俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「まぁ、口は悪いけど仕事できますしね? うん、いいヤツだとは思いますよ。ただ、一言多いんです!」

「何を言われたの?」

「…………った、って」

「ん?」

「太ったって言うんです! 酷くないですか? 私だって自覚はしてますよ、でも言い方ってものがあるでしょ? 笑いながらお前、太ったなぁ、って小馬鹿にしたように。そのくせ、甘いものをお見舞いだって持ってくるし。ここのケーキ、私が好きなやつだし!」

 亜也が恨めしそうに睨むのは、ケーキの箱。側面に貼ってあるシールには賞味期限と店名が印字されている。そのパティスリーは人気のところで、特に女子社員の間で話題になっていた。

「ただでさえ太りやすいのに、ろくな運動できてないから太りもしますよ! なのに……なのに何で、よりにもよって私の好きなとこのケーキを……」

 突っ伏し、ううっ、と呻く亜也の背を撫でてやる。

「甘いものの誘惑には勝てないよね」

「主任もですよね?! 私だけじゃないですよね?!」

 ガバッと顔を上げた亜也に驚きつつ、奈月は何度も頷く。

「私も甘いもの好きだから、分かる。営業で出歩くからだいぶ消費されてるかとは思うけど、油断するとスーツ入らなくなるもの」

「ちょっとホッとしました……あ、主任、良かったら一緒に食べません?」

「え?」

 ガサガサとケーキの箱を開けた亜也が、中を見せてくる。覗いてみるとそこには、オペラとイチゴショートが1つずつ入っている。どちらも亜也が好きなケーキだ。

「あいつ、お前は大食らいだからって2つ買ってきたらしくて……1個食べて行ってください。お箸しかありませんけど」

 備え付けの引き出しから割り箸を取り出す亜也に微笑む。2人でどっちにするかと盛り上がりながら、楽しいお茶の時間を過ごしたのだった。

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