって約束、でしたし……」
潤んでいるように見えるブルーの瞳に見つめられると落ち着かない気持ちになる。しどろもどろになりながら、視線を彷徨わせていると、侑李が突然腕を引っ張った。そのまま彼の腕に閉じ込められて、ぎゅっと腰に回った腕に抱き寄せられる。
「月末には復帰することになって、プロジェクトの方は当日に手伝いとして参加することになりました」
夕食を終え、食器を片付けながら病院でのことを話す。
今日の夕食は早めに帰宅したこともあり、奈月が作った。まだ強く物を握ったりすることは難しいため、包丁を使わず、ペペロンチーノとサラダをつくった。抜糸が済んで、包帯が取れればやれることも増える。だが、テープを貼ってるとはいえ極力濡らさない方がいいだろう、と侑李が食器を洗い、奈月は拭いているだけだ。
「真壁さんが頑張ってた企画だから、最後だけでも参加できるなら良かった」
「はい」
今回のことで亜也は悔しい思いをしただろう。自分が企画し、初めて担当を任された案件を仕方のないこととはいえ、途中で抜けなくてはならなかったのだから。
「それで、侑李さん」
最後の1枚を拭き終えて食器棚にしまい、奈月は深く息を吐く。
怪我をしたことで始まった同棲生活。親戚も近くにおらず、友人も家庭を持っている人ばかりで、頼れる人がいなかったとはいえ、すっかり甘えきった2週間だった。でも、もう抜糸も終わり、日常生活に支障はない。それは、この生活の終了を意味していた。
「大変、お世話になりました」
「……突然、どうしたの?」
深々と頭を下げた奈月に、侑李は静かに聞く。その声が僅かだがいつもより低くなっているのに気付いて、顔が上げられなくなった。
「もう大丈夫なので、私は家に戻ろうと思います」
今日、早めに帰ってきたのには食事を作ることともう1つ理由がある。それは荷造りだ。侑李に連れられて来てから、毎日使うものなどは各々場所を借りて置かせてもらっていたが、大半のものはスーツケースに入れたまま。それは彼との生活に本気で慣れてしまわないようにするため。いつでも、彼の側を離れられるようにという、奈月なりの配慮だった。
「……俺は、お役御免?」
「え?」
思いの外、寂しそうな声音に思わず顔を上げる。すると、捨てられた子犬のような顔をした侑李が、奈月を見下ろしていた。
「いや、だって、怪我が治るまでって約束、でしたし……」
潤んでいるように見えるブルーの瞳に見つめられると落ち着かない気持ちになる。しどろもどろになりながら、視線を彷徨わせていると、侑李が突然腕を引っ張った。そのまま彼の腕に閉じ込められて、ぎゅっと腰に回った腕に抱き寄せられる。
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